テラーノベル
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ずっと会いたかった俺の命の恩人さんはmfという名前で、ここから離れた東京?というところに住んでいるらしい。しかもここに来るのはなんと4年ぶりだとか。道理で全然会えないわけだと思うと同時に、そんなにも長い間この人を探していたことに自分でも驚く。二人で川辺に座ってグミの実を分け合って食べた。
「そんなに探してくれる程俺に言いたいことあった?」
「だって俺あの時絶対死ぬって思って…あの時怪我してまで俺のこと逃がしてくれたでしょ、いっぱい励ましてくれてさぁ…ありがとって言って、俺こんなに大きくなりましたって伝えたかったんだよ。俺あれで人間のこと好きになったし」
「…そんな風に思ってくれるのは嬉しいけど。…罠仕掛けたのも人間なんだから警戒はしなさいね」
「それは、そうなんだけど…」
確かに今でもこの山には度々罠が仕掛けられてたりする。だけど、mfくんやいつも俺を見かけると果物をくれるおじいちゃんみたいな優しい人間が大半なんだって信じたい。そう思って俺は口を開いた。
「そういえば、この山の麓の家知ってる?おじいちゃんが一人で住んでるんだけど」
「……え?」
「そのおじいちゃんが俺のこと可愛がってくれるんだ~最近会えてないけど西瓜とかアケビとか食べさせてくれるんだよ!今度mfくんにも会わせてあげる!よくお話してくれるし、俺益々人間が好きに、」
「……………」
命の恩人のmfくんに大好きな俺のおじいちゃんの話をしたい。そう思って誇らしげにおじいちゃんの話を続けているとなぜか急にmfくんは黙り込んでしまった、どうしたんだろう。ちっとも動かなくなっていたmfくんは、漸くため息のように長く息を吐いた。その空気は不自然に震えていた気がした。
「…mfくん?」
「…あーーー…やるじゃん、じいちゃん…」
振り切ったように勢いよく顔を上げたmfくんの目は水分をたっぷり含んで真っ赤になっていた。
その後優しい口調でmfくんはぽつぽつと話し始めた。そのおじいちゃんはmfくんのおじいちゃんだってこと。おじいちゃんに魚や虫の獲り方、山に生えている食べられる果物などたくさん教えてもらったこと。病気を患っていて一か月ほど病院暮らしだったこと。4年間会えてなかったこと。つい最近亡くなってしまったこと。
俺は、知らなかったんだ。
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