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「痛ぇだけなんだって。ほんと」
「……てかさ、何されたらそんなに反応しなくなるの? 俺なんて一瞬だよ」
そう言って、あいつは無遠慮に自分の体の変化を隠そうともせず立ち上がる。こっちはそれどころじゃなく気まずいんだよ。
「りゅせも一回連れ去られてみればわかるよ。……マジで怖いからな? その気もないのに、知らない奴に押し倒されて……生きた心地しねぇからな」
「え、やだよ。俺、知らない人じゃなくてともやとがいいんだもん」
「だから、そういう話をしてるんじゃねぇんだって……」
あまりの噛み合わなさに、もはや怒る気も失せて自嘲気味に笑った。すると、またりゅうせいがさっきと同じ顔で固まった。
「なんなの? さっきからその間。俺、歯に青のりでもついてるか?」
おどけて、机の鏡で顔を確認するフリをした。だが、その手からそっと鏡を取り上げられ、代わりにりゅうせいの顔が至近距離まで迫る。
「……だから、ダメなんだって」
「……いいよ。体なんてどうでも。今、ともやとキスしたいんだもん」
「……んっ」
昨日の無理矢理しようとしていた感じからは想像できない、優しくて、とろけるような柔らかいキス。
なんだよ、それ。そんな顔で、そんな風にされたら……俺のこと好きだって、勘違いしちまうだろ。
「……あま。バニラの味がする」
「ね? 美味しいでしょ」
「……うん」
今度は俺の方から顔を寄せて、りゅうせいの唇にそっと触れた。
ダメだ、こんなことしたって、未来なんて何もない。そう頭では分かっているのに。
けれど、部屋に入り、ベッドにりゅうせいを押し倒した時。
俺は、自分の中の「確かな変化」に確信を持った。
――ああ、俺、大丈夫だ。
めっちゃりゅうせいの事愛おしいと思ってる。
「……やだ、ともや無理にそんな事しなくていいよ」
「大丈夫だって。ちゃんと、心は動いてる」
イヤイヤと顔を振ってるりゅうせいが可愛い、愛おしい。俺、こんな気持ち初めてかも。
照れくさそうに笑ったりゅうせいの唇にもう一度軽く口付ける。いや、可愛いな。やっぱ可愛いわ。俺、ぜんっぜんりゅうせいいけるわ。
「…ともやは?」
「ん?」
大丈夫だろ、そう思って自分の部分を確認した。が、なに一つ変わってなかった。終わった。俺、男として本気で終わってる。
「…気にしないでいいよ? 俺、わかってたし、嬉しかった」
「…ごめん、りゅせ。ほんとごめん」
唖然としたままの俺を優しく抱きしめてくれたけど、少し鼻を啜る音が聞こえて、心臓がぎゅうっと締め付けられた。
『役割なんて、どっちがどっちでもいいっしょ』
以前りゅうせいが言っていた言葉が脳内で蘇る。そうだ、俺がダメでも、りゅうせいに身を任せれば、繋がれる。気持ちを切り替えて続きをしようと思った矢先、りゅうせいが服装を整えだした。
「…この間の漫画の続き見てもいい? 俺、続きずっと気になってたんだよね」
きたよ、これ。りゅうせいのこの切り替えの速さ、なんなの。
ていうか、毎回これに助けられてる気がするな。もしかしてわざとだったりすんのかな。
俺が困ってる時、こいつは絶対、空気を切り替えてくれる。まじで愛おしい。俺、りゅうせいめっちゃ好きだわ。
言いたい。けど、俺、気づいたんだよね。
りゅうせいの「好き」の形が、俺の醜い部分を知るたびに、少しずつ削られていっているような気がして。
初めは、あほで可愛くて好き、だったのが、今日はとうとう嫌いになった。
ライラ からぴち・シクフォニ♡
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