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2件
今回も面白かった!! そして前回に続いて絵が上手い! トレスとか、お疲れ様です! 続き楽しみにしてます! ♡1500にしときました。
「うぐぅぅぅぅぅ!!」
早朝の海浜公園にて、転孤は叫んでいた。
「ヘイヘイヘイ〜!なんて座り心地の良い冷蔵庫だよ〜??」
転孤はオールマイトの乗った冷蔵庫を紐で引っ張っていた。
「オールマイトなんて巨人…運べる訳ねえだろ…」
すでに汗だくになり疲れ果てた顔をした転孤が砂浜に膝をついた。
「これでも痩せちゃったんだよ〜?」
「てか俺、なんで海浜公園でゴミ引っ張ってんだよ…」
不法投棄によりゴミ山だらけになった海浜公園を見渡してオールマイトに問う。
「だって君、器じゃないもん」
冷蔵庫から降りては転孤をスマホでパシャパシャ撮って嘲笑気味にオールマイトが言った。転孤は眉間に皺を寄せオールマイトを睨んだ。そんな転孤を納得させようとオールマイトが歩み寄りながら口を開く。
「体だよ体。私の”個性”ワン・フォー・オールは、いわば何人もの極まりし身体能力が1つに収束されたもの。生半可な体では受け取りきれず…四肢がもげ爆散してしまうんだ」
「四肢が……」
考えただけでもゾッとする言葉に転孤は青ざめる。
「つまり…その器を作るためにゴミ拾いか…?」
「YES!しかし、それだけじゃない。」
振り返りまた冷蔵庫の方へ向かう。
「昨日ネットで調べたところ、近頃この海浜公園は不法投棄やら海からの漂着物やらでゴミだらけになってしまい、今は観光客も訪れなくなってしまったようでね。」
転孤は大人しくオールマイトの話に耳を傾ける。
冷蔵庫をバンと叩いて、
「最近のヒーローは派手さばかりを追い求めるけどね、、本来ヒーローってのは奉仕活動。地味だなんだと言われても、そこはブレちゃあいかんのさ」
オールマイトがそう話しながらさっきまで転孤が一ミリたりとも動かせなかった大きい冷蔵庫を軽々と平らにしてしまった。
あまりの怪力に転孤は驚愕する。オールマイトに会ってから一体何度驚かされたことか…。
「この区画一帯の水平線をよみがえらせる。それが君のヒーローへの第一歩だ。」
「第……一歩……」
もう一度転孤は周りのゴミ山を見渡した。
「これを…掃除………全部!?」
「ところで君、高校はどこに行きたいんだい?」
「いや…まだ決めてないっす。」
転孤はまだ進学先を決めていなかった。あわよくばのんびり家でゲームだけして過ごしたいなんて思ってもいたくらいだ。
だがオールマイトに出会って、その考えは変わった。
“君はヒーローになれる”
オールマイトに言われた言葉を思い出す。そうだ、俺はもうヒーローになれるんだ。前までとは違うんだ……。
それなら………
「…俺、雄英行きます。」
転孤が真剣な眼差しでオールマイトに向き直る。
オールマイトはわかっていたと言わんばかりに頷いて、
「ヒーローは弱個性でも成り立つような仕事じゃない。悲しいが現実はそんなんだ。」
朝日に照らされる海を眺めて言った。
「そこでこいつ!!私考案、目指せ合格!アメリカン・ドリーム・プランだ!!」
どこからかクリップで止められた紙の束を出して、転孤に渡した。
「寝る時間もかよ……」
朝から夜まで、ご飯から勉強まで、全てを定めたスケジュールに転孤は眉間に皺を寄せた。
「ぶっちゃけね、超ハードだよこれ。着いて来れるかな?」
今更辞めるなんて言えない。転孤は拳を握って決心した。
こうして、地獄の10ヶ月は幕をあけた。
ゴミ拾いの特訓は形や大きさによって使う筋肉が全然違った。オールマイトがゴミ拾いを特訓に入れたことにも納得がいった。
学校の授業中は放課後にできなくなってしまったゲームと、受験勉強と、筋トレ。
家族にはまだ誰にも雄英を目指すと言うことを言ってなかった。だから体作りという少し無茶な理由で母にオールマイトの考えた食事メニューを作ってもらい、なるべくおかわりをするよう心がけた。
夜はついゲームで夜更かししてしまい寝落ちして学校には遅刻ギリギリの毎日。
家に帰ってからのキツイ筋トレ、ランニング、どんな天候の日でも公園に通ってゴミ拾い、夏休みは海を泳いで特訓…この生活にも少しずつ慣れてきて、夏の終わりにはオールマイトをおんぶして運べるようになった。
時は流れ雄英受験日当日の朝。オールマイトが海浜公園に着くと誰かの雄叫びが響いた。
浜辺前には一つのゴミ山、その頂上には汗を流した転孤が叫んでいた。
「うおおおあああああああああああ!!!!!!!!」
転孤は受験日ギリギリに成し遂げ、海浜公園の地平線も蘇らせたのだ。オールマイトは予期せぬ結果に目を見開いた。
力尽きた転孤がゴミ山から崩れ落ちる。そこをマッスルフォームになったオールマイトが受け止めた。
「オール…マイト……俺……できたんだよなあ…?」
オールマイトに体を委ねて、転孤が声を絞り出す。
「ああ!!本当にすごいぞ!志村少年!」
オールマイトの言葉に転孤がわずか笑みを浮かべた。
「ほら見ろよ!」
オールマイトは転孤を降ろしてスマホで一つの写真を見せた。
「これは…?」
「出会ったときの志村少年の体だよ‼︎」
その画像の転孤は触れたらすぐ折れてしまいそうなほど痩せ細った姿だった。しかし今の転孤の体は肉がつき、別人のように変わっていた。
「よく頑張ったよ、本っ当に!ようやく入り口の蜃気楼がうっすら見えてきた程度だが…確かに器は成した!」
オールマイトが興奮気味にそう述べた。
「なんか……ズルだなぁ……俺は…」
転孤が笑みを浮かべながら呟いた。オールマイトが不思議そうに首を傾げる。
「恵まれすぎてる……」
今更何を…自分の頑張りだろうに…。オールマイトは心の中でそう呟いた。
自分の髪の毛を一本強く抜き、掲げる。
「これは受け売りだが、最初から運よく授かった者と、認められ譲渡された者では、その本質が違う。
肝に命じておきな、これは、君自身が勝ち取った力だ」
コミックもびっくりの現実をその手に……その手に掴んで……
「食え」
抜いた髪の毛を転孤の口元に近づけてくる。転孤は青ざめた。
「思ってたのと違いすぎる……」
「さあ!時間ないって‼︎試験に遅れちゃうぞ!ほら!!」
「う“…ッ」