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眠りひめ
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リハーサルが終わって、控室へ戻る廊下。
本番さながらに動き続けた体からようやく力が抜けて、メンバーが揃って重い足取りで汗を拭いながら歩いていた。
「あーー!あっつい!」
「今日めっちゃ汗かいたなぁ」
「照明の熱すごかったよね」
他愛もない話をしながら歩いていると、不意に、さっきの出来事が頭をよぎった。
暗転。
平台を運ぶスタッフ。
そして、
⸻……柔太朗!!
足が止まる。
「どないしたん?」
太智が不思議そうに振り返った。
「あ…いや、何でもない」
慌てて笑ってごまかし、また歩き出したけれど、胸のどこかに、小さな違和感だけが残る。
あの声だけが、不思議なくらい耳に残っていた。
……そういえば、久しぶりに名前を呼ばれた。
少し前までは、それが当たり前だった。
「柔太朗」
「柔、これ」
「柔太朗、行くよ」
以前は、一日に何度も聞いていた声。
いつの間にか、それが少し減っていたような気がした。
「あのさ」
「これ」
「ちょっと」
そんな呼びかけばかりになっていたことにも、そのとき初めて気付く。
忙しかったからかな。
しばらく本調子ではなさそうな日が多かったし。
ドラマもスケジュールがキツそうだった。
それくらいにしか思っていなかった。
でも、暗闇の中で聞こえたあの声は、
何だか少しだけ違って聞こえた。
呼び止めるためだけの声じゃなくて、
名前そのものを大事に呼ばれたような、
ちゃんと、自分の名前を呼んでくれた声だった。
「…まあ、気のせいか」
小さく呟いて、自分で笑う。
少し前を歩いていた勇斗が、その小さな笑い声に気付いたように振り返る。
「ん?」
いつもの優しい目がこちらを見ている。
「どうした?」
「ううん」
危なかったから呼んでくれただけ。
それだけのことなのに。
なぜか少しだけ、うれしかった。
「何でもない」
笑って、また歩き出した。
隣にはいつものようにメンバーがいて、
先頭にはいつものように勇斗がいて。
その小さな違和感も、歩幅を合わせて歩いているうちに、少しずつ胸の奥へ溶けていった。
だから、そのときはまだ知らない。
たった一度、名前を呼ばれただけで
自分の心にもまた、まだ名前のない何かが
静かに生まれ始めていたことを。
番外編 了
――――――
ありがとうございました。
このお話の2人の結末が書きたくなってしまったので、🤍さん視点でまた続きを書きます。新規で新しくタイトル付けて始めた方がいいのか、このままここに続けた方がいいのか…?どっちが読みやすいのかな。
でもその前に、付き合ってる2人が書きたいので一旦、別で短編はさみます。
♡、フォロー、コメント、嬉しいです。ありがとうございます!
コメント
5件

めっちゃ続きみたいです😭 両思いになってくれぇさんぱち