エイプリルフールでしたね。
遅刻しましたけど。
ということで女体化してもらいます。
ちなみに、アルベルトとグレンは付き合ってる設定です
ちょっぴりえっちかも
始まります
「くぁ〜…ねんむ…」
「先生、シャキッとしてください!」
「あ、あはは…まぁまぁ…」
いつも通り、グレンの背中を追いかける三人娘。
欠伸を噛み殺すグレンと、だらしないグレンに説教をするシスティーナ、そして苦笑いでシスティーナを宥めるルミアと眠たげな表情のリィエル。
至って普通のいつも通りの四人だ。
「…ん?」
「リィエル? どうしたの?」
ふと、リィエルが立ち止まって遠くから迫り来る人影を見つめる。
「あれ…セリカ」
「え? アルフォネア教授?」
リィエルは目がいいようで、その迫り来る人物が誰かまで分かったようだ。
そう、遠くから迫り来る人物はセリカ。
セリカ=アルフォネアだ。
「グーレーンーッ!!!!!」
「ぎゃーッ?! 今度は何ぃーッ?!?!」
グレンの名を呼びながら鬼のような形相でグレン達の所へ迫り来るセリカから何やら良くないものを感じ取ったグレンは、誰が行動するよりも早くその場から脱兎の如く逃げ出した。
だが、仮にも相手は第七階梯に至りし大陸最強の魔術師。
グレンの抵抗も虚しく──
「グレン、捕まえたぞっ♪」
「…捕まっちまった…」
素早く逃げ出そうとしたグレンを一言で捕まえるその技量は、さすが第七階梯といったところか。
第七階梯の名も伊達ではない。
分かりやすく肩を落として項垂れるグレンの頬に、セリカの手が触れる。
そんなセリカを不思議に思い、グレンが顔を上げれば──ちゅ、とわざとらしく音を立ててグレンの唇とセリカの唇が重なった。
「ん、んむぅーーッッ?!?!」
「きゃーっ?! アルフォネア教授?!」
セリカの予想外の行動に、グレンが目を見開き、システィーナとルミアが顔を真っ赤にして悲鳴を上げる 。
グレンが目を見開いたと同時に、グレンの口の中へセリカの舌と共に何かとろんとした液体が流れ込む。
グレンはそれを嚥下しようとせず、ただセリカから逃れるように身を捩ったり、首をいやいやと振ったりするが、セリカに後頭部を押さえつけられ、その上体を固定されてその液体を嚥下しろと言うように喉をさすられる。
ごくん、とグレンの喉が鳴る。
それはグレンがその液体を嚥下した証拠だ。
セリカは念入りにグレンの口内を舌で探ると、やがて満足したようにグレンから顔を離して小さな声でグレンへ呪文を唱えた。
その間も、グレンは酸欠で回らない思考と乱れた息を整えるだけだ。
セリカがなんの呪文を唱えたのかなどまでは頭が回らない。
「《陰陽の理は我に有り・万物の創造主に弓引きて・其の躰を造り替えん》」
「あ、ぐぅううううッッ──?!」
セリカが呪文を唱え終えると、その間乱れた息を整えていたグレンが急に苦しみだす。
そんなグレンの様子に、三人娘が心配そうに駆け寄った。
「体が、熱い…っ!!」
「せ、先生?!」
「グレン!」
この光景にはあまりにも既視感があった。
そう、先程セリカが唱えた呪文は【セルフ・ポリモルフ】の呪文なのだ。
【セルフ・ポリモルフ】は肉体の構造そのものを作り変えて変身する魔術。
セリカが【セルフ・ポリモルフ】を唱えた、ということは──
「セリカ、てめえ…俺に何し…て…?」
早速セリカへ詰め寄ろうとしていたグレンが、自分の声に違和感を感じて言葉を止める。
