テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
森の静寂を切り裂いたのは、軍靴の音だった。
転移から数時間。執念深く足跡を辿ってきたローラン率いる追跡隊が、ついに二人の背中を捉える。
「……特級資産を連れてどこへ行くつもりだ!」
包囲網が狭まる。
ルイは反射的に剣を抜こうとしたが、その手は隣に立つマイロによって、優しく、けれど抗えない力で制止された。
「……ルイ姉。その剣は、もう鞘に収めていてください。」
マイロが前へ踏み出す。
その瞳は、光を反射して鋭く、冷たく、翡翠色に輝く。
かつて檻の中で震えていた少女は、今や一国の軍隊を虫けらのように眺めていた。
マイロが虚空をなぞると、彼女を中心に巨大な、銀色の幾何学模様の魔法陣が展開される。
周囲の時間が、凍りついたように重く沈殿していく。
「――静謐なる銀の瞬きよ。刹那を切り取り、永遠に刻め」
朗々と響く、死を孕んだ聖なる詠唱。
空気がキン、と冷たく鳴り、舞い散る木の葉さえも空中で静止した。
「『刻死の白銀』」
視界が白銀の閃光で塗り潰された。
それは破壊の爆発ではない。
あまりに純粋で、あまりに鋭利な「静寂」の奔流。
「……なっ、身体が……光に……っ!?」
ローランの悲鳴が途切れる。
光に触れた騎士たちの鎧が、武器が、そして彼らの「敵意」そのものが、音もなく美しい白銀の結晶へと変えられていく。
傷一つ負わせず、けれど二度と動けぬ石像のように、森の中に銀の彫像が立ち並んだ。
圧倒的な格の違い。
マイロはそのままルイの方を振り返り、無垢な少女のような、天真爛漫の笑みを浮かべて手を差し伸べた。
「……さあ、ルイ姉……行きましょう? 」
ルイは、自分よりも遥かに恐ろしく、けれど世界で一番格好いい「自分のモノ」を前にして、震える手でその指を握り返した。
天神みねむ!クリスタルがない人