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6×20 ふたりのはじまりのお話
「やま 飲みに行かない?」試合終わり 突然の誘いに一瞬戸惑う
「珍しいじゃん」
大体 試合終わりは直行直帰なのに…
ここ最近 智の様子が気になっていた
ふとした瞬間に見せる やるせない表情 上を向いて涙を堪えているような…
「ダメ?」
「いや いいよ 他に誘う?」
「いや…やまだけがいい」
すがるような表情に 違和感しかない
「わかった 準備できたら声かけろよ」
「うん わかった」
ほっとしたような 笑顔になる
いつも通りのような 全く違うような…
智の様子に違和感を感じつつ いつもの店につく
「奥でいい?」
「ああ」
奥に 他の席から死角になる席があり プライベートが守られるから 時々使っていた
とりあえずの注文をすませて あらためて智と顔を合わせる
「相談でも あんの?」
「うん…まあ…」
歯切れの悪い返事
「わかった!また小川と痴話喧嘩か?仲良いな お前ら」
「う……ん」
あれ?
小川の名前を出して こんなに暗い顔は初めてみた
「なんだよ そんなに深刻な顔して…」
なんとなく…いや…
「何かあったんだろ?言ってみろよ」
「………」
黙り込んだタイミングで 飲み物や注文したものが届いた
「とりあえず 飲も お疲れ!」
「うん…お疲れでした」
軽くグラスを合わせて 今日の試合の話やチームの話で盛り上る
そこには いつも通りの笑顔の智がいる チームの中で何かあるわけじゃなさそうだ
ということは やっぱり…
「次は 小川と対戦だな?」
「うん…だね」
やっぱり 苦笑い…
「話しにくいんなら 無理には聞かないけど 小川と何かあったんだろ?」
「……うん…」
「話して楽になるんなら 聞くから 遠慮するなよ」
2人の仲が 特別な関係なことを俺は知っている
たぶん それで相談してきたのだろう
「ありがとう…」
そういうと 深呼吸して思いきったように 話だした
「小川とは…別れたんだ」
「え?」
唐突な言葉に耳を疑う
なんだよ それ…
「もう 1ヶ月たつかな
あいつさ…ここ最近 会えなくなってて…連絡も途切れてて
体調とか心配だったから オフに会いに行ったんだよ
そしたら いきなり別れ話でさ 理由を聞いても 別れた方がいい としか言わなくて…」
俯いて 溢れる感情をこらえている
「いきなりって なんだよそれ…」
「まあ 様子がおかしくなかったわけじゃないんだ
朝帰りしたり 知らない香水の匂いさせたり
あの時から 別れたかったのかなって…
俺 鈍感だからさ 生活乱れてるからちゃんとしろよ としか言わなくて…
別れたがってたこと 全然気がつかなかった ホント ダメだよな…」
「智らしいじゃん
疑わなかったんだろ?小川のこと」
「………うん…」
小川とのことを 1つ1つ思い出すように 一点を見つめている
「俺が小川の側にいること 良く思われてなかった時期 あったじゃん?
最初は 誰かに言われて従うことじゃないって思ってたし あいつも支えてくれたんだ
だけど 繰り返し言われると 何が正しいのかわからなくなってきて…小川を巻き込みたくなくて…
代表が終わって レギュラーシーズンが始まれば 距離を置くには丁度いいと思って 俺から連絡したり会うのを 減らしてたんだ
そしたら そんな風になっていって…
だから 別れを切り出されて 正直 複雑だった
別れたくない…でも別れた方が小川を解放してやれるって…」
「で…智の答えは 別れることを選んだんだ」
「うん……でも 女々しくてさ
もしかしたら 小川から連絡くるんじゃないか…って 待ってる自分がいるんだよね 智さんって 何もなかったみたいに…呼んでくれるんじゃないかって」
声が震えて 目は赤く涙をこらえている
「頑張ったんだな…智」
たくさん傷ついた自分をおいて 小川を守りたかった
なんて…どんだけ優しいんだよ お前は
「小川とは バレーはやりたいんだろ?」
「え?……う……ん でも…」
「小川って バレーに関しては 真面目だから 恋人として関係は終わっても 智のことを尊敬してるし 妥協はしないと思う」
「やま…?」
「智から お互い世界一のプレーヤーとして 一緒にバレーボールやろうって 言ってみたらどうだ?高めあうライバルとして」
「……いいのかな?」
「いいよ 智はそこがひっかかってたんだろ?
元の形は 尊敬しあうプレーヤーなんだから そこに戻るだけだ
もちろん 智の気持ちの整理がついてからでいいからさ」
「………うん……ぐすっ」
こらえた涙が ぱたぱたとテーブルに落ちる
「俺…小川とバレー…出来なくなるのが……1番辛くて…」
「うん……つらかったな…」
声を殺して 小さく震えている
「ほら…」
智の隣の席に座り ハンカチを差し出し 背中をさする
「ありがと……やま…」
「落ち着くまで こうやっててやるから」
死角にある席とはいえ 泣いている姿を見られないわけじゃない 智の姿を隠すように体勢をかえる
そして智は しばらく静かに涙を落とした
「やまってさ……優しすぎ…」
「な?こんないい男いないよな?」
「自分で言うんだ」
くすっと 小さく笑う
「俺だったら 智を泣かせないけどな…」
「……やま?」
「さあ 泣き止んで飲もうぜ!今日の勝利に乾杯するぞ!」
「うん……そうだね 頑張って勝ったんだから 乾杯しないとな!」
振り切ったように まだ涙を含んだ表情を笑顔にして 顔をあげる
「ありがとう…やま
大丈夫だよ 試合はちゃんと切り替えるから!」
「うん…」
涙が伝う頬をぬぐって 両手で頬をはさむ
「智は 頑張り屋だから 自分でかかえすぎなんだよ
もっと 俺に頼ってくれていいんだからな?」
「うん…わかった…」
智の潤む目にまっすぐ見つめられ 内心がざわつく
智の唇に触れたい
抱き締めて 自分のモノにしたい
隠し続けている 智への思い
そして 永遠に伝えることのない思い
「やま?」
不思議そうにこちらを見て 少し頬をあからめている
「智の目がキレイだから
見とれてた ごめん」
頬の手を そっと離す
まずかったかな…
「はは 変なの 何言ってんの?」
「俺 智の目…好きだよ」
「な! 何…恥ずかしいこといって…」
真っ赤な顔を隠すように 目をごしごしこする
「あんまりこすると 腫れるぞ 」
「やまが変なこと 言うから!」
「かわいいなぁ〜」
「やめろって!可愛くないし!」
むきになって… ホントにかわいい
「よし!元気でたか?」
「ん……うん」
「俺が支えてやるから 智は 前向いて 笑顔でいろ! 」
それが 俺を魅了する 愛おしい お前だから…
どうか
俺の思いが届かなくてもいいから お前の笑顔を守らせてくれ
続きます🙇
ata
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コメント
3件

どわーーー好きです🤦🏻♀️💞

うわあ……第1話からすごく重くて切ない話だったね💔 やまの「智の目が好きだよ」って、抱きしめたい気持ちをぐっとこらえてる感じが伝わってきて、胸がギュッてなったよ。 智の涙も、ちゃんと守ってあげたくなるような優しさと弱さがあって、読んでるこっちまで泣きそうになった… 別れと始まり、ってタイトルがすごく刺さる。次が気になるよ🤧