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作者の西条景哉です。この度は、「俺の正義、誰かの不幸。」及び、「僕の正義、僕の最期。」を手に取っていただき、ありがとうございます。先に申し上げますと、このあとがきには、精神に大きな打撃を与える可能性があります。それでも問題ない方のみ、引き続きお読みください。 「俺の正義、誰かの不幸」におけるクロムの結末は、皆様に取って最も衝撃的だったことでしょう。そして、クロムというキャラクターにおいて、理解が追い付かない部分が多々あったと思います。
今回は、彼の持つ思想と、その根元について分かりやすく解説していきたいと思います。
まず初めに、彼は生死観や倫理観こそ歪んでいますが、サイコパスではありません。
一般的なサイコパスは他者の苦しみを理解できない、あるいは理解しようとしないことで、残酷な行為に及びます。しかし、クロムは高い共感能力を逆手に取って、ストロン博士が最も絶望するであろう方法を正確に理解し、そこを徹底的に突きました。これは、高い共感能力が無ければ不可能なことです。
身近な例を出すとすれば、『優しい人ほど怒らせたら怖い』とよく言われる理由と同じといったところでしょうかね。
続いて、彼の最も理解し難い部分であろう、自己保存の法則からの逸脱性についてお話ししたいと思います。
まず、自己保存の法則とは、生物が本能的に自己の生命を維持・発展させようとする性質のことです。生物は、危険を回避し、生存を確保するために、自己保存本能に基づいて行動します。例えば、敵から逃げる、飢えをしのぐ、病気を治す、といった行動は、自己保存本能によるものです。しかし、クロムは『死は呪われた生からの解放であり、究極の救済である』と捉えているため、そこから大きく外れていることになります。
皆様も、「生きていてこんなに苦しい思いをするのならば、いっそのこと死んでしまいたい」と思った経験が、一度はあると思います。もちろん、私自身にもたくさんありました。一言で言うのであれば、クロムはそういった感情が極端化してしまった存在です。
彼は、自身の生が母親の罪を暴き、ダグラス家を崩壊させた呪いであると言い聞かされながら育っています。そして、彼が生かされている理由も、従妹であるカルシアのために利用されているだけという、何とも残酷なものでした。更に、彼は惨い人体実験の末に亡くなり、死んでも尚、臓器を抜き取られ、研究資金の肥やしにされていた被験者たちの最期を、何度も見届けています。この経験は、死んでしまえばこれ以上苦しむことは無いと感じるには、充分だったことでしょう。
最後に、クロムの全てであった復讐について解説にして終わりにしたいと思います。もう少しだけ、お付き合いください。
彼の復讐の定義は、『やられたことをやり返すことでも、ただ相手から全てを奪うことでもなく、如何に相手を究極の絶望を陥れるか』です。そこまでは理解出来る方も多いでしょう。
皆様が最も理解し難いと感じるのは、恐らく、何故彼自身の死が復讐計画に組み込まれているかという部分だと思います。
ここからは、不謹慎極まりないお話しになります。大変申し訳ございません。
もしも、あなたの大切な人を殺した殺人鬼が自殺していて、裁きを受けさせることも、自らの手で殺すことも出来ないとなれば、あなたはどう感じるでしょうか。きっと、無力感とやりきれなさ、そして、一生消えることのない、深い心の傷と激しい憎悪を抱え続けることになるでしょう。クロムは、ストロン博士をそういった究極の絶望に陥れようとしたという訳です。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。ミステリアスで残忍なクロムについて、理解していただけましたでしょうか。
西条作品は、今後も鬱々としていて、時に理解し難いものが多くなると思います。ですが、メッセージ性や、キャラクターの生き様はしっかり描いていきたいと思っていますので、もしよろしければ、応援よろしくお願いいたします!