テラーノベル
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💚side
幾つもの画面が並ぶ机の上にあるのは、”騎士”のカード。
ふっかの言う通り、俺はルールを破ったわけではなく、最初からちゃんとゲームには参加していた。
それでも彼らは、8人の中で誰かが生き残れるものだと過信し、俺の存在は忘れかけていた。
まあ、ふっかだけはそれに気づいて利用していたようだけど。
さて、ふっかはゲームが終わって自由の身になったにも関わらず、俺を切りつけてきたのは何故だろう。
どうせ死ぬなら自分の手で殺したかったのか、復讐のつもりなのか。
ふっかの意図はわからない。そして、俺に協力して意地を見せた癖に、あっさりと白状して脱落していった舘さんも。
俺の気持ちが皆には理解できないように、彼らの思いは彼らにしか分からない。
ゲーミングチェアの背もたれに寄りかかり、溜め息を吐く。
みんなに訊かれた、「どうしてこんなことするのか」という答えは、俺にとって一つしかない。
単純に、疲れてしまったのだ。誰もが自分を偽る芸能界の中で、自分のキャラクターを演じることに。
ある日帰宅した家の中で思った。
「俺は何をしているのだろう」と。
それから何も出来なくなった。声の限りに家の中で暴れた。
隣人からは苦情が殺到し、仕事も休むことが増えた。
ただ、自己嫌悪を繰り返す日々が延々と続いた。
だからもう全部、捨ててしまおうと思ったのだ。
今まで稼いだ金はこの施設を作ることに使い、住んでいた部屋ももさっさと引き払った。
それでも、メンバーは、仲間たちだけは、こんな自分を心配して優しく声をかけてくれた。
9人で居れば、変わらず温かかった。
もう若くない俺には、Snow Manという仲間しかいなくなったのだ。
でも、それももう自らの手で全部壊してしまった。
元より彼らのいない世界で生き延びるつもりはない。
白い紙袋の中から、大量の錠剤を取り出す。今ここにあるのは某製薬会社の睡眠薬。
一般的にはこの錠剤を43g服用すると、死に至る可能性が高まると言われているが、今ここにあるのは88gもの睡眠薬だ。
あらゆるサイトや薬局で購入した。
誰かが生き残っても、そうではなくても、最初から死ぬつもりだった。
💜や、めろ…
ふっかが苦しそうに手を伸ばしてくる。
傷が致命傷にはならなくて死にきれないんだな。可哀想に。
もうすぐ助けが来るだろうし、彼は俺たちのいない世界で生き続けるんだ。
俺は、取り出した錠剤を全て口に含んだ。
後に猛烈な睡魔に襲われ、意識は朦朧としていく。
徐々に体の感覚も消えていき、俺は気を失ってPCの乗った机に倒れ込んだ。
ここは、何処だろう。
辺りは真っ暗で、何も見えない。
人間が死んで行き着く先があるとしたら、ここのことを言うのだろう。
もし地獄というものがあるなら、俺はそこに行かなきゃ。
自分の都合だけで仲間たちの命を奪った。
最悪。最低。何とも利己的で、凶悪な犯罪者。
俺は人を喰らう狼のような、血も涙もない化物になったのだ。
だんだん目が暗闇に慣れてきたのか、自分の手足が見えるようになった。
💚…?
腕や脚は銀色の毛で覆われ、伸びた鼻先は人間のものではなくなっていた。
ああ、そうか。俺が本当の「人狼」だったのか。
それはそうと、地獄に行きたい。
ただただ冷たい地面のような黒い道を、四つの脚で這うように歩く。
死んだ後もこんなに感覚が残っているとは思わなかった。もう、それらも全て放棄して楽になりたい。
「待って、だめ。行かないで」
聞き慣れた声が響いた。
俺が足を止めると、その声の主に抱き締められた。
ここが変な地形をしているからか、声が有耶無耶になって耳に届く。
瞬きを繰り返す。にわかには信じられなかった。
そこには、ふっかの姿があった。
その姿はほんの少し発光して、輪郭がゆらゆらと揺れている。
💜阿部ちゃんなんでしょ…?よかった。合ってるよね。
ふっかの傷口はそこまで深くないはず。
彼の体格なら、数十分では死にきれない程度の浅さだ。
どうして、と訊こうとしたが、狼の姿だからか口から出てくるのは唸り声だけ。
💚グルルルル…!
