テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
しるあっと
1,500
柘榴とAI

441
#没入感フィクション
柘榴とAI

391
「随分とナイフの扱い方も慣れて来ましたね、シックス」
「あ、ありがとうございます!」
色々あった、夏休み前半の合宿。
あれからというもの、4cardの訓練はもちろん、timelimit:10の暗殺術の授業も追加してもらっている状態。
もはやコレ、二人に授業料をお支払いしないと不味い状態だよね本当に。
ちゃんとお支払いします! というと、お二人は絶対首を縦に振ってくれないので。
お歳暮みたいな感じで何かしらお送りしてみたのだが、向こうからもお返しが返って来るのでどうしたものか。
まぁそちらは追々考えるとして。
「そろそろ我々のお仕事も近いですが、どうですか? 自信の程は」
ニコニコしながら、10がそんな事を問いかけて来た。
いつもながらお仕事と言われると緊張するし、自信とかは未だに持てないのだが。
「ぇと……自信はちょっと分からないですけど。でも、凄く楽しみです!」
これだけは間違いない。
4cardからは、近接戦の時のライトの使い方も織り交ぜて教えてもらっているし。
timelimit:10からは、様々な刃物の使い方や身体の動かし方などを、それこそ初歩から叩き込んでもらっている。
その結果、と言っても良いのか。
武器の持ち替えが、小さい物なら昔よりずっと上手に出来る様になりました。
というか今まではポケットナイフだったし、あれも良くなかったのだろうけど。
今ではちゃんとした鞘付きの刃物を、身体の色んな所に隠してある。
ハンドガンをホルスターに突っ込んでからこれ等を抜く、そしてナイフならフラッシュライトと一緒に装備しても殆ど邪魔にならない。
むしろ相性が良い組み合わせだという事にも気づき、最近はこの二つを使って前以上の近距離戦闘を練習させてもらっていた。
「それはとても良い事ですね。出来れば自信も持って頂きたいところですが、まぁ奥ゆかしいのもシックスの魅力の一つでしょうから。私が煩く言う事ではありませんね」
「す、すみません……魅力だなんて言って頂けるほど、大したモノではないんですけど。でも、ありがとうございます」
そんな会話を続けていれば、彼は此方に一本のナイフを渡して来た。
ちょっと不思議な形をした、なんか鎌みたいに反っているヤツ。
「今日は最後にコチラの使い方も教えておきましょう。恐らくシックスの戦い方と、良く合うはずです。そちらのナイフは差し上げますから、長さや重さなど、もっと自分に合う物を見つけましたら切り替えて下さいね?」
「あ、ありがとうございます! 使わせて頂きますね。それで……えっと。こう、持てば良いんですかね?」
ごく普通に掴んでみたのだが、何かグリップの所……凄く違和感。
正直に言うと、掴み辛い。
「ハハハッ、シックスは本当に素直で基本に忠実な方ですね。それは“カランビット”というナイフでして、逆手に持つのですよ」
「逆手……え、逆手? こう、でしょうか」
ひょいっと持ち替えてみると、今度は凄くフィット。
拳の下からナイフが飛び出している様な形に変わり、ちょっと不思議な感覚。
ナイフを逆手に持つ事はあったけど、コレはこっちが正しい持ち方なのか。
「今度のイベントは本当にソロで戦う事になりますからね、今の内に手札を増やしておきましょう。時間も期間も短いですが……まぁ、貴女なら大丈夫でしょう」
「が、がんばります! ご教授、よろしくお願いいたします!」
そんな訳で、本日もまた新しい事を教えてもらうのであった。
ついでに言うと、こんなに刃物ばっかり扱っていると……ちょっとリアルでも欲しくなってしまうという、また子供みたいな発想がチラつくのだが。
ネットで検索したら、当たり前かもしれないけど……普通に斬れる物ばっかり出て来たので止めた。
玩具で良いんです……本物は流石に怖いです。
◆
「前半イベントはギリギリ参加したって感じだったけど、やっぱ最後までは終わらなそうだなぁ~」
「こればかりは、致し方あるまい。しかし金策としては、十分だと言えよう。なんたって我々は、それ以上に価値があるモノを学んでいたのだからな!」
訓練とは別に、翌日46leatherを使って皆と一緒に遊んでいると。
イベントの達成項目を眺めながら少し悔しそうにするグレーさん。
彼の声に応え、高笑いを浮かべている出っ歯さんという。
まぁいつも通りの光景が広がった訳だが、私の方も同じページを開いてみれば。
夏休み前半のNPCイベントは、半分も終わらなかった。
こればかりは仕方ないと言うか、リアルの方が忙しかったからね。
でも、出っ歯さんの言う通りだと思う。
