中也は家に一人だった。
太宰は一ヶ月ほど出張の長期任務にあたっていて、帰ってくるまではまだあと一週間と少しあった。
故に中也は家に独りだった。
本日も順調に仕事を終わらせ、少し疲れた体で独り帰宅し、シャワーを浴びて、夕飯を作り、食べ終わったところだ。
あとは寝るだけなのだが、大して眠い訳でもない。
何かが足りない気もするが、今から映画を観たり、外出したり、という気分ではない。
明日の予定は夕刻からだし、無理に早く寝る必要も無ェな、などと考えながら特に計画もなく寝室まで来てしまった。
此処は太宰と中也の二人で使っているセーフハウスで、寝台は二人用寝台が一つあるだけだ。
独りなので誰かに見られる心配もなく、ポートマフィア準幹部水準ともあろう少年が部屋着のスウェット一枚というだらしない格好で、ぼふんッと音を立て寝台に横たわった。
静かな部屋に寝台が軋む音がよく響く。
二人用の寝台を一人で使うと広くて大変心地が良い。
中也は何時も太宰と二人で眠る時は寝台の半分から右側を使っており、広い寝台を一人で使えるのに、癖で右端の方に寝そべっていた。
それから、特に意味もなく寝返りを打って、普段であれば太宰がこちらを向いて眠っている寝台の左側を見た。
当然の事ながら今其処には誰も居らず、中也の目前には唯平らな寝台があった。
その空間に何となく手を伸ばし、空を掴んで、脱力。
力が抜けた腕は重力に従い寝台に垂直に打ち付けられ軽く跳ねた。
中也は特に何を想うでも無くその手を見つめた。
部屋にはひと時の静寂があった。
随分ダラダラとしたが枕脇の小棚に置いてある電子時計に目をやると10分ほどしか時は進んでいない。
中也は大きく息を吸い、何かを諦めたかのように深いため息をついた。
そして、ふと、自分が太宰が居ないことを若干物足りなく感じているのではと思い始めた。
「、、、、ンなわけ。」
独り部屋で呟いた。
太宰の居る生活を思い返す。
回想の情景に浸っていると、途端に今居る寝台が普段より冷たく感じてきた。
、、、、寝台。
考えてみれば太宰が家を出てからソウイウ事からはとんと疎遠になっていた気がする。
「、、、そういえば、溜まってるな、、、。」
が、特にきっかけも無いので体は反応せず、ただ一度そう考えてしまえば大人しく眠りにつける訳もなく、どうしたものかと部屋をぐるりと見渡した。
部屋にあるものは寝台、小棚、とその上に置いてある電子時計、小さな本棚、そして━━
衣服棚。
「 、、、。」
中也は立ち上がり其処から太宰の襯衣を一枚取り出した。
再度寝台に腰かけ、袖は通さず其れを羽織ってみる。
ふわりと太宰の匂いがして、抱擁感を覚える。
普段であればそのまま口吸をして、
頬に這わせた手に耳を弄られ、
腰に回された手が慣れた所作でベルトを外し其れが襯衣の中に侵入してきて、
それから、、、、
「、、、チッ、何考えてんだ俺、、、、。」
自分が無意識に膝の内側ををすり合わせている事に気が付く。
襯衣の片袖に腕を通し、鼻口に手を当てた。
太宰の襯衣は中也には大きく、手がすっぽりと隠れて裾が余っている。
其の事に少々苛立ちを覚えつつも、目を瞑り匂いを嗅ぐ。
いつもと変わらぬ太宰の匂い。
こんなしみったれた自身の行いに自分をブン殴りたくなったが、その先を想像してしまったのも事実である。
緩く握った手を上下に動かす。
全身に気怠い快感が走った。
「、、、ッ」
途端に息が荒くなり、顔が火照っていくのが判った。
久しい感覚。
