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14 - 第14話 隣は何をする人ぞ⑵

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2025年01月11日

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◻︎離婚?駆け落ち?



「おはようございます!今日はお早い出勤なんですね」

「え、あ、おはようございます。会議がありましてね」

「そうですか、行ってらっしゃい」


隣のご主人を見送る。

あの物音がした次の日の月曜日。

私は、朝から門の前を掃除していた。

もちろん隣の様子が気になったから。


昨日あれからまた、弥生さんの携帯に電話したけどつながらなかった。


_____もしかして、親御さん、相当悪いのかな?


いやそれなら、ご主人も駆けつけるだろうし。

隣のこととはいえ、気になる。


_____あ、こういうことか。だからあの時、弥生さんも、うちのことを気にしてそれで虐待とか騒いだのか…


隣のことが気になってしまうという感覚が、今になってわかってしまった。


_____でも、私は弥生さんとは違う、きちんとした情報を得たとしても噂としてひろめたりはしない


じゃあ、ただの物好きなオバサンじゃないか!と自分にツッコミを入れるけど。

あの大きな音はやっぱり気になるし、携帯が繋がらないのも気になる。


ご主人が出かけたのを確認して、隣のチャイムを鳴らした。

実家に帰っているから、誰もいないだろうけど念のため。


ピンポーン🎶

「………」


だよね。


「おーい、もう仕事行くよ!鍵かけてないからね」

「はーい、行ってらっしゃい」


夫は出勤した。

私もパートに行く準備をする。

車に乗り、いつもの時間に家を出た。


角を曲がって一つ目の信号で赤。


ん?


信号で止まっている対向車には見覚えがあった。

ボディが紺色、屋根が白の可愛い軽自動車。


_____弥生さん?


私は、思い切り手を振った。

信号が青になり、すれちがうその時もしっかり運転手の顔を確かめる。

肩までの髪を一つにまとめて、まっすぐ前を見ていて私には気づかなかったけど、間違いなく弥生さんだった。

その顔は固かったけど、怪我をしてるようには見えなかったからよかった。


今日のパートは2時まで。

花屋さんで可愛いサボテンを見つけて買ってしまった、もちろん秘密基地に持っていくために。

あとは簡単に食材を買い物して、さっさと帰宅する。


「あ、いた!」


隣の駐車場に、弥生さんの車を見つけた。

あの音の原因をおしえてくれないかな?ただの興味だけど。


ピンポーン🎶

「………」

ピンポーン🎶

「…はい」


玄関ドアが少しだけ開いて、弥生さんが顔を出した。


「よかった!弥生さん、元気そうで」

「え?あ、はい」

「ご実家に帰ってらしたとか?」

「…そう言ってました?うちの人」

「はい、親御さんが体調を悪くしてとか」


ガチャガチャ音がして、チェーンロックが外された。

ドアを開けたそこには、大きなバッグとキャリーケースがあった。


「あ、またご実家へ?」

「ううん、家を出るの」

「へ?」

「ここを出て行くの」


そう言いながら、靴箱の上に視線を落とす弥生。

そこには半分記入された離婚届と、その上に外された結婚指輪があった。


「離婚…するんですか?」

「うん…」

「ご主人は?」

「拒否されてるけど、私の気持ちは変わらないから…」



ププッ!とクラクションの音がして、白いセダンが門の前にとまった。



「あ、来た!ごめんなさい、もう行かなくちゃ」

「え?行くって?」

「うふ。私ね、好きな人ができたの。どうしてもその人と一緒になりたくて。だから家を出るの。車は置いて行く、うちの人に買ってもらったものは、持っていけないし。あ、そうそう!これ、新しいスマホの番号なの。でも、うちの人には教えないでね。じゃ」


そう言うと玄関の鍵を閉めた。

何が何やらわからない私は、その場に立ち尽くしていた。


「ごめんなさい、お願いしてもいいかしら?」

「なにを?」

「この鍵、うちの人に渡してもらえる?」

「え?はぁ、わかりました。預かります」

「ありがとう」


ゴロゴロとキャリーバッグを転がし、よいしょと大きなバッグを持って車に歩いて行く。


車から男性が降りてきて、弥生の荷物を受け取ると、トランクへ積み込んでいる。


「あ、そうだ!言っておかなきゃいけないことがあったんだ」


そう言うと私の元へ歩み寄る。


「あの時は、ごめんなさい。虐待なんて適当な噂を流してしまって。今頃遅いけど、それだけは言っておきたくて」

「あー、はぁー、まぁね…」

「あの頃は、お宅がとても羨ましかったのよ、いつも楽しそうで。私のしょうもない妬みで嫌な思いをさせてしまったこと、ずっと後悔してた。ごめんなさい」


深々と頭を下げられた。

許さないとは言えないし、もう過ぎたことだからいいんだけど。


「じゃあね。どこに行くかは、伝えないでおくわね。うちの人に問い詰められると苦しいでしょ?」

「そう…ですね、聞かないほうがいいかな?」


あの強気なご主人に、強く問い詰められたら思わず言ってしまうかもしれないと思った。


「じゃ、お元気でね」

「お、お元気で…」


パタンと助手席に乗ると、そのまま出て行った、一度も振り返らず。


_____ん?あの日、美容院で見た男性とは車が違うよなぁ?あれ?


そういえば、あの日見た弥生とは、明らかに違った。

派手に着飾ってもいなかったし、かと言って不幸そうでもなかった。


わからないことだらけだ。

あの大きな物音の理由も聞きそびれてしまったし。

突然の弥生の行動に、それからもしばらくその場で立ち尽くしていた。














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