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2月1日、露日・琥珀さん
1日遅れですみません。独日はどうしてもうまくいかなかったため後日載せておきます……
かっこいいロシアくんはお留守です。
「今日中に手を繋げるようになりたいと思う。」
きらきらと音がしそうなほど整った顔がそう宣言する。
日本はパチリと瞬きをすると隣を歩くロシアを見上げた。
「……はい?」
「…嫌か?」
しゅんとない尻尾を垂らしながら答えたロシアに慌てて否定の旨を返しながら、日本は頭を埋め尽くす疑問符を処理していく。
こういうのって宣言してからやるもんだっけ?というか、言ったらすぐ繋ぐって流れじゃ。
「えっと…頑張ってください。」
「任せろ。」
冗談の余地を残さない真剣さで頷くとロシアは日本に半歩ほど身を寄せた。
真横から切り付けるように吹いてくる風が遮られて日本はマフラーから少し顔を出す。
黒々とした瞳は不思議そうな色に染まり、どこか興味深そうに隣を歩く顔を見上げている。
歩調は自然に揃えられているのに、距離だけが縮まらない。
長い腕は少し動かすだけで簡単にスーツの先の手に触れてしまえるはずなのに、まるで見えない境界線でも引かれているようだった。
少し変わった人だとは思っていた。若いだろうに変化が苦手そうだとも。
ただ、ここまで慎重になられるともはや誰かに語ってしまいたくなる喜劇だ。
日本はそこまでで思考を止めると握りしめていたカイロをポケットに突っ込み、空いた左手をちょこんとロシアに触れさせた。
割れたガラスに触れるようにそっと指先に少し低い温度が絡みつく。
「その…手があったまったので、おすそわけを……。」
骨筋を確認するような動きに耐えかねてそう声をかけると、ロシアははっととしたように日本をみつめた。次いでその口角がほんの少しやわらかく溶ける。
「そうか。」
ご機嫌そうな空気を纏い始めたロシアに手を握られ、顔に熱持たせる羞恥心を恨みつつ、これ以降は安心して触れてくれるようになるだろうと胸を撫で下ろした。
その期待が裏切られることになるとも知らずに。
***
「ハグしていいか?」
そんな言葉に違和感を感じたのはつい数週間前のこと。
そのうち勝手に触れてくるようになるだろうとタカを括っていた日本は内心で頭を抱えていた。
理由は一つ。初めて手を繋いだ時に始まり、ロシアが少しステップを上がろうとするたび日本に許可を求めてくるのだ。
あれら全てを意図的にやっていると言うなら彼は相当なテクニシャンだろうが、もたつく指先やきゅるきゅるとこちらに縋り付くような瞳がそうではないと如実に語っていて、だからこそ止めようがなくタチが悪い。
諦めて自分から触れにいけばいいということは十分過ぎるほど理解しているが、ああやって全てに確認を取られては勝手に触れることがひどく乱暴なことのように思えるのだ。
頭を抱える日本は第三者から見れば我慢比べでもないのだからと呆れてしまうようなお笑いものだが、当人は現状の打破に必死で全く気づく様子はない。
やけ酒の代わりに飲み干したエナジードリンクの缶をゴミ箱に放ると、廊下の先のロシアと目が合った。
残業中のフロアには自分以外誰もおらず、無音の空間に静かな足音だけが響く。
そっと右手に手を添えられたかと思うと自販機の隣の壁に追い詰められた。
いわゆる壁ドンの姿勢にどきどきと脈打ち出す心臓に送られた新鮮な血がかえって脳を冷静にする。
目の前に据えられたアメジストの瞳がゆらゆらと揺れる。それだけで次にくる言葉を理解して頬がカッと熱くなった。
「キス、したいんだが……。」
またそうやって。
終わりの見えない我慢比べに張り詰めていた小さな欲が、ぷちりと潰されるような音がした。
「……っ」
返事の代わりに身を寄せ、目一杯に背伸びをしてロシアの首に腕を回す。
半分ぶら下がるような体勢になってしまったが相手の体幹に甘えることにして、日本はふにっと唇を押し付けた。
乱暴で、勢い任せで、上手でもなんでもない。
歯と歯がぶつかってがちりと音がする。
日本は反射的に腕を解いた。
呆然とした表情で口元を押さえるロシアが目に映り、自身の身体が茹だって湯気になって消えてしまいそうな錯覚に陥りながら日本は息を荒げ、顔を真っ赤にしたまま叫んだ。
「何ですかその顔!ぼ、僕だって初めてなんですからね!」
声が少し裏返った声も厭わず続ける。
「いちいち聞かないでくださいよ!恥ずかしいでしょう!?」
きぃんと鼓膜に残響を残すように絶叫した日本に、ロシアはただひたすらに呆気に取られている。
自分だけが余裕がないのだと思っていた。
我慢しているのも、自分だけだと。
瞬きをしても首元まで肌を赤く染め上げた日本が泣きそうな顔でこちらを睨みつけていて、目の前の光景が自分が作り出した幻覚ではないのだと理解した。
「……すまん。」
言葉を探すように息を吸い、嫌われたくなくて、と続けると日本の怒りは急速に萎んでいった。
いつかのようにしょげかえってしまったロシアに軽く笑みをこぼすと、日本はゆっくりと広い背に腕を回した。
「じゃあ、もう聞かなくていいか?」
「もう聞いてますよそれ。」
照れ隠しのように俯いた日本の顎を掬いロシアが慎重に、しかし躊躇わずに唇を重ねる。
先ほどよりもずっと軽く、ずっと優しいキス。
静かに温もりを重ねあう2人はそうして2人だけの世界へと深く沈んでいった。
コメント
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このような素晴らしき露日をプレゼントしてくださり誠にありがとうございました。罪なレベルで可愛すぎるので私が大切に保護しますね🤗凄まじき萌を受け止めきれていないので、後ほど感想を書かせていただきます。