そして其れが強まる場所を探り、責め立てる。
普段太宰がやるように。
(やべ、、、射精そッ)
片手はそのまま動かし乍ら、鼻口に当てていた方の手で先を擦る。
「、、、ッ!、、、ハァ…//」
袖の端が擦れて先刻とは違う感触の刺激が加わる。
全身が強ばり、爪先がシーツを手繰っている。
握る力を強くし、そしてーーー
「あぁッッ///、、、ンうゥッッ♡、、、!!!、、ッハァッ、、」
絶頂。
全身が汗ばみ、呼吸が乱れる。
手を離すと掌の太宰の襯衣が自分の欲で汚れている。
未だ余韻の残る脚腰が不定期に跳ねる。
その度に寝台が少し軋む。
と、快感に伴い後ろも反応していることに気がつく。
「、、、ックソッ、、、//」
ここまではっきりと太宰を求めるようになってしまった自分に嫌気がさす。
だが愚かにも欲に支配されてしまう。
両膝をつき、片手を後ろから後孔に回す。
もう片方の腕は肘を折り、額と寝台に押し付ける。
手は充分に濡れている為いともすんなり指が挿入ってしまった。
とはいえ久しぶりなので多少は硬くなっている。
掻き混ぜる様に解し乍もう一本指を挿入する。
「ッハァ、、、//、、んッ♡」
指を折り曲げて内壁をなぞるとその度に腰が呼応して震える。
けれども中也はそれ以上の快感を知ってしまってる故、自分では指が届かず焦れったい。「ッ、、クソっ、、、もっと奥ッ、、、届かなッ…//」
中也の体には小さくは無いが絶頂には足りないもどかしい快感が流れ続けている。
「ンうッ、、、ハァ、、、太宰ッ、、、だざ、、、、」
『なぁに?♡』
(ッ?!)
刹那、中也の中に、長く痩せた、温度の異なる指が中也の指よりさらに奥に挿入ってきた。
そして前立腺を的確に激しく押し潰す。
「ッッッンあぁぁぁぁ゛ぁ゛ッッッ?!?!♡♡///ぁ゛ーッ!ぁ゛ーッ!ンン゛〜〜ッッ」
中也は強烈な快感の波に一瞬で呑み込まれてしまった。
「ッ、、、、フゥッ///、、、ッんッハァ、、、、、」
突然のその感覚に未だ慣れられず、中也の中は乱れた呼吸に合わせてビクビクと締まったりうねったりしている。
そんな感触を確り感じ取り乍指が引き抜かれる。
「ン゛あぁッ、、、!」
中也は糸を切られた人形のように体制を崩した。
脚腰を小刻みに痙攣させ乍中也は咄嗟に後ろを振り返り、状況を確認した。
(何故だ。可笑しい。何故此奴が此処に居るんだ。)
「なんでッ、、、太宰!」
其処に居るのは紛れもなく太宰であった。
太宰は愉快そうな表情で中也を見下ろしている。
「手前が帰ってくる迄あと一週間はある筈、、、」
中也が太宰を睨み付けながら言う。
『その予定だったのだけどね〜?またしてもあの芥川君が私の作戦を無視して単独で敵地に乗り込んでしまったのだよ。』
目を瞑り、呆れた表情で手をヒラヒラさせ乍軽い口調で喋っている太宰。
先程まで中也に挿入されていた指が光を受け、てらてらと反射している。
『それで、一人で全員締め上げちゃうもんだから、予定が大幅カットされて帰ってきたって訳なんだけど、、、』
そう言い、太宰がゆっくり目を開きながら此方を見てくるので猛烈に嫌な予感がして中也は反射的に目を逸らす。
沈黙が流れ、話が進まない様なので太宰が続ける。
『はぁ〜、折角帰ったら久しぶりだから優しく抱いてあげようと思ってたのに、一人で発散させるなんて酷いじゃあないか』
金具の音を鳴らしベルトの留め具を外し乍言う。
『溜まってるの君だけだと思わないでよね?』
先刻とは表情がまるで違う。
「なっ、手前、、、ッ?!」