現在、グレンが自分の声として発していたのは、普段の聞きなれた声では無い、耳障りの良いソプラノの声だった。
「ま、ま…またかぁああああああ──ッ?!」
グレンが自身の状態を確認しようと、身体中をペタペタと触る。
そんなグレンが自身の状態を確認していると、三つの視線が自身に向いていることに気が付く。
「…なんだ? なんか変なとこでもあるか?」
あ、いや…今の俺の状態自体が変だったわ…と、グレンが苦そうに表情を歪める。
そんなグレンを差し置いて、やはり三人娘はグレンを見て固まったままだ。
システィーナとルミアは顔を真っ赤にして口を抑え、ぷるぷると小刻みに震え、対するリィエルは眠たげな表情はそのままに、顔をほんの少しだけ赤らめて呆然と目をぱちくりさせながらグレンを見つめている。
「…? おい、セリカ。女体化以外に俺になんかしたか?」
お前がなんかしたんだろ、とでも言わんばかりにグレンがセリカへ掴みかかる。
掴みかかられたセリカは、やはり満足気な表情をしてグレンを見つめている。
やがて、グレンはその四人の視線が一つの場所へ向いていることに気が付いた。
グレンがそろそろと四人が視線を向ける場所へと両手を持っていくと、四人が見つめていた頭のてっぺんにあるはずのないものがあったのだ。
「せ、せせせ先生の頭に…ね、ねね猫耳っ…」
「し、システィ落ち着いて?! うん、先生可愛いね?」
「ルミアッ?! あなたが話しかけてるのは私じゃなくてリィエルよッ?!」
「あ、う、え…うえ…?」
みるみるうちにグレンの顔が真っ赤になっていく。
そう、グレンの頭のてっぺんにあったのは猫耳。
それもしっかり動き、感覚もあるものだ。
そこに意識を持っていけば、それに反応するように真っ黒でつやつやな猫耳がぴくぴくと動く。
そして、グレンの視界の隅に映り、ゆらゆらと揺れる黒い細長いものに恐る恐る視線を向けると─
そこには、ゆらゆらと揺れるグレンのお尻から生えた黒いしっぽがあった。
そのしっぽは黒くて細長く、先っぽにはハートの形を作っている。
「…せぇええりぃいいいかぁああああああ──ッ!!!」
顔を真っ赤にしながら憤怒に震えるグレンと、そんなグレンの様子を口を抑えてぷるぷると小刻みに震えながら笑いを堪えるセリカ。
猫になったグレンのしっぽは膨れ、毛が逆立っていた。
「…グレン、かわいい」
取っ組み合いを始めたグレンとセリカを止めたのは、リィエルだった。
リィエルのたった一言で、その場の時間が止まったかのように全員が動かなくなってしまっていたのだ。
「…?」
全員を硬直させた張本人は何が起こっているか分からないといった表情で首を傾げている。
「り、リィエル…今なんて…?」
誰よりも早く正気を取り戻し、ぷるぷると身を震わせながらグレンはリィエルへ問う。
やはり顔は真っ赤なままだ。
「…、? だから、グレンかわいい」
「…は? はああああ──ッ?!」
先程よりも顔を真っ赤に燃え上がらせ、自身の頭のてっぺんについている猫耳をぺたんと手で隠しながら、男の時の中性的な声とは違うソプラノのよく通る声を廊下に響かせた。
そんなグレンの絶叫を聞きつけ、隣のクラスである一組の担任講師、ハーレイ=アストレイが毎度の如くやいのやいのと苦情を言いに来た。
と、ハーレイがグレンの姿を視界に入れると、たちまち石のように硬直してしまった。
