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「ところでリアム様、この人を連れ出して何をしていたのですか?俺の許可なく勝手なことをしないでいただきたい」

「まあそう怖い顔をするな。それに俺はおまえの主だぞ」

「主でも、俺の部下となる者に失礼なことをされては困ります」

「相変わらずうるさいな…」

ゼノが近づき、僕の肩からリアムの手を外させる。そして心配そうな顔を僕に向ける。

「大丈夫ですか?なにか嫌なことを言われたりされたりしてませんか?」

「うん…大丈夫。少し話をしていただけ」

「それならばよかったです」

「よくあるかっ」

しばらく黙って見ていたトラビスが、結局は我慢できずに怒り出す。

ゼノが「下がれ」と制してもトラビスは止まらなかった。

「すごく心配しましたよ。少しの間だからとあなたを一人にして後悔しました。まことに申しわけありません。本当に嫌な思いをされてませんか?正直に仰ってください。もしも少しでも嫌な思いをされたのなら、俺は今すぐに国へ連れて帰ります!」

「トラビスっ」

僕はトラビスの服を掴んで叫んだ。

ああもうダメだ。リアムにトラビスのことまで知られてしまった。捕虜の僕に部下がついて来てることがバレてしまった。これではリアムの不信感をあおるだけだ。

しかもゼノまで疑われて国での立場が悪くならないだろうか。

案の定、背後から「おまえは誰だ」と聞く低い声がした。

僕はトラビスを背にして振り向いた。マズイ状況になったら、僕がリアムを止めるからトラビスだけでも国に逃げ帰ってもらいたい。

リアムがゼノの肩を掴んで押しのけ、僕の前に立つ。

「フィル、そこをどけ。後ろのデカい男。叔父上の城に仕える騎士だと思っていたのだが、違うようだな。…ん?見たことがあるぞ。我が国の軍服を着て髪型を少し変えてはいるが、貴様…イヴァル帝国の騎士だな」

「…ああ、そうだ」

僕の心臓がドキンとはねる。

バレた、どうしよう…。普通ならトラビスは問答無用で斬られる。今、僕の剣はゼノが持っている。リアムが剣を振り上げても防げない。

激しく鳴る胸を押さえながらリアムを見る。

でもリアムは剣の柄にさえ触れずに、感心したようにトラビスを見て腕を組んだ。

「素直だな。おおかた、フィルのことが心配でついて来たフィルの部下なのだろう?単独でついて来たその忠誠心は褒めてやる。それでゼノ、おまえはこのことを知っていたのか」

リアムが前を向いたまま、今度は隣にいるゼノに聞く。

僕は思わず「違うっ」とリアムに飛びついた。

「うおっ!びっくりした…どうしたフィル?」

リアムが僕の髪に優しく触れる。

思わず飛びついてしまったけど何と説明すればいい?僕がゼノに頼んで連れて来てもらったと言う?でもなんのためにと聞かれたら答えられない。

僕はリアムにしがみついたまま必死で考える。

その時、ゼノが僕に向かって優しい声を出した。

「大丈夫ですよ。リアム様は俺がどんな人物かよく知っていますから」

「でもっ」

「俺がトラビス殿のことを黙っていたのも、理由があるとわかっていらっしゃいますから。そうですよね?リアム様」

「もちろんだ。ただ知っていたのかどうかを知りたかっただけだ。ゼノがこのことを全て知っていたとしても、罰を与えることはしない。俺はゼノを信頼しているからな」

「ありがとうございます。俺もリアム様を尊敬し信頼しています」

「まことか?」

「はい。その上で少し失礼なことを言います。よろしいですか?」

「なんだ?」

僕は恐る恐るリアムを見上げた。

リアムが僕の髪を撫でて頷く。

「フィル様、こちらへ」とトラビスが呼んだけど、僕はより一層にリアムにしがみついた。

ゼノはなにを言うつもりなのだろう。少し怖い。

「俺がこの方を連れて来たこと、リアム様が忘れている記憶を思い出せば、納得してくださると思います」

「記憶…ねぇ。おまえ達は俺が記憶を失ってると騒ぐが、俺には失った記憶があるとは信じられない」

僕の身体が小さく揺れる。

リアムは記憶を失ってることを信じていないの?僕と出会ってからのことが、無かったことになってる?

「どうした?」と聞くリアムに僕は首を振る。

リアムが僕の髪を撫でながら話を続ける。

「だが確かに俺が覚えている日から半年が過ぎていた。目覚めるなり周りから大丈夫かと騒がれ、記憶がないと医師を集められ、挙句の果てに父上からおまえの怪我の原因となるイヴァル帝国に攻めこめと命令された。実際のところ、俺は何がなんだかわからずにここにいる」

「それも全て、リアム様が忘れていることを思い出せばよろしいかと」

「わかっている。だがどうやって思い出せというんだ?なあフィル」

僕に話を振られても、なんて言えばいいかわからない。それにあなたの恋人ですと話して、先入観を与えたくない。

「大丈夫ですよ。近々思い出せると思います」

ゼノがそう言うと、僕を見て微笑んだ。

銀の王子は金の王子の隣で輝く

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