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ゆゆ氏の練習場~短編~

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ゆゆ氏の練習場~短編~

1 - 5年後、この公園に今の時間

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2025年04月18日

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yk:夢「陸上選手」

te:夢「医師」



yk:ねぇ、約束しない?


te:約束?


3月12日


例年とは変わり、冬のような寒さが襲う年となった。


高校三年生


私たちには進むべき道が決まっていた。


yk:夢を叶えて、またここに集まる!


彼女は弾けるような笑顔で言った。


te:何そのアニメとかでありそうなやつ?(笑)


yk:やってみたかった(笑)


te:なにそれ(笑)


私たちになお互い夢があった。


yk:だって〜堵恵は県外行っちゃうから滅多に会えないでしょ?


te:休みの時くらい帰ってくるし、


yk:それじゃあ、つまんないじゃん!


yk:5年後とかさ!


te:え、5年後?!


yk:自分も練習とかで時間取れないかもしれないし


yk:それなら、この日のこの時間!って決めた方がいいでしょ?(笑)


子供のようにはしゃぐ彼女をみて


少し寂しさが込み上げてくる


te:んー…まぁそっか


yk:じゃあ、5年後!この公園に今の時間!


te:わかった(笑)


別れる時、大きく手を振る彼女の姿を今でも覚えてる。





5年の月日か流れた。


私は医師の研修期間へと入っていた。


夢はほぼかなっていた。


te:(元気かな…)


私は約束を忘れていなかった。


でも、なんだかんだ言って、あれ以来一回も連絡をとっていない。


彼女のことだからに忘れているのでは無いかと不安になる


新幹線の窓をじっと見つめ、トンネルへと入った。


反射て映った自分の顔は、どこか不安に満ちた表情をしていた。


トンネルを抜けると見覚えのある景色


te:…ただいま


小さくそう呟いた。


駅に着き、迎えに来てくれていた父の車に乗り、実家へと向かう


窓を見れば、5年後と変わらないあの風景。


彼女と送った青春が蘇る


実家に着くと直ぐに家をでた。


te:柚傀とあってくる。


そう母に告げた。


今年の春も5年前と同じで、例年より寒かった。


桜はまだ咲かず、蕾だけが風に揺られる。


4月13日


5年を通して再会する。


本当に漫画のようだ


あの公園


怖々と公園を除く。


小学生数人が遊具で遊んでいるのが見えた。


その影の木下のベンチ


座ってある人影が目に入った。


興奮が止まらなかった。


小走りで人影の方に向かう


te:柚傀!…………


息を飲んだ


目に入ってきたのは


変わりきった彼女の姿


やせ細った身体は車椅子に身を委ね


隣には看護師とおもわれる人が立っていた。


yk:ぁ、堵恵


yk:約束忘れたと思ってた(笑)


彼女はどこか申し訳なさそうに苦笑いを浮かべた。


見た目からしてわかる、病気の重さ



te:いつ、…から


yk:佐々木さん、一旦席外して貰えますか?


彼女と2人になる


……


沈黙が続くなか、彼女が口を開いた


yk:堵恵がここを出て2年たとうとしてた位からかな


yk:よくお腹を下すようになって、すごい腹痛に襲われたんだ


yk:……大腸癌


一気に顔の血の気が引いたのがわかった。


te:なん…で、なんで言ってくれなかったのッ!


yk:だって、約束より早く会っちゃったら面白くないじゃん?(笑)


そう彼女は笑った


te:治るん……だよね?


yk:……今はこうやって、話せてるけど


yk:そう長くはないかな(笑)


切なそうに笑う


te:なんで…笑うの?


彼女の笑顔を見てるだけで


心が苦しかった


yk:笑ってないと、やっていけないから


yk:堵恵と会うまでは笑顔でいようって


yk:でも、これで安心して死ねるなぁ〜


彼女は笑顔でそう言った


te:そんなこと言わないでよッ!


te:だって、まだこんなに元気なのにさッ


大粒の涙が皮膚を通る


yk:あらら…ちょっと泣かないで、


yk:堵恵が泣いてるの見たくないよ


彼女は私の手を握った。


yk:また生まれ変わって、絶対に堵恵似合いに来る。


yk:だから、次の約束をしようよ


いきなり車椅子から立とうとする彼女


te:は、ちょっ何してんの!


それを支えるかのように私は彼女の腕を掴んだ。


その時、彼女は私に抱きつきこう言った


yk:私が夢を叶えられなかった分、堵恵が立派な医者になって、俺みたいに夢を持つ人たちを…救って上げて


声はかすかに震えていた。


彼女が私の服を握りしめる。


そこには表には出せない悲しさと悔しさ、苦しみがあるようだった。


te:………ごめん…


その時の体の温もりは


今でも私の体に残っている。







それから2ヶ月後





柚傀はこの世をたった。




私と会った時が一番状態が良くなかったという話も彼女の両親から聞いた。




どうせ死ぬなら最後に顔が見たいと、久しぶりに笑った顔を見たと言って、泣いていた。




心配かけたくなかったんだと思う。




だから無理に笑って体調が悪いのを誤魔化していのだろう。




車椅子からたった時も、本当に無理をしてやっていた事だって今になって感じられた。





彼女のお母さんに最後に言われた「ありがとう」が、心苦しく頭に残っている。









あれからまた数十年。


te:それでは、引き続きお薬出しておきます


te:お大事になさってください


私は消化器内科の医師として、働いている。


5年に一回、3月12日のあの時間に


約束の公園に顔を出している。


最後に話したあの時を思い出しながら。


私は彼女との約束を守るために、今は医師として多くの患者さんの命を救っている。


多くの夢を持つ患者さんを



te:軽い胃腸炎ですね、お薬出しておきます


:僕……治る?


te:大丈夫、お薬飲めば直ぐに治るよ


:土曜日ね、サッカーの大会あるんだ!



te:そっか、じゃあそれまでにしっかり寝て、お腹治さないとね



yk:今週までに治るかな…


te:なに、風邪?


yk:腹下した…なんかあたったかも……


te:あらぁ〜



昔の記憶が頭によぎる


:うん!絶対勝つんだ!


どこか彼女に似ていて


笑みがこぼれる


te:応援してる


思わず頭を撫でた



お母さんがお辞儀をし、男の子は手を振って病室を出ていった。


彼女がこの世をたって


前を向こうと頑張っていた私は


それでも前を向けず、思い何かを背負い生きてきた。


これからもその何かを背負って生きていく


それでも、彼女がどこかで私を見守ってくれているなら


少しでも前を向いて生きていこうと思える。


絶対に君が叶えられなかった分、私が頑張っていくからね。



柚傀






「5年後、この公園に今の時間」

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