💜俺さ。みんなが居ないところでなんて、生きていけるわけないんだよ。
まさか。と俺が思うと、彼はふっと笑った。
💜刺したんだ。自分で、何回も。
自分でも、自然と大きく目が見開かれているのがわかる。
ふっかもそれを見て取れたのか、悲哀の色が滲む笑みは崩さずに続けた。
💜予想外だった?でも、俺じゃなくても多分みんなこうしたと思う。何て言うのかな…みんなを失った後の喪失感っていうか。絶対、そんなの俺耐えられない。そう思ったんだ。
💚ガルルル…
💜もう怒ってないよ。ごめん。
何でお前が謝るんだ。何の罪もないのに。
💜俺、阿部ちゃんの気持ちに全然気づけなかった。いや、気づこうとしなかったのかな。自分は忙しいからって。理由つけて。
💚…
ふっかの腕に、一層強く力が籠るのを感じた。
💜俺の知ってる優しい阿部ちゃんは、仲間を嘲るようなことをする人じゃない。でもそこまで追い詰められてたんだよね。謝って許される訳じゃないけど、ごめん。
「俺もごめん。」
次は、翔太が現れた。俺の毛だらけの頬を、傷でも労るかのように優しく撫でる。
💙俺、気づいてたんだ。体調が悪そうで、あんまり寝られてなさそうだったことも。本当は、気づいてたんだ。でも俺は涼太みたいに声かけられる程、優しくなかった…
何だそれ。
これから地獄へ堕ちる俺に、謝罪なんてしても何の意味もない。どういう意図があるんだ?
二人の手を振り切り、駆け出そうとする。
だが、いつの間にか目の前に居た誰かに引き留められた。
そいつは泣いているのか、上から雨が降ってくる。
🤍阿部ちゃん。一人でそっちに行こうとしないで。置いてかないでよ…
透明な雨の出所はラウールだった。
そうだった。この子はどこまでも優しくて素直な子なんだ。
もう離さない、と言わんばかりに強く抱き締められる。
「阿部ちゃん。」
また違う声に呼ばれる。いずれもよく聞き慣れた声だ。
🖤俺たち、ここで待ってたんだよ。だから行かないで。自分で全部、背負いこもうとしないで。
そっと背中に手が添えられる。
照に佐久間、康二と舘さん。いつの間にかみんな集まっていた。そうだ、俺たちはいつもこうだった。
そして、めめに言われてようやく腑に落ちた。
俺はずっと死にたかったんだ。
小さい頃から引っ込み思案で、内向的で、希死念慮を抱いていた。
でも死ねなかった。何度も自殺を試みた。どんな手も尽くした。
それでも死にきれなかった。
ああ、俺は、独りになりたくなかったんだ。そうして皆を巻き込んでしまった。
銀色の毛に埋もれた目から、涙が溢れだす。
空気を入れ過ぎた風船からガスが抜ける時のように、姿形が人間のものへ戻っていく。
💚ごめんっ…みんな、ごめんなさい、ごめんなさい…
🩷良かった…やっと阿部ちゃんに戻った。
心の底から安心した表情で佐久間が言う。
🧡俺たち、死んでからもずーっと一緒や。
康二は濡れた俺の頬に、手を添えて微笑みかける。
❤️もう絶対独りになんかさせないから。
子供をあやすように俺の頭を撫でる舘さん。
💛大丈夫。9人居れば何も怖くない。もう大丈夫だよ。思いっきり泣いてもいいんだよ。
かつて無い程の優しい笑顔を見せる照。
最初は俺が自らに見せる走馬灯や幻想だと思っていたが、体を包みこむ温かさは決して幻ではない。
良かった。俺は、ちゃんと生きてたんだ。人間として、みんなで。
💚うわぁぁぁぁぁ…
懺悔と安心を纏った俺の叫びが、辺りに木霊する。
もう怖くない。
この先にどんな罰が待ち受けていようと、独りじゃないなら。
9人で抱き締めあうようにして、俺たちは地獄の業火に呑まれていった。
End
お疲れ様でした!ここまで完読してくれた皆様には感謝をしてもしきれません!!
本当にありがとうございます!💖
さて、この人狼ゲームの役職です↓
佐久間大介・村人
宮舘涼太・村人
向井康二・パン屋さん
目黒蓮・霊媒師
岩本照・人狼
渡辺翔太・村人
ラウール・占い師
深澤辰哉・人狼
阿部亮平・騎士、ゲームマスター
みなさんの考察は当たっていましたか?
「人狼だーれだ?」はどうだったでしょうか?
コメントで感想等お待ちしております!!遠慮せずにばんばん送っちゃってください!
必ず返信しますので💪
最終話での最善の着地点がわからなくなってしまい、かなり遅筆だったかなと思います。
こんな作者を許してやってくださいm(__)m
これからもマイペースに頑張ろうと思ってます!
ゆきりんごの次回作にもご期待ください!!
コメント
4件
え、、、、すっっっっっっっっごいね、、、!!!!!!なんか、、、めっちゃ感動して、、素敵だなぁ、、と思ってね、、いつもお話本当に楽しみにしてました!!ありがとうございます!!!
ほんっっとに最終回感動でした🥹 もうほんとに9人の絆が伝わってきて!! もうほんとに主さんすごいです✨