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「返答はまだかい、担当さんよー」
『そんなあっさり行く訳無いじゃないですか……急かさないで下さいよ、9K。此方としても、候補となるプレイヤーがかなりの数ピックアップされている状態です。しかしやはり11番目の選別となれば、こっちだって慎重になりますよ』
カフェに立ち寄り、眼下を見下ろしつつウチの担当と電話していたのだが。
相手からは少々渋い反応を貰う結果に。
今回俺が運営に提案した内容。
賞金首の11番目の候補、elevenに……ウチの弟を推したのだ。
当然だけど、そうあっさり通る話じゃない。
しかしながら2番と3番、そして1番と10番の様に関係者をまとめて雇用する形は、この会社では珍しくはない。
だからこそ、今度の賞金首にウチの弟はどうだい? と営業を掛けてみたのだが。
やはり賞金首という存在が、ここまでゲーム内で話題になってしまっている以上簡単ではない。
『とはいえ、悪い知らせばかりではありません。我々の方でピックアップしたプレイヤーリストの中に、弟さんの名前……普通にありましたよ。“96sour”、しかも結構注目度の高いリストに』
「お、いいね。それで、そっちの判断としては?」
『やはりプレイスキルとしては、他のプレイヤーでも高レベルの人が多いですからね。それらと戦うとなると、まだ分からないとしか。しかし今後のイベントの成績次第で、これ等の注目度は大きく変化する可能性があります』
「イベント、ねぇ……」
今のところ、予定などは共有してもらっているものの。
俺の方には決定事項の報告、というか賞金首を動かす話は届いていない。
そろそろだって話は聞いてるんだけどねぇ……そっちも早い所情報が欲しい所だが。
また他のNPCイベントを挟むのか、それとも直近になってまた無茶を言い出すのかは分からないが。
これ等によって、弟の評価は変わって来るって訳だ。
『厳しい事を言う様ですが……というか、これは完全部外秘にして欲しいんですけど』
「なんですか、もったいぶらずに教えて下さいよ」
何やら相手が口籠った事に対して、“監視”の目を緩めて思わず通話に集中してしまうと。
ウチの担当は、少々ため息を零しつつ。
『こちらが懸念している材料の一つをお教えします。それは、賞金首は会社にとっての“商材”である事。これは腕がどうとかの前に、印象の話です』
「ですね、それで?」
『96sourというプレイヤーを引っ張り上げる場合……貴方と被るんですよ、同じスナイパーとして。しかも9Kは、これまでも圧倒的とも言える成績を収めている。つまり、その劣化版を実装させる必要があるのか、という声もあります。実際、ガンサバイブオンラインでは後衛よりアタッカーの方が多いですから』
かぁぁぁぁ……マジか。
まさかの俺が、アイツにとっての壁になっちまったか。
得意としている武器の種類、というか弾丸のサイズが根本から違うじゃねぇか! とか言いたくなるけど。
スナイプに興味無い奴からしたら、確かに一緒に見えるだろう。
この辺は、本当に仰る通りですわ。
しかも俺がアイツに教育を施している以上、こればかりは抜け出せないジレンマが発生する。
だとすると何か? 今度のイベントは特に。
弟は“新しい一面”を見せた上で、高成績を収めないと運営の御眼鏡に叶わないって事か?
そうなってくると……どうすっかな。
アイツが得意としているのは、超長距離戦。
これまでの成果で考えれば、結構良い線を行ってると思ったのだが。
まさかの落とし穴が発生した気分だ。
だって賞金首をキルしたパーティな上に、何度も追い詰めた過去もあるんだぜ?
爆弾魔のoctopus8には、これまで見せなかった一手を引き出す程に接近し。
街中を爆走して捉えられなかった555は、装甲ごとぶち抜いてキル。
パーティメンバーの活躍あってこそだったとしても、467の賞金首をまとめて始末し。
その後単独で6keyを最後まで追い詰めて、そして生き残った。
更にはこの前のNPCイベントで、6・8に続きtimelimit:10のNPCにさえ勝利を収めたのだ。
これだけの功績を収めているスナイパー、なかなか居ないぜ?
なんて、思ったままを口にしてみたのだが。
『それは重々承知しています。個人に目を向ける形で注目してみると、物凄い成績ですからね。しかし一番の問題はやはり9K、貴方です。もしも弟さんの方が強いという演出が叶ったとしても、それでは9Kの評価が落ちる。貴方の方が強いと知らしめれば、劣化版では注目度が薄くなる。しかも影響されるであろうプレイヤーの全体数が少ないかもしれない。つまり、これまでに無い戦闘スタイルや、注目を集める様なプレイヤーでないといけない訳です』
「俺等の時の選抜より、絶対ハードル高くなってるじゃんよ……」