『何?悪いけど、もう我慢できないから。』
そう言って太宰はジッパーを降ろし、中也の腰を掴んで自分のを宛てがう。
「ん゛ッ…」
『わぉ、もうこんなにして、、、準備万端じゃない』
「ッ誰が、、、ンあぁ゛ッ…//♡」
中也が言うのを遮るように太宰が挿入する。
『此処好きだね〜』
太宰が中也の前立腺を擦り乍声をかける。
「ゔぁ、、、ッ///ッちが、クソっ、、、んッ」
『違くないでしょ。自分で腰揺らしといて、説得力無いなぁ。』
「ッるせ、、、抜けよッ、、//」
『なんで?私が帰宅して部屋に入ってきたのにも気が付かないほど夢中になって自分でシてたじゃない。』
「…///!!」
羞恥で中也の顔が燃えそうなほど熱を帯びる。
『それだけ欲しかったんでしょ?』
耳元で煽り揶揄するように、艶めかしい声でそう囁く。
「ぐッ、、、耳元でッ、、喋っ///んあぁッ♡!」
勿論態とやっている太宰は更に突き立てる。
「〜〜〜〜〜〜ッ!!♡」
またイってしまった。
『自分の痴態を再認識して恥ずかしくなっちゃった?中也って結構マゾだよね』
「ッはぁ、はぁ、💢ちげぇよボケ!」
『ほんと、毎回口だけは威勢いいんだから。
まぁ、それも最初のうちだけだけど。』
「手前と言う奴は次から次へと…💢」
全く相変わらずどこに頭使ってんだよと言いたくなるほど苛つく言葉が返ってくる。
『う〜ん、これだけ元気があればまだまだイけるよね♡』
「は、待っ」
『無理でーす、待ちませーん。これは君への仕置きでもあるんだからね?今日は私が満足するまで付き合ってもらうから。』
そう言って後背位だった中也の向きを変え口付けを落とす太宰。
任務後で昂りが残っているのか、中也の抵抗を他所に手酷く口内を犯してゆく。
深く舌を絡められ、意識が溶けそうになるなか、初めは其の感覚から逃れようと掴んでいた太宰の襯衣を、気づけば引き寄せる様に手繰っていた。
「んぅ…///、、、ふっ、、」
必死に自分を求め縋ってくる中也に理性の糸が切れかけの太宰は再び腰を動かし始めた。
それに反応して中也は痛い程太宰を締付ける。
『ッはぁ、、、キツ、、感じ過ぎじゃない?』
「ん゛ッ、、、てめ、マジでッ、、いっぺん黙れ」
中也は何時もと違い威勢のない蕩けた声でそう言うと、離したばかりの唇をまたも交える。
太宰はゆっくりと、更に奥まで挿入し、突き当たりを優しく何度も小突く。
太宰の襯衣を掴む中也の手に更に力が籠り、口が塞がっていても我慢できず短い声が漏れている。
『、、、中也、奥、、挿入れるよ、、』
酸素を取り入れ、太宰がそう言うと、
「、、、ん。」
承諾を確認した太宰は垂れ下がり視界を邪魔する蓬髪を片耳に掛け、腰に力を込める。
今まで露出していた根元が隠れてゆく。
耐え難い抗えぬ感覚に中也は無意識に身を捩り顔を逸らす。
太宰はその様子を下唇を甘く噛み乍真っ直ぐ見つめる。
そして
「ッあぁ゛♡!!、、ぐッ、、、フーーッフーーッ♡」
『ん、、挿入っ、た、、』
其の強烈な刺激に、中也は太宰の肩に額を押し付け、歯を強くかみ締め乍不安定な呼吸を繰り返す。
ふと、太宰の視界に中也の夕焼け色の髪が熱っぽい艶を帯び、癖っ毛の可愛らしく跳ねた毛先から汗が滴り落ちる様が映り込む。
その光景が堪らなくなり、雫が落ちた彼の首筋を舌でなぞり噛み付くような口付けをする。
其の儘何度も唇を這わせ、少しづつ上へずらして行く。
その唇が及ぶ行き先に気が付いたのか判り易く中也の中が締まる。
全く素直な反応である。
