俺の名前は悠。よく女の子と間違われる名前で、俺はこの名前が嫌いだ。
名前のせいで、クラスメイトによくからかわれたり、俺に悠という名前が似合わないのか、聞いてくる人もいる。
だけど、はるだと答えると、少し申し訳なさそうな顔で、また話し始める。
家も、塾も、学校もすべてが嫌いだった。
そんな中、俺がいつも行く場所は決まって図書館だった。
図書館は誰とも話さなくてよかったから。
何ヶ月も行っていたはずなのに見たこともない女の子が話しかけてきた。
「いつも図書館にいるよね。本、、、好きなの?」
そう聞かれて俺は答えた。
「塾に行ってもからかわれるだけだから、仕方なくここに来てる。ただそれだけ。」
すると、女の子は不思議そうに顔を傾けた。
「なんでからかわれるの?」
「俺の名前が女の子っぽいから。」
「なんて名前なの?」
「悠。」
「悠?いい名前じゃん。私は好きだよ?」
今までいろいろな人に会ってきたのに、俺の名前を好きだと言われるのは初めてだった。
「俺は嫌い。」
「あ!そういえば、私、美央って書いて、みおって読むの。」
「お前、美央って名前なのか。よろしく。」
「うん。よろしく。」
それから俺が図書館に行くたびに、必ず美央は居た。
そして、毎回話しかけに来る。今日はどうだったのか、今何の本を読んでいるのか。
いろいろ話すうちに、俺からも話しかけるようになった。
最初は、びっくりした目で俺のことを見てきたが、美央もだんだん慣れてきた。
話しかけると、美央は瞬時に笑顔を作る。
前に美央は小説が好きだと言っていたっけな。
好きな小説を見ていても、俺が呼ぶと振り向くんだなと思った。
いつしか俺は、美央に会いに行くために図書館に通っていた。
だけど、少し怖かった。
いつか、美央が俺から離れていく気がして。
だけど、なぜか、美央が俺から離れない気もした。
離れずに、俺と一緒に居てくれという俺の願いだったのかもしれない。
学校のクラスメイトや、塾の先生、親にもあまり本音が話せなかった。
だけど、美央には、すべて話せた。
いつしか美央は俺になくてはならない存在になりかけていた。
そしてこれから始まる。
この日から、今日までの、俺と美央の物語。
一体、初めてあった数日前から、美央と俺の関係はどうなるんだろか。
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