とある昼下がり。空は快晴で、目が痛くなるほど。太陽はギラギラと光り、その存在を主張している。
暑い、暑い、7月のこと。
俺の親友は死んだ。
先天性の病を患い、もともと、長くは生きられないと言われていたらしい。俺がそれを知ったのはあいつが死んでからのこと。遺書には、そのことについての謝罪と、余命なんて考えずに俺と話して過ごしたかったんだと、その理由が記されていた。
「言って、欲しかった」
ふと呟いた言葉は、無意識のうちにこぼれ落ちたもの。これが、俺の本音。
そんなことなら、言って欲しかった。言ってくれれば、もっとたくさん話したのに。言ってくれれば、もっと時間大切にして、長く一緒に居る時間をとれたのに。
そんな後悔が募っていく。けれど、あいつはきっと、命が短いからと対応を変えられるのが嫌だったんだろうな、と。これが、あいつの望みだったんだから、と。自分に言い聞かせては、仕方ない、と自分を納得させる。
ぽたぽたと、溶けたアイスが足に垂れ落ちる。またそれとは別の、生暖かい雫が目から頬を伝い、アイスと同じように足に流れ落ちた。
「お前が居なくなった夏は、やっぱ寂しいよ。」
空はこんなにも晴れていて、太陽はこんなにも眩しくて、向日葵はこんなにも輝いていて、風はこんなにも爽やかで心地良いのに、
「お前が居ないと、全部台無しなんだよ。」
お前が居なくなったあの日から、世界はやっぱり寂しくて、何処にも色が無い。全て色褪せてしまって、輝かない。それは、お前のあの眩しい笑顔も、明るい声も、どこか儚いその姿も、全部全部、無くなったから。お前が俺の世界だったんだ。親友のお前と話して、笑って、ふざけあうのが何よりも楽しくて、生きがいだった。お前が居たから、夏が好きになったんだ。お前が居ない夏なんて、もうとっくに忘れてた。俺は夏が大嫌いだった。暑い暑い夏が。ギラギラと照る太陽が。
だからお前が居なくなった夏なんて、大嫌い。
このどうしようもない暑さは、ただ鬱陶しいだけになってしまった。
ギラギラ光る太陽だって、ただ眩しいだけだ。
向日葵はなんだかお前と似てる気がしてきて、見たくもない。
そよそよと吹く風も、いっそう俺の喪失感を引き立てるばかりで大嫌い。
大嫌いだ、お前なんて。
勝手に何も言わずに居なくなったお前なんて。
最後に会った時も、いつもと変わらず笑ってたお前なんて。
キラキラと眩しいお前なんて。
「大っっっ嫌い。」
こんな夏、早く終わってしまえ。そして、お前のことなんていっそ忘れたい。大嫌い。お前がずっと記憶の中にいるせいで、苦しくて苦しくてたまらない。この夏が終わらないせいで、辛くて辛くてたまらない。全部、お前のせい。お前が、楽しい夏を俺に教えたから俺は苦しいんだ。お前と居る幸せを知った俺は、もう前のように夏を過ごせない。お前と居た夏の思い出も、思い出したくない。思い出すと、胸が苦しくなって、雫が頬を伝うから。楽しい思い出が、辛さと苦しさと悲しさに上書きされていくみたいで、そんなことならやっぱり、お前なんて忘れたい。
7月。まだまだ夏は始まったばかりだ。
まだまだ、この胸の辛さは治りそうにない。
そして、暑い暑い夏はもうきっと、輝くことは無い。
『ちゃんと生きろよ。』
俺の全て見透かしていたお前の遺言だけが、ずっと、頭にこびりついて離れなかった。
コメント
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ノベル一次創作なら上手く書けることを知ったスランプ中の俺氏。そしてテスト期間なのにこれを書いてしまったことを少し後悔。
主人公、良い親友を持ったな