「あ、あの〜…? ハーデス先輩…?」
いつものように名前をわざと間違えながらグレンがハーレイへ近付く。
すると、グレンがじりじり詰め寄って来ていることに気付いたハーレイが、ものすごい速度で後方へと飛び退いた。
今度はグレンが驚愕に目を丸くし、硬直してしまう。
やがて意識を取り戻すと、捨てられた子猫のように猫耳を寝かせて眉を八の字に曲げ、悲しそうな表情を浮かべた。
「…っとにかく! 静かにするようにッ!」
そんな雰囲気に耐え切れなくなったのか、ハーレイがバンッ!と力強い音を立てて扉を閉め、どこかへ行ってしまった。
なんともまぁ扱いづらい男である。
「…で? これはいつになったら戻るんですかねえ?」
先程の様子とは一転、グレンはそのままハーレイを追って教室から出ようとしていたセリカの腕を掴んで引き寄せ、胸倉を掴み上げて詰め寄っていた。
「ん? あぁ、今日一日は解けないぞ?」
セリカは胸倉を掴み上げられているにも関わらず、それをものともしないような様子でサラサラと問題発言をしていた。
なにがまずいかと言うと、二年次生二組の連中とセリカ、そしてハーレイは知っているものの、そいつら以外の生徒や今日夜会う予定であるアルベルトに女体化状態の自身と、そして頭のてっぺんに生えている二つの猫耳を晒さなければいけないのだ。
「はっ?! ふっざけんなぁああああ─ッ?!」
「ははは、まぁ頑張れ」
絶望、という様子のグレンとは違い、セリカは愉快そうに表情を緩めて乾いた笑いを零している。
今回でセリカに女体化させられるのは二度目であった。
一度目は女子校である聖リリィ校に臨時講師として行く際だ。
一度目はまだ仕方なかったとしても、今回はセリカからのただの嫌がらせ。
そして猫耳としっぽのオマケ付きという、最低最悪のコンディションであった。
「こんなくだらん嫌がらせはやめろぉッ?!」
「は? くだらん嫌がらせ? 何を言っているんだグレン?」
「…は? 嫌がらせじゃねえの?!」
「当たり前だろう? 私がお前に嫌がらせなんてする訳ないじゃないか!」
「バリバリ嘘ついてんじゃねえよ?!ってか、ならなんでまた女体化?!」
切羽詰まった様子でグレンがセリカに詰め寄ると、セリカは何を言っているんだ?とでも言いたげな表情で嫌がらせという言葉を否定した。
表情をコロコロ変えながらグレンはセリカを問い質す。
だが、肝心のセリカはグレンの質問に対してしっかり答えず、のらりくらりと躱すだけだ。
「つーかふざけんなよ…猫耳としっぽとかいう要らんおまけまで着けやがって…」
グレンがわなわなと拳を震わせていると、ぽん、と誰かの手がグレンの肩に置かれた。
グレンの肩に手を置いた人物を確認しようと首をねじると、そこには天災教授と講師からも生徒からも恐れられるオーウェル=シュウザーの姿があった。
「おわぁあッ?! お前いつの間に?!」
「グレン先生…」
「な、なんだよ…?」
「似合っているではないか!!!! 」
「…はぁ?」
オーウェルが神妙な声色でなにかを言い出したかと思って身構えていたグレンだが、そんなグレンの様子とは裏腹にオーウェルから出た言葉はグレンを拍子抜けさせるものだった。
そんなオーウェルの言葉にグレンは素っ頓狂な声を漏らす。
「何言ってんだ? お前」
「何、とは?」
「いやだから…って、もしかして…この猫耳作ったのお前かッ?!」
「フゥハハハハハハ───ッ!!
