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三章目
あの暑いの夜から、長い長い時間が流れた。
私は今、かもめ学園の旧校舎の廊下を歩いている。
薄青い髪を揺らし、右目が黒、左目が白のオッドアイで、誰もいない空間を見つめながら。
霊力の強い私は、歳を取ることもなく、あの頃と変わらない「今にも消えそうな姿」のまま、この学園に縛り付けられていた。
唯一変わらないのは、左手首で静かに輝く、あの日天音からもらった月のブレスレットだけ。
「…..本当に、ここにいるの?」噂で聞いた、1校舎3階の女子トイレの怪異。
意を決して扉を開け、私はあの日からずっと胸の奥に閉じ込めていた名前を呼んだ。
「花子さん、花子さん……そこに、いる?」
「はーあーい」
カタリと重い扉が開き、中からふわりと少年の異が姿を現した。
古い学ランに、レトロな学生。頬には『封」の札。
「……あ」
「え……」
少年の=一花子くんの動きが、完全に止まった。
その大きな色の瞳が、じられないものを見るように見開かれる。
視線は私の薄青い髪、オッドアイ、そして=一左手の月のブレスレットへと注がれた。
「…..露葉、なの…..?」
その声は、かつて私を「月みたいにそばにいて」と繋ぎ止めてくれた、大好きな普の声だった。
「普……!会いたかった、ずっと……つ」
私が一歩踏み出した瞬間、花子くんは弾かれたように私に飛びつき、その細い体で私を狂おしいほど強く抱きしめた。
怪異の体は、生きている人間よりもずっと冷たい。だけど、そこから伝わる執着の強さは、あの生前の夜のままだった。
「露葉、露葉…..っ! 本当に露葉なんだね……!ああ、どうしよう、夢じゃないよね……っ?ずっと、君に謝りたかった。一人にしてごめん。僕を置いて消えちゃうんじゃないかって、ずっと、ずっと怖かったんだ……つ!」
花子くんは私の首筋に顔を埋め、子供のように声をあげて泣いた。今にも消えそうな私を、もう二度と離さないと誓うように、骨が軋むほどの力で抱きしめてくる。
「ううん、私、消えてないよ。音との約束、ずっと守ってたもん……」私がそう言って微笑み、花子くんの背中に手を回そうとした、その時だった。
「あはっ!見つけた!!」
背後から、空間を切り裂くような、あまりにも聞き馴染みのある無邪気な声が響いた。
振り返ると、トイレの入り口の壁に、逆さまに張り付いた。
花子くんと全く同じ顔。だけど、頬の札は黒い「封』で、瞳はあの夜に光を失ったはずの、真っ黒な闇。
「つ、かさ……つ!?」「露葉ーーー!!!」
司は壁から飛び降りると、花子くんの腕の中から私を強引に引き剥がし、自分の胸の中へと激しく抱き寄せた。
生きている時以上の、冷酷で圧倒的な力。司は私の髪に顔を寄せ、深く息を吸い込む。
「あははは!やっぱり露葉だ!髪の色も、おめめの色も、ぜんぶ俺の好きな露葉のままだ!会いたかったぁ、ねえ、俺のこと寂しかった?」「司、露葉から離れる……っ!!」
花子くんが、見たこともないような冷たい怒りを宿した目で、包丁を抜き放つ。
だけど司は、そんな兄の脅迫など全く気にする様子もなく、私の手首の月のブレスレットを、冷たい指先で愛おしそうに撫でた。
「あまねはケチだから露葉を置いて死んじゃったけど、俺は違うよ?露葉、これからはずーっと俺と一緒にいようね。今度こそ、俺が露葉をどこにも行けないように、ぜんぶ壊してあげる」
黒い瞳の奥に、生前よりもずっと深い、狂気的な執着をギラリと光らせて、司は私の耳元
で甘く囁いた。
怪異となった双子の、私を巡る終わらない執着。
私の手首の三日月は、2人の冷たい手の狭間で、ただ静かに農えていたーー。
蜂蜜きな子
16
#犬
ここと🌹🫶 @低浮
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みみ
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コメント
1件
え、待ってこれ、まさかの花子さん×露葉だったんだ……!しかも双子の司まで出てきて三角関係になってるんだけど!? 怪異になった花子くんが露葉に飛びついて泣くシーンは胸がギュッとなったよ……切なすぎる。でもその後の司の豹変っぷりが怖すぎて震えた。「ぜんぶ壊してあげる」って台詞、完全にヤンデレのそれじゃん😱 あの月のブレスレットがキーアイテムっぽいのも気になる!続き早く読みたい!!