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その瞬間、私は全てを理解した。 あ、これ、バトルイベントじゃん。
主人公が居て、ヒロインが居て、そこに敵キャラが出てきたのなら、バトルイベントじゃん。
そう理解したら、怖がる必要は無い。でも、ミキちゃんと桜子ちゃんに、それを説明する訳にもいかない。
説明出来れば、怖がる2人を落ち着かせられるかもしれないけど、出来ないのが心苦しい。
『恨めしや………、憎らしや……、眠りを妨げる者共、討ち取ってくれようぞ………」
おお、生うらめしやだ。生幽霊の生うらめしやだ。あれ、幽霊が生? 死んでるから生はおかしいかな、どうでもいいか。
私達は逃げた方がいいかな。いや、男子2人が格好良くオバケを倒す所を女の子に見せなきゃ、バトルイベントの意味が無い。ここは、踏みとどまらないといけない。
「なんだテメェ! 成仏も出来ねえ優柔不断野郎がよ!」
亡霊武者に対して、啖呵を切るヤンキー。よく考えなくてもおかしいけど、女子2人はちょっと安心したっぽい。
「俺達が、あなたに恨まれる謂れはありません。どうか、お帰りください!」
朝倉くんは、対話で除霊しようとしてる。でも、これはバトルイベントだから、戦わないと終わらないよ。
『恨めしや………』
亡霊武者が、刀を抜く。その刀身は鉄じゃなくて、メラメラとした妖気的な何かで出来てる。ギャルゲーのイベントとはいえ、真剣で斬りかかられたら危ないんじゃないかと思ってたから、少し安心した。
『ヌゥン!』
亡霊武者が、袈裟懸けに斬りかかってくる。2人は、飛び退いて避けた。
あれ、朝倉くんがいつの間にか、野球部のユニフォームになってるし、バットまで持ってる。
時々あるんだよな、この世界。無いはずの物が突然現れたりする、ゲームの世界のご都合ムーブ。
後藤ケンジロウはムエタイ衣装になってないあたり、主人公の特権なのかもしれない。
「てやぁ!」
朝倉くんは、何故か出てきた硬式ボールを、ノックの要領で亡霊武者に打ちこむ。
『グッ……』
金属バットの高音の後、胴に当たって鈍い音がしたけど、亡霊武者にはほとんど効いてない様子。
「シィッ!!」
そこに追撃、後藤ケンジロウのハイキック。当たったかと思ったら、亡霊武者の兜が、中の骸骨もろとも飛び上がり、フワフワと浮かび上がる。
『恨めしい……』
亡霊の頭だし、飛んでも不思議ではないけれど、ちょっとホラー味が強すぎない? やっぱりこの時代のTONAMie、めちゃくちゃ尖ってたんだなぁ。
「せいっ!」
ちょっと朝倉くん、空中の頭に向けて打球を打ち込まないで。気持ちは分かるけど、ホラーが一気に筋肉番付になったじゃん。
『グワッ!』
そんでアンタも食らわないで。もうちょっとこうさ、ヒラリと避けるとか、実体が無いからすり抜けるとか、あるでしょうよ。
「オラァ!」
後藤くんも、落ちてきた頭をシュートしないの、サッカーボールじゃないの。そもそもアナタ、ムエタイ選手でしょうが。
『グワアアアァァ!!』
亡霊さんも、普通に効かないでもらえます? 負けるにしても、亡霊らしい、格好の付いた負け方してください。
亡霊武者は、朝倉くんと後藤ケンジロウの攻撃を受けて、黒い煙になって消えた。その消え方は解釈一致ですけども。
「佐伯さん、大丈夫!?」
普通の服装に戻った朝倉くんが、駆け寄ってくる。
最初に私? と思ったけど、最初に襲われた(?)のは私だから、心配されるのは当然っちゃ当然か。
「おかげさまで、なんともございません。それよりお二人は、お怪我などはございませんか?」
「俺は大丈夫。後藤くんは?」
「なんともねえよ、心配してくれてありがとな」
バトルイベントは、これで終わりかな。
てことは桜子ちゃんの好感度数値は………、54%。ギリギリ恋愛感情を持つか持たないか、というレベルか。結構上がったな。
これなら、卒業式までになんとか間に合うかも。間に合ってくれるといいな。
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