ユウはttの横にしゃがむと、口に貼られたテープを剥がした。
「やっと起きたね、薬強すぎたかな?」
「ハァッ、、!なにしとんねんお前!ここはどこや!?なんのつもりだ!!」
「声でかいなあ…ここがどこかは言えないけど、きみはもう帰れないよ」
状況が理解できず部屋を見渡す。
ドアがひとつあるだけの冷たく暗い部屋。
古い蛍光灯は今にも消えそうに点滅している。
見下ろすユウの細い目、薄いくちびるには表情がなく、感情が読めなかった。
「…どうゆうことだ」
「jpから聞いたかな? 俺、父親が遺した借金のせいでヤバい組織と繋がっちゃってるんだよ。詐欺も恐喝も強奪も、何なら殺人もしてるような」
jpからそんな話は聞いていない。
むしろjpも知っているような様子ではなかった。
個人的な事情、とはそういう事だったのか。
混乱するttを他所に、ユウは淡々と続けた。
「さすがに殺人はしてないけど、その手前のことは何でもしてきた。2年くらい前かな?小さい事でしくじっちゃって、この前外に出てきたんだ」
頭が追いつかない。
自分には関係ないと思っていた世界の人物が目の前にいて、それがjpの友人で、闇に手を染めていたなんて。
「早く組織から逃げ出したくて、金のためにもっと大きな事をしようって思ってたところ、きみを連れたjpに再会したんだ。ちょうど良いって思ったよ。」
「…ちょうど良い?何するんや、、」
「きみ、いくつ?」
質問は無視され質問で返された。
主導権はあちらにある。
たっつんはおとなしく答えた。
「…26」
「そうなの?もう少し若いかと思ったけど、困ったな、あと3は若い方が良かったな」
「…話が見えんのやけど…」
「…幸せそうなきみは知らないかもだけど、世の中にはペットを求めているお偉いさんがたくさんいる。男色のね」
「大企業の取締役、政治家、芸能関係者。なんなら海外にも需要がある」
「きみ、綺麗だし商品価値が高そうだから」
「な、」
「邪魔なんだよ。見た目が良くて、良い会社に勤めて、何でも持ってるくせに更にjpの隣で幸せそうに笑ってるきみが。時々きみたちの動画を観てたんだ。本当はきみの場所に俺がいたかった。悔しくて仕方なかったよ。実際会ってみれば、jpときみの関係性は本当に憎らしかった。きみたちそういう関係でしょ?… だから、きみを売る。そして俺は組織から解放されて、俺がjpのもとへ行く。」
「大丈夫だよ、jpには俺からちゃんと伝えるから」
ユウは単調な口調のままttのスマホを揺らしながら言うと、ドアの方を見て続けた。
「そろそろバイヤーが来るはずだよ。そしたらきみを引き渡す」
ペット、需要、商品。
自分が置かれた状況を理解し始めたtt。
後ろ手になった腕も、足首で縛られた脚も、全く動かせず芋虫のように揺れることしかできない。
逃げ出す方法はなさそうで、ユウが気を変えてくれるのを願うしかなかった。
阿諛するように、声色を高くしてゆっくりと言った。
「ま、待ってや、、」
「借金、、どのくらいの額か知らんけど、エンジニアなんやろ?ならそれなりに収入あるやろ?地道に返す方が真っ当じゃないか?」
「エンジニア?あぁ、適当についた嘘だよ。今の方が稼げてるし。それに真っ当なんて今更だよ」
「…また捕まるで?」
「…借金に追われて暮らすより、早く解放されたい。一瞬だとしてもjpと一緒にいたい」
「そんなやつがjpのそばにおるなんて許されるわけないやろ」
「…もっと他の方法一緒に考えようや」
「きみがそれ言う?借金もそうだけど、きみが邪魔だからこうするのに」
「…俺なんか売れへんよ、、」
「きみの価値はわかんないよ。だからバイヤーがきみを見定める。評価してくれるよ」
「…評価?」
ガタン
ドアの向こうから音がして、誰かが近づいて来る気配がする。
「…ちょうど来たみたい、じゃあね、俺はこれでお別れ」
「待てや!」
「たすけてくれ!頼む!」
最後にユウは微笑むと、ドアの向こうに消えていった。
コメント
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ん、わ、、🫣 く、くるしい…すね Uさんこわいよー!
わお、、、ユウさん想像以上にやばいことしてましたね😱