TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

真夏日。

少し前までは隕石衝突やらマヤ文明のなんやらで世界が消滅するだのしないだのと騒がしがった世間も、今や「あの超人気アイドル初のドラマ出演決定!」などという話題がトップニュースになるくらい、平和になっていた。

職業柄、時事的なニュースにはめっぽう強く、ネット界隈での終末論争最前線で激論を繰り広げていたような人種であるオレとしては、パンチに欠ける現状と言わざるを得ない。

まぁ職業柄とは言ったものの、本来のオレは18歳の普通の男子高校生である。

しかし今は自主的自宅謹慎を行い、ネット界隈の住人と意見交換に勤しむ合間に自宅を守る警備員をしている。

基本的な勤務内容としては、知識0から始めた同人音楽制作の傍ら某動画サイトの新着動画へ愛ある批判コメントを日夜投下し続けるというもので、この職についてからもう2年になる。

ちなみに作品はまだない。

だがしかし、今日は珍しくやる気に満ちていた!

PCデスク前にどっかりと座りこみ、今朝母に供給されたサンドウィッチを頬張りつつ打ち込みソフトを睨みつける。

目指すは某動画サイトランキング1位、着うた&カラオケ配信、メジャーアルバム……!

とどのつまりはちやほやされたいのである。

日頃はその高い志も虚しく、ものの数十分で朽ち果てて批判コメントを職人として邁進するのがデフォルトになっていたが、このサンドウィッチには母の愛以外にも特殊な成分が入っていたのだろうか、まるで神が降臨したかのようにフレーズが溢れだしてくる。

「これは……売れるッ!!」

そう口に出しつつポチポチと打ち込み作業を続ける。

あり得ないほどに順調な作曲作業に内心恐怖すら抱く。

しかし、先ほどから明らかに故意で作業妨害を敢行するウイルスとでも言うべきそんざいがディスプレイの中でちょろちょろとしていた。


「今日はかなり猛暑日だそうですよ。うわっ!都心で予想最高気温35℃ですって!」


『そんな暑いの、外』


そして……オレの隣でディスプレイの中を覗き込み、ウイルス同然の存在と楽しげに会話をする少女、もとい従兄妹 ー 瑞稀がいた。


「みたいですねー!……わわ。もう都内だけで十人くらい熱中症で搬送されてるみたいですよ。ご主人も外出時にはしっかりと対策しないとだめですね!」


『シン兄は引きこもりだから外なんて出た日には干からびて死んじゃうよ、引きこもりだから』


2回も言う必要あったのか、それ。


「あっはは!確かにそうですね〜」


まぁとはいえ瑞稀の言う通りだ。

こんな日に外出する奴の気がしれない。

というかそもそも外出する奴の気がしれない。


「そうだ、今日のサイレンはですね、某国の危険度レベル4以上の有事に使用されているアラートでして、ご主人が最も嫌がるであろ周波数帯域にブーストをかけて_」


「今日のサイレンってなんだよ!明日もあんのかよ!…………あ」

いよいよ突っ込んでしまった。


『……やっちゃった?……笑』


隣で瑞稀が苦笑する声が聞こえた。

これはまずい。

ディスプレイを右に左に移動しながら、不毛な会話の種を投げつけていたそいつは突如立ち止まり、「キタ!」と言わんばかりにどアップで笑みを浮かべて嬉々として続ける。


「あ、ネタバレになっちゃいましたね〜では明日はもっと刺激的なものをご用意せねば! いえいえお代は頂きません、お客様の喜ぶ顔が見られれば 結構でございます」


「どこのせぇるすまんだよ!お前これ痣になってるからね!?傷害事件だからね!?」

おーほっほと不気味な笑いを繰り出しつつ手をもむそいつに、痛々しい打撲痕を指さし必死の言及を行う。

しかしそんな抵抗も虚しく、そいつは「?」とクエスチョンマークを頭上に表示させてしらじらしい顔で首をかしげるのだった。


_____


8月14日午前3時。

突如として家中に鳴り響いたサイレンの音は、オレはともかくとして母親、ましてや普段は1度寝ると中々起きることのない体質である瑞稀までも叩き起した。

駆け付けた母親が目にしたものは、ディスプレイに表示される「かわいらしい女の子」を、大声でどなり散らす息子の姿。

サイレンよりも確実に近所迷惑だと思われる怒鳴り声が発せられ、拳が目の前に現れたかと思うと、朝になっていた。


_____


そのようなことがあり今に至る。

鏡は見てないが顔にも恐らく痣ができているだろう。

「もう勘弁しろよマジで……PC壊されたらどうすんだよ……ほんと死ぬぞ?」


「おおお……ご主人お優しい!自分のことよりも優先してくださるなんて!今朝も目が覚めてすぐ私のところに駆けつけてくださいましたね!」


『シン兄やっさし〜』


合いの手を入れる少女を気にも留めずに、往年の少女漫画のように毒々しく目を輝かせながら、さらに画面いっぱいにズームしてくるそいつにまたも激しく怒鳴り散らす。

「それお前をデリートするためだから!!あとPCなくなったら死ぬのオレだから!!」


「またまたそんなこと言って……。ご主人は人徳のあるお方です……素敵!」

話にならない。

こいつホント話にならない。

もう嫌だ。

_____


Zinnzou Enemy



この作品はいかがでしたか?

42

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