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◻︎お隣さんの異変
ガッシャーン!
ガタン!
日曜日の朝、庭で洗濯物を干していたら、隣の家から何かが倒れたような大きな音がした。
時刻は午前7時ころ。
「あ?なんだろ?」
洗濯物の隙間から、そっと塀越しに隣を覗くけど声は聞こえない。
バタン!
とドアが閉まる音。
言葉は聞き取れないけど、男の人の怒鳴り声。
「ちょっ!なに?」
「いや、隣、何かあったのかなと思って」
ふと気づいたら、洗濯物を干すフリをしながら夫と息子が私と同じ体勢で隣を見ていた。
「なんか、ヤバくない?」
「強盗とか?」
「こんな明るい朝に?」
「夫婦喧嘩かなぁ?」
「怪我とかしてないといいけどな、すごい音がしたけど」
「そうだね、地震がきたのかと思ったし。あ、そうだ!」
私はリビングに戻って、固定電話から隣の家に電話をかけた。
なかなか電話に出ない。
窓越しに隣の家からは呼び出し音が聞こえる。
10回ほどコールしてやっと誰かが出た。
「もしもし、私、隣の田中ですけど、奥様、おみえになります?…えっと、このまえ回した回覧板の件でちょっと…え?あ、そうですか、わかりました。じゃあ、はい、携帯に電話してみますね」
「なんだって?隣」
夫と息子も戻ってきた。
「奥さん…弥生さんね、実家に帰ってて、しばらく戻ってこないって。実家の親が体調を悪くしてるみたい…なんだけど、変だな」
「なにが?」
「さっき資源ごみ置き場で会ったんだけど、私。おはようございますって、普通だったけどな」
「じゃあ、まだ出かけたばかりなんじゃないの?」
「そうかな?ま、いいや、携帯にかけてみる、さっきの物音も気になるから」
スマホから隣の奥さん来栖弥生の番号を見つけて、発信ボタンを押した。
…ただ今おかけになった電話番号は…
「出ない。どうしたのかな?」
「運転中とか?」
「あー、そうかも」
「まぁ、ご主人が電話に出たんだから強盗じゃないよ、誰か転んだんじゃないの?」
「えー、お隣さん、夫婦2人だよ?誰が転ぶの?」
「あ、そっか…」
「なんとなく違和感があったけど、ご主人はいたって普通だったから、気のせいかなぁ?」
秘密基地【サロン・W】で、礼子に朝の出来事を説明した。
「そのお隣さんって、あの、美容院の?」
「そうそう!女優みたいになってた人ね。そういえばあの時のクルマ、誰だったんだろ?」
「息子じゃないの?」
「お隣さんは、娘2人よ。どちらも家を出てるから今は夫婦2人だけのはずなんだけどなぁ」
「そのうち、わかるよ、お隣なんだから。実はただの夫婦喧嘩だったのかもしれないしね」
「だとしたら、レアかも?今まで隣から夫婦喧嘩の声や音、したことないよ」
「へぇ、美和子のとこと同じだね?」
礼子に言われて気づいた。
_____そっか、うちも最近は喧嘩なんてしないか