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それは、数日後のことだった。
前回の公園での接触以来、マキマはリムルの周辺から「監視の目」を徹底的に排除していた。だが、彼女の瞳の奥には、リムルの体内に潜む**「異質の存在」**への強い警戒と、そして好奇心が燃え盛っていた。
「リムル君。君の存在は、私の計画にとって、あまりにも予測不能な変数(ノイズ)なの」
マキマがリムルを呼び出したのは、何もない広大な海岸線。夕暮れの空が、二人を赤く染め上げていた。
「君の中の『彼女』は、私の『支配』に抵抗した、唯一の存在。……あの時、貴女は私の背後にいる『存在』にまで干渉しようとしたわね」
マキマはそう言うと、静かに銃を構えるように、指をリムルに向けた。
「だから……一度、死んでくれるかしら」
「ぱん」
音もなく放たれた不可視の衝撃波。本来なら対象を粉砕するはずの一撃だが、リムルの前でそれは、パリンとガラスが割れるような音を立てて霧散した。
『報告。個体名:マキマによる、多重指向性衝撃波を確認。……**【多重結界】**により無効化しました。……マスター、これより「強制介入」を開始します』
シエルさんの声に、いつもの冷静さを超えた「怒り」が混じる。
リムルの体が銀色の光に包まれ、その瞳が蒼く輝いた。意識の主導権がシエルへと渡る。
「……マキマ。貴女は、マスターの安寧を脅かした。その罪は、万死に値します」
シエル(リムル)が静かに手をかざす。
「【虚空之神(アザトース)】——空間支配・隔離展開」
一瞬にして、周囲の景色が「無」の空間へと変貌した。
マキマは目を見開く。ここには日本国民も、彼女が支配する動物一匹すら存在しない。
「この空間は、現世から完全に切り離された隔離宇宙です。……貴女がどれだけダメージを受けても、身代わりになる国民はここにはいません。ただ、貴女一人の魂が削れるだけです」
「……っ! まさか、この『領域』ごと切り離すなんて。さすがね、シエル」
マキマは笑みを崩さないが、その背後には無数の悪魔の影が現れる。未来の悪魔、天使の悪魔、罰の悪魔——彼女が支配してきた最強の駒たちが、一斉にシエルへ襲いかかる。
しかし、シエルは動かない。
『思考加速——一億倍。……解析完了。全攻撃の術式を上書き(オーバーライド)します』
天使の悪魔の「寿命武器」は光の粒子となって消え、未来の悪魔は「未来が見えすぎる」ことで自壊した。
マキマが必死に紡ぐ「支配」の言葉も、シエルの前ではただの無意味な文字列へと分解されていく。
「マキマ。貴女の望みは『対等な関係』だったはず。……ならば、この虚無の中で、己の罪と対等に向き合うがいい」
シエルの指先から、黒い炎が立ち昇る。
**【灼熱之竜王(ヴェルグリンド)】**の権能を応用した、魂そのものを焼き尽くす一撃。
「……ああ。そう。これが……敗北という、支配されない感覚……」
マキマの体が崩れ始める。彼女の瞳に映るのは、恐怖ではなく、どこか満たされたような、寂しげな輝きだった。
だが、リムル(シエル)は彼女を完全には消滅させなかった。
『……マスターの意志に基づき、魂を「捕食」し、再構築します。……個体名:マキマ。貴女の「支配の悪魔」としての概念を抽出し、**「一人の少女」**としてテンペストの養護施設で再教育することを提案します』