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13 - 第13話 石

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2022年08月22日

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「どうして!?」

悲鳴のような声が、広い部屋の中に響き渡った。

「何で、どうしてよ! こんなはずじゃなかった!」

その叫びに答える者はいない。

彼女の目の前にいるのは、この部屋の主だけ。

この城の主であり、この王国の王。そして彼女にとっての保護者だ。

しかし、彼の表情に変化はない。

まるで石像のように動かない。

彼女は歯ぎしりしながら父親を見つめた。

彼が望めば何でも手に入る。どんな宝石だろうと、金塊であろうと、権力でさえ思いのまま。

なのに彼は何も求めなかった。

欲しいものをねだれば与えてくれたのに、何一つ。

「ああもう! どうして何も言わないのよ!」

「…………」

「ねえ、何か言いなさいよ」

「…………」

彼女の問いかけに、彼は答えようとしなかった。

この世界には魔法が存在する。

その力は万能ではないが、人間の欲望を満たすには十分すぎるほどだ。

富、名声、異性に名誉。

それらを求める人間は後を絶たず、誰もが一度は夢見るであろう。

しかし、本当に叶えられる者はごくわずかしかいない。

だからこそ、人々は魔法の力を求めた。

そして今、とある洞窟の中で、一人の少女がそれを手にしていた。

「……これは」

彼女が手にしているのは、古びてボロボロになった本だった。

タイトルは掠れて見えなくなっている。

表紙は色あせており、中を開こうとしてもページがくっついていて開くことができない。

しかし、彼女はその本を大事そうに持ち、そして呟く。

「これ、私が書いた日記だわ」

どうしてこんなものがここに? 不思議に思いながら、パラリと捲ってみる。

そこには、彼女しか知らないはずの記憶が書かれていた。

それは、彼女の人生。生まれたときから、今の今まで。

ずっと。

「どういう、こと?」

思わず漏れた言葉。

けれど、答えてくれる者はいない。

この世界は、彼女とあの人だけのものだから。

あの人が死んで、もう三年。

彼女がこの世界にきて、二年半。まだ、彼女は彼の死を受け入れられない。

いつかは受け入れなければならないと分かっていても、どうしても受け入れられなかった。

彼のいない日々は、まるで味気のない食事のように思えた。

彼がいなくなってからの毎日は、モノクロームの写真のように色を失っていた。

彼と過ごした時間は、幸せだった。彼と一緒に笑いあったり、ふざけ合ったりする時間が、何より好きだった。

でも、もう、その時間はない。

だから、私に残された唯一の希望は、この世界のどこかにいるはずの、ランプの魔神。

彼は言った。「この世界には、きっとお前が望むものが待っている」

って。

私の望みは、たった一つだけ。

彼がいないこの世界で、もう一度だけでも、彼に会いたい。

それが私の最後の願いだ。

これは、私が見た夢の話だ。

私はずっと、この夢の続きを見ているんだ。

いつか目が覚めて、彼のところに行ける日を待ちながら

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