『高くしてしまったのは、今居る10人の賞金首ですから。私のせいじゃありませんよ? ハッキリ言うと、今居る賞金首の皆さんが“強すぎる”んですよ。一番弱いなんて言われるsecondでさえ、安定した成績を残している程ですから。一般人からすると、恐ろしく高成績を叩き出し続ける超人達です』
だぁ、クソ。
確かにね、個人で雇用されて給料を貰っている以上。
賞金首をポコポコ増やす訳にもいかないし。
簡易登録制にして、安く使おうとしても質が落ちるのは目に見えている。
これまでの様に絶対的な“特別感”を出すというのなら、確かにそういう営業面の意味を重視するのも分かるが……。
「とりあえず、了解です。こっちでも、弟の特徴をもうちょっと考えてアピール出来る様にしておきます」
『私としては、9Kの発案に大賛成なんですけどね。出来れば、周りすら納得させる様な“何か”を用意して頂けると……助かります』
という事で、担当さんとの相談は終了。
けど参ったね、スナイプ以外の部分での特徴か。
俺が教えられるの、そこだけなんだけど。
むしろもう全部ネタばらしして、6keyから超近接戦を習わせるか?
しかしそうなると、攻撃範囲が中途半端になる可能性が高いんだよな。
どうすっかなコレ……なんて悩みつつ、ズズズッと残った珈琲を啜っていると。
「……ん?」
随分と長い事、デートスポットとは思えない場所……まぁ射撃体験が出来る様な店から出て来たお二人さん。
こっちに関しては、まぁあの二人だしなぁって気はするのだが。
その後ろから、やけに派手な格好をした二人組がニヤついた表情を浮かべながら近づいて行くではないか。
若い子同士だからね、“そういうトラブル”ってのも想定して無かった訳じゃないが。
「いつの時代も居るもんだねぇ……他人のデートを邪魔しようとする馬鹿は。やってて虚しくならないのかよ、ったく……」
チッと舌打ちを零してから、飲み終わった珈琲のプラカップをゴミ箱に放り込み。
急いでバイクへと戻ってメットを被った。
ちょいと今回ばかりは、お兄ちゃんも手を貸してやりますかねぇ。
なんて、思ってエンジンを掛けた瞬間。
「……他にも居たし」
あまりにもタイミングが良すぎるだろってところで、いつか見たド派手なカスタムカーが他所の駐車場から出て来たでは無いか。
溜息を零してからスマホを取り出し、件の人物に通話を飛ばして、メット内のマイクをオン。
『はいはーい、どうしましたー? 今運転中なんで、ハンズフリーで申し訳ないっす。聞こえますー? 9K』
「問題無いよ、555。今の状況、把握してるか? こっちはお前も確認済みだ」
『だははっ、やっぱ9Kも見てるんですね。ちょいと“お節介”でもって思ったんすけど』
「それじゃ、協力頼む。ちょっとやらかしそうな相手も、ガキだ。“大人”の俺等が出て行けば何とかなる」
という事で、喫茶店の駐車場からバイクで飛び出し。
ド派手な車の横に車体を並べてみれば。
一見チャラそうな見た目の、緩い笑みを浮かべた奴が車の窓を開けた。
「あくまでも、“平和的に”解決しますからね? 向こうのお二人さんにも迷惑掛かっちゃいますし、こっちもこっちで迷惑なんで」
「あぁ、頼――おい555、お前も女連れかよ……って、待て待て待て。知った顔だな」
「あ、あのっ! ヘルメットでよく分からないですけど……9K、ですか!? しゃ、謝恩会以来です。お久し振り……です」
おかしいな、助手席に乗っている女がoctopus8にしか見えないのだが。
コイツ等、いつの間に仲良くなってたのか。
まぁ、そっちは別に俺の知った事じゃないが。
「良いのか? お前等もデート中だろ?」
「なので、サクッと終わらせましょっか。エイトにはシックス達のお相手してもらって、現場は俺等で何とかしましょ~」
「……へいへい。すまんな、邪魔した」
「いえいえ~、今回俺等も褒められる行動してないっすからねぇ。これくらいは、ちゃんと“ガード”してあげないと」
そんな会話を終えてから、此方はメットのシールドをガッと下げた。
さてさて、青春ドラマ繰り広げている幸せいっぱいの若人の邪魔をする馬鹿の相手は。
兄やら部外者の大人達が、平和的に“お話合い”で解決してあげますかね。
コメント
1件
みぅです🤍 9Kさん、弟くんの推薦でまさか自分が壁になるとは思わないですよね…運営の「商材」視点、すごくリアルでゾッとしました。でも最後の555さんとの連携プレイ、青春ドラマの邪魔をする馬鹿を大人が静かに片付ける感じが痺れます。お兄ちゃん感が最高です🌙
柘榴とAI

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#没入感フィクション
柘榴とAI

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柘榴とAI

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