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ぶちまければこんな風にあたしがみんなからイジメられるようになった理由は、たったひとつ──。
雨の日に、カサを忘れてったから。ただそれだけ。
家を出てから、突然降り出した雨に、遅刻しそうだったあたしは、カサを取りに帰らずに、そのまま学校へ急いだ。
そうして始業チャイムギリギリで教室に駆け込んだあたしに、誰かが、
「なんか、湿ったにおいがしない?」
ふんふんと鼻を鳴らして、嗅ぐマネをした。
「ほんとだ〜、何この湿って臭いの。誰?」
そのひと声で、クラスの視線が教室へ入って来たばかりのあたしに、あっという間に集まった。
「えっ、だってあの…ちょっと、カサ取りにいけなかったから。少し濡れちゃっただけで……」
スカートに付いた雨の雫を手で払いつつ、とっさに笑って取りつくろおうとするあたしを無視して、
「濡れ女」
そう、昨日まで友達だと思ってたコが、ふいに冷たく言い放った。
「え……濡れ女って…なに…?」
意味がわからず聞き返すあたしに、さらに他のコたちが追い討ちをかける。
「濡れ女とかいう妖怪って、いなかったっけ?」
「妖怪! いたかも!」
「妖怪 濡れ女!!」
口々にはやし立てて、クラス中の誰もがケラケラと耳につく甲高い笑い声を、あたしに浴びせた。
「や、やめてよ? 妖怪とかさ……」
あたしは友達にそう返して、何気なく軽く肩をたたき、この話を終わらせようとした。
途端、「やめてよ!」と、その手が振り払われた。
「さわんないでくれる? 湿気臭いのがうつるじゃん、こっちまで」
あたしは、言葉を失った。
……ウソ。
友達だと思ってたのに、まさかこんな理由で?
こんな些細なことで、友達じゃなくなるの?
ねぇ、ウソでしょ?
こんな簡単に、仲たがいをするだなんて……。
……ねぇ、みんな、本当は初めから友達なんかじゃなかったの?