グレン先生よ! 君なら当ててくれると思っていたぞ!!」
怒りに身を震わせるグレンを他所に、オーウェルはグレンの隣で高笑いをしていた。
二人の様子をすぐ傍で見ているセリカは、面白さのあまりに笑いを堪えようとぷるぷると震えている。
そんな三人の正面には、ぽかんと口を開けて固まっている三人娘がいた。
その内の二人は開いた口元を手で抑えながら顔を真っ赤にして震え、もう一人は頬をほんのり赤く染めてそこに立っている。
「お前ら…ガチでふざけんなよ」
一通り怒り終わったのか、グレンは言いたい事を言い終わった後に思いっきりオーウェルを壁に向かって投げ飛ばしていた。
当のオーウェルは受身を取るという選択肢を選ばず、というか選べず、そのまま壁にぶち当たって頭から血を流している。
あれ、大丈夫なの…?と三人娘が次はオーウェルを見て震える。
その内一人は眠たげな表情でオーウェルを見つめているだけだったが。
そんな投げ飛ばされたオーウェルだが、口元に笑みを浮かべてのそのそと起き上がり、ヒーラースペルを自分にかけたと思うと、そのまま【フィジカル・ブースト】でその場から飛び出して行ってしまった。
その後、その場にいた5人は一時的に解散して各々行きたい場所に足を運んだ。
中庭の隅にて。
「…ゔゔんっ」
一先ず中庭の隅に避難したグレンが一つ咳ばらいをしながらアルベルトと連絡を取る用の魔晶石を取り出し、魔力を込める。
すると、思ったよりも早くアルベルトに連絡が着いた。
「…なんだ」
訝しむようなアルベルトの低い声が、グレンの身を震わせる。
きっと、魔晶石の向こうではアルベルトが眉を顰めて魔晶石を見つめているのだろう。
長年アルベルトと任務や生活を共にしてきたグレンにはわかるのだ。
「お、意外と出るの早いな」
「要件はなんだ」
「まぁまぁ、そんなに焦りなさんな」
グレンはなるべく女体化していることを悟られないように声を低く取り繕い、いつものように茶化してみせる。
「…用がないのなら切るぞ」
アルベルトはいつも通り任務に忙殺されているのか、用がないと判断してそそくさと通信を切ろうとする。
「ちょ、ごめんって切らないでアルちゃんッ?!」
「切るぞ」
アルちゃん、というふざけた呼び方に不快感を覚えたのだろう。
やはりアルベルトは用がないと判断し、通信を切ろうとした。
「ごめん!ごめんなさい?! だから切らないで!」
「…はぁ、それで要件はなんだ」
「…あのー、そのですねえ…? 今日って近況報告夜にするじゃないですか… 」
「あぁ」
グレンは言いにくそうに言い淀みながら要件をおずおずと口にする。
「今日は…その、なしにして頂けないでしょうか…??」
「断る」
グレンが要件を言い終わると、アルベルトは不機嫌そうに断ってブツ、と通信を切ってしまった。
きっとアルベルトはグレンの言い方から、なにかしょうもないことに巻き込まれていると判断したのだろう。
「…は、はぁあああああ──ッ?!」
通信を切られてからグレンは唖然として口を開けていたが、やがて意識を取り戻すと甲高いソプラノの叫び声を中庭中に響き渡らせたのであった。
「もー!!アルベルトのバカッ!!」
しっぽを不機嫌そうに振り、ぶつぶつと文句を言いながら廊下を歩くグレン。
横を通る人全員がグレンを振り返る。
が、グレンはそれには気付かない。
「はぁ…セリカとオーウェルのヤツめ…あとで絶対絞め上げるッ…!!」
グレンがぶつぶつとなにやら呟いていた内容は、 セリカとオーウェルへの死刑宣告である。
バンッ!と勢い良くグレンが扉を押し開ける。
すると、先程までわちゃわちゃと雑談に花を咲かせていた生徒達の視線が一気にグレンへ向く。
だが、生徒達は教室に入ってきたグレンを見て目を点にしてしまった。(三人娘を除く)
「おい、どうした? お前ら 」
どうして生徒達が目を点にしてグレンを見ているのか分からない、と言った表情でグレンは首を傾げる。
そんなグレンの様子に呆れたように溜息を吐き、事情を知っている三人娘が生徒達へ説明を始めた。
「こんなオマケいらねえんだけどな」
と、放課後一人教卓に肘をついてゆらりと揺れる黒いしっぽを見つめる。
「はーあ、今日の授業はあんま上手くいかなかったな」
どうして上手くいかなかったかと言うと、なぜか授業中も休み時間も生徒達がグレンを凝視しているのだ。
そのせいでロクに集中することもできず、そのまま今日の授業は自習にするということで幕を閉じた。