合宿に行ってから、明らかに皆の動きが変わったのだ。
重装備のグレーさんはより状況把握が早くなり、牽制の為の威嚇射撃がかなり的確になった気がする。
これによって相手を彼が押さえている間に、私と出っ歯さんが敵陣の中へと容易に飛び込める様になったのだ。
そして出っ歯さんもまた、走りながらも視線を周囲にずっと走らせているのが良く分かる。
より確かな情報と敵の位置を頭の中へと叩き込み、自らが走り抜けるルートを前よりも慎重に選んでいた。
だからこそ被弾率はグッと下がり、リスポーンする事も前よりかなり減ったと言えよう。
いつも通り派手に戦う癖は、相変らずだが。
でもそれが彼のスタイルなので。
「ハハッ。俺は皆程活躍が見せられないから、あんまり目立たないけどね」
「いやいや、クロさんだって十分ヤバイでしょ~。裏を掛かれてスナイパーに敵を近づかせちゃったのに、何かあっさり殲滅してたし。見えない所でキルログがポポポって出て来たから、ビックリしちゃったし」
なんて言って笑うクロさんとナナさん。
前半イベントはとにかく敵NPCが多くて、しかも高難易度に設定されていた。
その為私達が気付かなかった、もしくは別ルートから進行して来た相手が、後衛であるクロさんの所まで抜けてしまった事が何度かあったのだが。
そんな事態に対し、彼はこれと言って慌てる事なく対処。
『ごめん、少し援護途切れるよ。三人くらい来た』
とか冷静に言った後キルログだけ上がって来て、その後普通に援護射撃を再開するという。
いや、スゴ。
もはやソロでも滅茶苦茶強くなっている。
あとは何と言っても、ナナさん。
彼女の動画チャンネルを見る限り、普段通りお仕事しているみたいなのに。
こっちのパーティによく顔を出してくれる様になったのだ。
その度に、カメラは回しているみたいだけど。
でも前と違って、表情は真剣そのもの。
まるでここにsevenが居るんじゃないかって程に、アクションの面でも本気を出して来ている感じだ。
ということで短期間ながら、それなりにイベントは進める事が出来たのだが。
「そろそろ私も“バイト”が始まってしまうので……ちょっと残念ですけど。皆さんは、後半も参加するんですよね? “賞金首イベント”」
「そっちはマジでゴメンねぇ……私もシロちゃん同様、空いた日とかで良ければ付き合うからさぁ」
私とナナさんに関しては、後半は“敵”として登場するので。
しかし毎日フルに働く! という訳では無い様で、シフトがお休みの日に関しては自由にして良いと言われているのだ。
とはいえ、もしも予定されていた賞金首が参加出来なくなった場合は、交代要員として参加する可能性はあるんだけども。
「こればっかりは、仕方ないよ。リアル優先、だしね」
「タイミングってやっぱ大事よなぁ……二人とも一緒に組みながら挑戦してみたかったけども、しゃーないしゃーない」
「ぐぬぬぬ……今回のイベントは少々特殊だからな。5人揃えたかった所だが。しかし! 二人共予定が空けばすぐに連絡を頼むぞ! 我々はいつだって待っているのでな!」
こういう所は、皆しっかりしてるよね。
全員バイトとかで労働を経験してるから、割り切りがハッキリしているんだろう。
でも私としても、確かに5人で他の賞金首の皆さんに挑んでみたい気もするんだよね……。
シフトの方が本当に大丈夫だったら、顔を出してみようかな。
夏休みが本当にガンサバだらけになっちゃいそうだけど。
「でもまだ少し先だからね。それまでは皆で楽しみましょ~っと! ウチのリスナーも結構このパーティに慣れて来たらしくて、皆への応援コメントも来るんだよ? 特に出っ歯さんとシロちゃんが人気」
「ぬはははっ! やはり一番目立つ所にいるからな! 良きかな良きかな!」
「わ、私はちょっと恥ずかしいですけど……」
なんて会話をしながらも、皆と一緒に続きのイベントを遊んでいく。
今までの夏休みは、あんまりコレっていう印象が残る事は無かったんだけど。
昼間からこうして皆と遊べるっていうだけでも……私にとっては、凄く貴重な経験になっていると思うんだ。
やっぱり、ガンサバは凄い。
このゲームに関わってから、私の人生物凄く変化してるよ。
コメント
1件
みぅです🥀 第162話、読み終えました…! カランビットナイフ、逆手に持つんだ…!ってちょっと驚きました。シックスが10に教わってる場面、すごく丁寧で、武器の扱い方に成長を感じられて嬉しくなりました✨ あと、クロさんが裏をかかれてスナイパーを近づけられちゃったのに冷静に殲滅してキルログだけ上がってくるの、かっこよすぎる…! みんなそれぞれ役割が生きてて、パーティの成長がじんわり伝わってくる回でした🌙 夏休みの終わりが近づく感じ、ちょっと寂しいけど、賞金首イベントも楽しみにしてます🔥