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「どういうことだ」
「何も、そのまんまの意味っすけど。あなた以外にも2つ、ご依頼が届いてしまはってるんですよ」
俺が頼んだのはデータがある部屋の開錠。同じ依頼ということは同じデータを狙っているんだろう。
「どうします?電話でかけることも可能ちゃ可能っすけど」
「お願いしてもいいですか」
「わかりました」
にこ。と笑う男は電話をしに裏へと行った。何もないこの空白の時間。俺は目を瞑る。
〜〜〜〜〜〜
季節の巡り変わり。寮へと帰る道が毎日変化していくのを眺めるのが楽しみだった。
『〜〜〜!』
もう、今となっては俺を呼ぶ声すらも覚えていない。
でも覚えているのは、期待した俺の惨めな姿だけだ。
〜〜〜〜〜〜
「呼んだらすぐ来てくれるって言っておりました。少々ここでお待ちください」
「ありがとう」
男は俺の正面にまた座った。そして、俺を見つめる。見覚えがある、とでもいうように。
「、、僕あなたのこと知ってると思うんやけど」
「は?」
あまりにも想像以上のことを言ったのでバカみたいな声を出してしまった。知ってるはずないだろう。
「う〜ん。会ったことあるんけ?」
「あるわけないだろ」
カランカラン。
そして扉が開く。
「こんにちわ、魁星さん」
「魁星って呼んでくださいって言ってるじゃないですか、先輩」
そこに現れたのは水色とも言い難い髪色をした灰色のコートを纏った男。
「で、そこの人が?」
「えぇ、依頼が被った人やけ」
「どうも」
俺はそう素っ気なく答えた。
「それにしても早すぎやしません?さっきですよ、電話かけたん」
「あー、そこで仕事してたから」
俺は空気か何かと思うほどこの二人は仲がいいのだろうか。それとも常連か何かなのか。
「長尾さんは遅れるんでしたっけ?」
「えぇ、桜魔皇国から来るみたいなんで。遅れるけど待っててくれん?とのことでした」
「りょかい」
依頼が被った方と思われる男は俺の隣にずん。と座る。
そして俺を見つめる。
「お前、お前っ」
俺の方を指さして、焦ったようにお前と連呼する。
「、、、覚えているか?」
知らない。俺の記憶の中にはこんな男いない。
「知らない。俺の記憶にはお前なんかいない」
俺は冷たく返す。会ったことないはずなんだ。会ったことなんてないんだ!!
「、、そう、ですか」
思いの外男は簡単に引き下がってくれた。冷たい部屋に時計の針だけが響き渡る。カタ、カタ、一針一針時計が進むごとに時間は進んでいくが、景色に変化はない。これが当たり前の日常だ。
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