「ま、それはいいとして。
あー…行きたくねえなぁ…」
揺れるしっぽから視線を外すと、次は既に夕焼け色に染まった空を見つめる。
やがて席から立つと、今日の残っている仕事を終わらせるために教室から出て、職員室へと歩みを進めるのであった。
「おーっす 」
からんからん、とバーの扉についたベルが小気味良い音を立ててグレンの来店を知らせる。
グレンは来店するとすぐにいつもの奥の個室へと向かう。
「すまん、遅れたわ」
しゃっ、と緩く掛けられたカーテンの隙間から顔を出すと、そこにはもう既にアルベルトがいた。
時間に厳しいアルベルトのことだ。
きっと十分前には着いていたのだろう。
「遅いぞ、グレン」
アルベルトは不機嫌そうに眉間に皺を寄せてこちらを振り向く。
視界にグレンを収めると、いつもと違うグレンの姿に一瞬目を見開き、先程よりも眉間に皺を寄せてグレンを見つめた。
「恥ずいからあんま見んなよ…」
そう言いながら、恥ずかしそうに頬を赤らめ、身を捩る。
気まずそうに目線をアルベルトから逸らし、アルベルトの隣の席へ着くと、マスターにいつものブランデーを注文した。
マスターもグレンだと分かっているようで、承りました、と言うように頷くと少ししていつものブランデーが手渡される。
「なー、アルベルトさんよぉ?」
「なんだ」
「なんで今日中止にしてくれなかったんだ?」
「お前がああやって茶化した後に中止と口にするということは、何か俺に知られたくないことがあって中止にしたい、という時だからな」
「うぐっ…」
お前の事は知り尽くしている、とでも言うようにアルベルトがグレンへ視線を向けると、分かりやすく目を泳がせた。
「お前、その格好はどうした」
「あ? この猫耳としっぽの事か?」
「あぁ」
「セリカとオーウェルの仕業だ」
「アルフォネア女史と…オーウェル=シュウザーか?」
「そうだよ」
グレンはもう女体化、そして猫耳としっぽに慣れてしまったのか、それらを気にする様子もなくブランデーの入っているグラスに口をつける。
すると、アルベルトが宮廷魔導士団の礼装の内ポケットに手を突っ込んだかと思うと、そこから誰に貰ったのか、赤い鈴のついた首輪が姿を現した。
「…あのー、アルベルトさん?」
「なんだ?」
「その首輪はなんですかね…?」
グレンが椅子から素早く立ち上がり、アルベルトの手から逃れようと後退る。
だが、後退っているとすぐに壁についてしまった。
それを好機と見なしたのか、アルベルトは目にも見えない速度でグレンを捕まえると、素早くグレンの首に赤い首輪を付ける。
「んなッ…おい、外せッ?!」
「断る」
「いやなんでだよ?!」
「似合っているぞ」
「俺の話を聞けーッ!!」
グレンは首輪を外してもらおうとアルベルトに吠えかかるが、アルベルトは何処吹く風だ。
しまいには似合っていると口元を微かに歪め、愛おしそうに目を細めて見られれば、あまり反抗する気も起きなくなってしまう。
反抗する気が無くなったグレンは、恥ずかしそうに俯くだけだ。
「ふにゃあッ?!
ア、アルッ…てめえっ?!」
「存外、可愛らしい反応をするのだな」
不意に耳を撫でられ、びくんと身体を振るわせれば、揶揄うように口元を歪めてアルベルトがこちらを見つめる。
その目には、いたずら好きな子供のような光が宿っていた。
「さ、わんなっ…!」
顔を真っ赤にして自身の耳やしっぽを撫でる手を払い退けようとすれば、両手を捕まれ、頭の上で壁に縫い付けられてしまう。
そうされれば身動きも取れないため、ただアルベルトを睨みつけることしか出来ない。
真っ赤な顔でアルベルトを睨みつければ、ぎゅっとしっぽを捕まれ、自分からあられもない声が漏れる。
次にその掴んだしっぽの先にアルベルトがわざとらしくちゅっと音を立てて口付ける。
しっぽの先から伝う快感にまたびくりと背筋が震え、いやいやと嫌がるように首を振ってもそれは唇で口を塞がれることで止められてしまう。
マスターに助けを求めようと視線を送るが、マスターは我関せずといった様子でグラスを磨いているだけだ。
近況報告はまた後日、ということで 今日はそのままアルベルトの家にお持ち帰りされ、自分が戻るまで、そして戻ってからもアルベルトに弄ばれる日となったのであった。
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