テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
放課後。 校門から出ようとする朝倉くんの後をつける、マヤちゃん。それを尾行する、私とさやかちゃん。
私は好奇心、ついでに情報収集出来たらいいなと思って、後を追う事にした。
さやかちゃんは、二人がケンカを始めたら、双方を止められるのは自分くらいだと言って、ついてきた。
まあまさか、取っ組み合いのケンカはしないだろうけど、さやかちゃんが居るのは、心強い。
先頭の朝倉くんは、特に何を気にするでもなく、歩いていく。
アレは、なんなんだろうな。
マヤちゃんが教室に入ってきた時も『あの時の!』とはなってなかったし、その後、朝の出来事をモブ男達と話す事も無かった。
ギャルゲーの主人公なら、女の子とぶつかった事は話題にしなさいよ。
鈍感系だとしても(朝倉くんがそうかは知らないけど)、リアクションくらいしなさいよ。
朝倉くんを先頭にした、謎の行列は、学校の門を出て、住宅街へと向かっていく。
そのどこかで、マヤちゃんは声をかけるつもりらしい。
出来れば、早めに声をかけてほしいな。さやかちゃんの服を選んだ時はともかく、今回も、描画範囲外の法則を回避出来るとは限らないし。
「朝倉翔太さん!」
そんな懸念を他所に、割と早い段階。学校から200メートル程離れた、廃工場の前でマヤちゃんは朝倉くんに声を掛けた。
こういう時、女子が男子の名前を呼ぶのは、大体甘酸っぱいイベントが起こるのだけど、マヤちゃんの呼びかけが勇ましすぎて、それは無いと確信出来てしまう。
これからサシの決闘が始まるとか、鎌倉武士みたいに『ヤアヤア我こそは!』と名乗りを挙げてから突撃するとか、そういうタイプの声色だ。
「えっと…………、誰だっけ?」
おい、朝倉翔太。
目の前に居るのは、今日、同じクラスに転校してきた女の子だぞ。何故知らない。
これはもう、鈍感というかシンプルアホ。しっかりしろよ主人公。
「今日、学校に転校してきた伊集院マヤ。そして、朝に交差点でぶつかった伊集院マヤよ! 名前を知らないのは100歩譲るとして、どうして顔も知らないのよ!」
マヤちゃん、よくぞ言ってくれた。
この、3の倍数でもないのにアホをかましてる主人公を、しっかり殴ってくれて、胸が空いたよ。
マヤちゃんの大音声を食らった、当のアホはと言うと、ようやく思い出した様子で、頭上に電球を灯した。
「ああ、あの時の! あの娘が伊集院さんだったんだ」
「あんな出会い方したのに、忘れる方がどうかしてるわよ!」
うむ、その通り。
人として、ギャルゲー主人公として、ぶつかった娘と転校生が同一人物だと気づかないのはおかしい。改めて言う、しっかりしろ主人公。
「朝はゴメン。ぶつかった事もだけど、売り言葉に買い言葉で怒鳴ったのも、謝るよ」
お、素直に謝れる男は、かっこいいぞ朝倉くん。
マヤちゃんの好感度数値も、0から3に上がったぞ。頑張れ朝倉翔太、モテるための存在なのだから、存分にモテろ。
「む……ぶつかったのはマヤも悪いし、こっちも怒鳴って悪かったわ。……改めて、謝らせて。ごめんなさい」
マヤちゃんも、怒り顔のままだけど、一応、謝罪の言葉を述べた。
とりあえず、これで一安心かな。一緒に、電柱の陰で身を潜めてるさかかちゃんも、ほっと胸を撫でおろしてる。
これで、このイベントは一旦終了かなと思ったその時。
「なんだテメーら! ギャアギャア騒ぎやがって!」
現れたのは、長ラン金髪リーゼントという『あの時代』のヤンキー。しかも顔がある、モブじゃない、朝倉君以外にも居たんだ、モブじゃない男。
「うわ、今時珍しいよ。あんなヤンキー」
訂正。初代さくハイ発売当時でも、あのスタイルは古かったらしい。
この世界の住人である、さやかちゃんが言うんだから、間違いない。
「何よ急に! 私達は今、大事な話をしているの。邪魔しないでくださる?」
うわぁ、私達のお喋りしてた時は、あんなにほわほわだったのに、ヤンキー相手に啖呵 を切っちゃったよ。
マヤお嬢様の知識には、ヤンキーが危険だという概念は無いのかもしれない。
だから、こんな大胆な事が出来るのかもしれない。
「んだとこのアマ! 痛い目見なきゃわかんねぇのか!」
案の定、マヤちゃんの生意気な態度に、怒り心頭なヤンキー。ズンズンと肩を揺らして歩いていき、マヤちゃん達近づいていく。
「やめろっ!」
目を怒らせて踏み出したヤンキーの前に、朝倉君が割り込んで庇う。
主人公として、それは正しい行動だけど、一般倫理的に見れば、代わりに謝るか、逃げるか、もしくはお巡りさんを呼ぶかしてほしい。
「邪魔すんじゃねぇ!」
あ、ヤバい。これケンカになる………っていうかこれ、さくハイ名物、バトルイベントじゃない?
ガールズサイドにもあった、男の子がヒロインを守って、好感度が上がるやつ。
それまで、RPGばっかり作ってたTONAMieが、急にギャルゲーに参戦した時、ゲーム業界は上へ下への大騒ぎだったらしい。
しかし、TONAMieはその辺も抜かり無い。
ギャルゲーにも、RPGで培ったバトルパートを入れた事で、既存ユーザーの多くを引き込み、新規獲得にも成功。
それが、さくハイ名物、バトルイベント。
しかもバトル部分が妙に作り込まれてて、単体でのゲーム化要望は、常にある。出たことは無いけど。
ガールズサイドで出てきた敵は、熊とかオバケとかだったけど、初代はヤンキーだったのか。時代だ。
「不味い、あれじゃ殴り合いのケンカになる」
場が殺気立ったのに気づいたようで、物陰のさやかちゃんも、臨戦態勢に入る。
シュメール
126
#日記
QuartoMew
1,350
ガールズサイドのバトルイベントでは、ヒロイン(主人公)の部活次第で、男の子に加勢出来た。
本編でも、ヒロインの部活次第で、加勢してもらえるんだろう。空手部のさやかちゃんなら、加勢出来るはず。
マヤちゃんと私は、考えるまでもなく無理。帰宅部二人では、足手まといにしかならない。
さやかちゃんは、助太刀する気満々だ。本当に、さやかちゃんが居たよかった。
「橘さん、なんとか止めてきてもらえませんか。情けない事ですが、私ではどうにもなりません」
「大丈夫、アタシに任せて」
さやかちゃんは、キッ目を鋭くさせると、現場へと躍り出た。