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あの日から一カ月が過ぎ、もう11月も半ば。蓮たち三人はあの日の夜起こった事なんて何事もなかったかのような平穏無事な日常に身を置いていた。
流石に朝起きた瞬間はナギも雪之丞も何故二人で寝ていたのかわからず混乱していたようだったが、ちょっと面白かったので暫く放置していると、雪之丞は恥ずかしそうに俯き、ナギは開き直って蓮にベッタリとくっついてきた。
正直、一度関係を持ったら雪之丞とはギクシャクするのではないかと思っていたのだが、意外にもあっさりとしていて稽古場で会っても普通に話しかけて来るので逆にこちらの方が戸惑ってしまう程だ。
あの日以降、三人の関係は表面上は今まで通りに戻った。ただ、内心ではどう思っているかはわからないが。
結局雪之丞とは一回ヤッたきりだが、この位の距離感が一番良いのかもしれない。
変に意識されるよりも余計なこと考えずに済むし、この方がお互いにとって都合が良い。
寧ろこれでよかったのだと自分に言い聞かせ、日々稽古に勤しんでいた。
「ゆきりんの様子はどう?」
「ん? 普段とあまり変わらないよ。流石に2,3日は動き辛そうだったけど……」
「ハハッ、そっか」
悪い事しちゃったかな? なんて言いながら、ソファに凭れる自分の肩にナギがコツンと頭を乗せて来る。
その頭をポンと叩いてやると、嬉しそうに頬を綻ばせるのでまるで猫のようだと思わず笑みがこぼれた。
「ねぇ、早く観ようよ」
「わかってるってば、ちょっと待って」
急かされてテレビの電源を入れる。録画画面から獅子レンジャーを選択し、ボタンを押すと軽快な音楽と共にオープニングが映し出される。
今日は第一話の放送日だった。流石にリアルタイム視聴をすることは適わなかったが、以前から一緒に見ようとナギと約束をしていたのだ。
画面に映るナギを見ていて思う。この子は演技をすると別人のようになる。普段は子供っぽいのに、いざカメラの前に立つと途端に大人びて見えるのだから不思議だ。
それでいて演技臭くない。脇役や、モブとして何度か出演したことがあると言っていたが、脇役にするには勿体ないほどの演技力。人の目を引く魅力あふれる青年を主役に据えた猿渡監督の目に狂いはなかった。
そう思える程の実力を持っている。
本当に初主演だろうか? と思うほどに堂々としていて、自然体で演じることが出来ているところが素晴らしい。
「あ……」
ふと、ナギが声を上げた。視線をテレビに向ければそこには変身して敵と戦う自分の姿が映し出されている。
声は後から合成したもので、動いているのは自分。何度見てもくすぐったいような、自分が自分ではないような不思議な気分になる。
(というか、兄さんの言ったとうりだな。自分とナギの動きは全然別人だとわかるレベルで違う……)
これは兄に注意されるのも無理はない。そう言えばあの日以降、何故か凛は現場に姿を現していない。
忙しいのだろうか? 自分の事をあまり語ろうとしないから、実の兄の事だがわからない部分が多い。
何度か連絡を入れようかとも思ったが、厳しい事を言われた後でなんと入れていいかわからずに結局、そのままの状態になってしまっている。
「やっぱお兄さんの演技はカッコイイね」
「そ、そう、かな?」
「うん……。カッコいいよ、凄く。しなやかだし、動きにキレがあるし……。また画面で動いてるのが見れるなんて嘘みたいだ」
「……」
うっとりと呟かれて、蓮は思わず息を飲む。その表情があまりにも艶めかしく見えたからだ。
「勿論、中の人もカッコいいんだけど」
するりと腕が伸びて来て頬に触れた。強制的に視線を向けられ、琥珀色の瞳に吸い込まれそうになる。
そのままゆっくりと顔を近づけて、唇が触れ合う直前でピタリと止まる。そして、吐息がかかる距離でナギが囁いた。
「ね? シよ?」
「たく、続きは? 見ないの?」
「ん……画面のお兄さん見てたらムラムラしてきちゃった」
全く、今の絵面の何処にそんな要素があったというのだろうか?
呆れつつも、ナギの腰を抱き寄せれば素直に身を預けてくるのが愛らしい。
「ほんっと淫乱……」
「……嫌いじゃないくせに」
フッと口角を上げて妖艶に微笑むと、再び唇が重なる。舌を絡め合いながら、ソファにナギを押し倒すと、期待に満ちた眼差しでこちらを見上げて来た。
それを合図に蓮はナギの首筋に顔を埋めた――。