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震える指で通話ボタンを押すと、低く重い声が耳に届いた。
『華、昨日はあのような場を混乱させて……失望したぞ』
胸がきゅっと縮む。
「……ごめんなさい」
『ホテルで遊んでいる時間があるなら、すぐに本社に戻れ。
君には桜坂家の跡取りとして、やるべき仕事が山ほどある』
「……っ」
受話口を握る手が震えた。
父の声は冷たく、一分の隙も与えない。
『もうこれ以上、無駄なことに時間を割くな。いいな、華』
ブツリ、と通話が切れる。
胸の奥に残ったのは、怒りとも悲しみともつかない重い感情だった。
「……無駄、なんかじゃないのに」
ぽつりと落ちた言葉は、虚しく空気に溶けていった。