「でっっか…」
学校指定の制服を身にまとい、背中に刀(竹刀袋に入ってる)を背負い門をくぐる。
(御館様が言うから来たけれど、なるべくひーろーとは関わりたくないんですよね…。 はぁ、炭治郎達に会いたい…かまぼこ隊って見ていて癒されるんですよね…って今はそんな事考えてる場合じゃなかった)
ガチャ、という音をたて扉が開く。そこには片目に傷がはいった白い動物と包帯を首に巻いたくたびれた男性が居た。
「やあ、君が耀哉が言って冩屋優雨くんかな?僕は根津さ!」
「…………」
(根津という方は鬼殺隊を知っているらしいですが、この男性は……)
「相澤くん、すまないが席を外してくれないかな?」
「校長!ですが…」
「相澤くん。」
「…わかりました。ではあの事は後々お伺いします」
「うん、そうしてくれるかな。」
パタンと小さな音を立て、相澤は退出していった。気配が無くなるのを感じ取ると、優雨は話し始めた。
「…その通り、私は冩屋優雨と申します。」
「そのに座ってくれて構わないよ。僕もそちらへ行こう」
「わかりました。」
「耀哉から聞いていると思うけど、雄英へ編入して欲しいのは、ヴィラン連合という集団に鬼が居るという情報が入ったからなんだ。 鬼は知能が低く、対話を試みようとしても襲いかかってくる者ばかりだと思っていたが_知能がある鬼もやはり居るんだね。耀哉からは今はあまりいないと聞いていたんだけどね…。」
「貴方も御館様と仲がよろしいのなら知っていると思いますが、御館様に嘘はありません。」
「耀哉を責めているとかではないんだ。耀哉が嘘をついたとも思えない。僕達は、ヒーローとか鬼殺隊関係無しに仲が良いのさ!」
「_貴方は鬼殺隊を理解している、と御館様から伺いました。」
「そうだね、それがどうかしたかい?」
「…理解している。けれど、納得しているとは言われておりません。」
「………」
「やはり、ひーろーと鬼殺隊は分かり合えないのでしょうか。」
「肯定は出来ないかな。確かに僕は鬼殺隊を理解している。だが納得は出来ていない。やはり、殺人と言うのは大きいんだ。もっと別の方法があるのではないかとどうしても考えてしまう。けど、その方法は?と聞かれると答えることが出来ない。だからこそ、これ以上被害を出さないように僕は鬼殺隊の邪魔をしないし協力もする。」
「守るべきものは、一緒さ。」
「……そうですね。貴方とは仲良しにはなれませんが、和解は出来そうですね。」
「おや、仲良くしてくれないのかい?君がこの毛並みを気になっている事は知っているのさ!」
「!?」
「別に触ってくれもいいのさ!」
「い、いいんですか…?」
「好きなだけするといいさ!」
恐る恐るといった風に根津の頭に触る。何故か動物からあまり好かれない優雨はこうして触らせてもらえる事が少ない。それ故に先程のピリついた雰囲気が一気にホワホワとした雰囲気に早変わりした。花が飛んでいる様にも見える。
「……私は、」
「私は、ひーろーが嫌いです。鬼殺の邪魔をする。被害を増やす。こちらが何度も言っても頭ごなしに否定される。」
「けれど、貴方みたいな人なら。少しは、好きになれそうです。」
「……!そうかい、鬼殺隊とは耀哉以外と面識がなくてね。好きになってくれると嬉しいよ!」
「そうですね。考えておきます。」
「そこは頷く所だよ!まあいいさ、編入の手続きとか諸々はもう済んでるからね。全部耀哉がやってくれたからそこは安心していいよ。」
「それと、雄英での注意事項とかその他諸々が書いてある紙を渡すからそれを読んでね。君が鬼殺隊だって言うことは僕しか知らないから大丈夫だよ!」
「?私が鬼殺隊だと言うことは何故伏せているのでしょうか?言っておいた方が楽だと思いますが…」
「それはね、君を鬼殺隊だと言ってしまうと少なからず教師陣は君を意識するだろう。それも無意識にね。」
「そうですか…」
「今日は顔合わせ程度だから、もう帰って大丈夫だよ。話が長くなってしまってすまないね」
「いいえ、大丈夫です。では、失礼します」
ペコリと綺麗な一礼をして優雨は出ていった。
「……笑った方が、綺麗だ。」
しんと静まった室内に、根津は誰と話すでもなく、ただポツン、と1人呟いた。
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