『ほんと耳弱いよね。』
その反応が非常に愉快で焦らしたくなった太宰は意地悪く囁く。
反論したいのだろうが、快感に慣れるのに精一杯で言葉に成り損ねた声が漏れている。
舌を添わせながら耳輪を咥える。
すると腰を大きく跳ねさせ
「んン…///♡、、、はッ、、あぁッッ♡」
と情けなく声を裏返らせる。
其の様に太宰は我慢ならなくなり自分のが更に大きくなるのを感じる。
『動くよ、、』
太宰が覆い被さるように中也を抱きしめると中也も太宰の背中に手を回した。
太宰はほぼ動かせない程ひどく締め付けてくる中也に、こじ開ける様に腰をうちつける。
「ッあああぁ゛ぁ゛ぁ゛♡♡..ンあっ!あ゛ッ!」
『ッッ、、、!』
その度にお互いの全身に大きな快感が駆け巡る。
太宰は最早自分で動きを止める事も叶わない。
中也も、抑えのきかない太宰の吐息が耳にかかる度勝手に腰が跳ねてしまう。
中也の中が感受する感覚に耐えられなくなり鼓動のようにうねり、太宰に絡み付く。
「んッ♡はっあッ!!だざッ、、!もっ、、イッ..♡」
顔を真っ赤に蒸気させ目尻に雫を貯めた蕩けた瞳で此方を覗いてくる中也。
『いいよ。、、、私ももうイくから、、』
整った顔を少し歪ませ乍太宰がそう言うと、中也はキュッと両目を伏せ全身を強ばらせる。
「ああぁぁ゛ッ♡♡!ンうぅッッ、、♡ふぅ゛ッ♡」
『ッッ〜〜、、、』
中也に太宰の溢れた濃密な熱が流し込まれる。
中也は意識が暗転するほどの快感に侵され、無自覚に両脚で太宰の胴を締め付けている。
太宰は其の抑えが無い力量に、肺の空気が押し出される。
今、双方の間の空間はゼロに等しい。
普段であれば近付こうものなら即座に眼前に蹴りが飛んで来るというのに。
今有るのは曇りなく自分にのみ向けられた熱と圧迫感。
心地よくすら感じられるその感覚。
太宰は思わず、柔らかい前髪で隠れた中也の額に優しく口付けを落とす。
薄く伏せた瞼を開けると肩で大きく呼吸をし乍、擽ったそうな、歯痒そうな、そんな顔をした中也が此方を見つめている。
身長差の所為だと解っているしなんなら普段であれば弄り倒している所だが、上目遣いとでも言うのだろうか。
此方が目を離したく無くなる程魅力的な表情である。
月明かりに照らされ、その光を映し揺らめかせる港の海の様な、あるいは誰もがため息を漏らしてしまいそうな、積乱雲を泳がせる真夏の晴れ空の様な、そんな風景を連想させる吸い込まれそうな程深く、澄んだ蒼い瞳。
その眼に映るものが自分だけであればいいのにとさえ思ってしまう。
その欲の儘に太宰は中也の白い項にかぶり付き所有印を刻む。
中也は「ッおい、、、!」と言う割にあまり抵抗はしない。
チョーカーでギリギリ隠れるか否かの位置に紅い鬱血が一点。
途端に太宰の内に大きな満足感が湧く。
それと共に、更なる渇望も。
『ねぇ中也。真逆之で終わりだとは思ってないよね?』
「は、、、、」
軽やかに、然し含みを持たせた笑みを浮かべ乍太宰がそう言う。
太宰のその顔を見るなり中也は
「、、、はは、、、、。」
と諦めの意を示す乾いた笑いを零した。
『却説、夜はまだまだ長いねェ』
「そうだな、そうだ。夜はまだまだ長いんだ。だからそんな焦ること無んんん”ん”ンン///!!!」
数十分前までは静かだった此の部屋に、当たり前とは呼べぬ”何時もの”賑やかさが無事戻ったのであった。
・
・
・
・
・
fin
コメント
1件
ァァァ主様これは尊すぎです やばいタヒねるまじ尊いはぁ、最高👍❤🎊