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二人で社長の名前の話をしているときだった。
“プルルルルル”事務所用の固定電話が私達のことを呼んでいた。
社長は電話の方に目を向け、電話に出た。
今から仕事なんて嫌なんだけどな、もうあと30分で定時の6時。
どうかご依頼の電話じゃありませんように!
「はい。こちら声帯精神科の木村です。」
先ほど話していた声とは全然というほど違う“仕事用の声”だった。
「こんばんわ。???さんですか。〜〜〜。ーーー?ー、〜〜ー。」
どうやら社長の態度から知り合いらしい感じがコーヒーの香りとともに漂っていた。
「わかりました。“今から”伺います。」今から!?あとちょっとで帰れるって思ってたのに…。
社長は今の時代とは大違いの固定電話の受話器をガシャンと戻していた。
「米田くんも聞いてたよね。」これに対しては、こくと頷くしかなかった。言い逃れも何もできないからだ。
「はい…」とぼとぼと用意をし始めた。
「よし。行こっか。」
さっき着ていたジャケットが休みたがっていたがっているというのに。可哀想だ。
「多分だけど早く終わると思うから。」
私の態度を見てわかったのか、社長は言葉を掛けてくれた。
「わかりました。」
吐息を漏らした声がしょんぼりしているようだった。
「お名前はなんですか?」
「えーと、柴田さんだね。」
社長は資料を覗き込んでいた。
「またですか?3回くらい発症してません?」そう。柴田さんはこの精神科の常連さん。精神科の常連なんて褒め言葉じゃない。
「うん。今日で4回目。」
と話しがらうちの事務所から10分もかからないところにある柴田家についた。
“ピンポーン” 私はいつもどうりのごとくインターホンを鳴らした。