テラーノベル
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.前回もですが誤字脱字多数
久々に対面しない四人実況を撮った。
オンラインでの実況が終わり、画面上の波形が静かになって数十分。
四人の間では、いつものように他愛もない雑談が続いている。牛沢も、リラックスした様子で背もたれに体を預けていた。
だが、ガッチマンが少し言い淀むようにして切り出した一言が、その平穏を粉々に打ち砕いた。
「……あのさ。ちょっと、お前らに相談っていうか、報告なんだけどさ」
そのトーンの低さに、キヨとレトルトが即座に食いつく。
「おっ、何? ガッチさん真面目な話? 珍し!」
「え、何何。怖いんだけど、そんな溜め方されると」
牛沢も、無意識にコップを握る手に力を込める。
ガッチマンは、画面の向こうで少し照れくさそうに頭を掻きながら、とんでもない爆弾を投下した。
「……いやさ。例の彼、後輩いるじゃん。……昨日の夜、告白されたんだよね。『付き合ってほしい』って」
「「…………はぁぁぁぁ〜〜ッ!?!?」」
キヨとレトルトの絶叫がヘッドセットを通じて耳を刺す。牛沢は声すら出なかった。
「ちょ、詳しく! 詳しく!ガッチさん!」
「え、どこで!?急に!? 展開早すぎない!?」
「お前らに相談したことは内緒だぞ?
後輩から『買い物に付き合ってほしい』って呼び出されてさ。俺も、普通に買い物だと思って一緒に行ったんだけど……。一通り終わったあと、公園でいきなり言われちゃって」
ガッチマンの声は困惑しきっていた。あろうことか、彼はデートだという自覚すらなく、ただの買い物として同行していたのだ。
「『ガッチマンさんの、誰にでも優しいところも、たまに見せる厳しいところも全部好きです。男とか女とか関係なく、一人の人間として愛してます』……だって。いや、びっくりしたわ……」
「愛してます!? ガチじゃん、ガチのやつじゃん!!」
キヨが興奮しながら机を叩く音が聞こえる。
一方、牛沢は、焦りというよりはもはや寒気に近いものを感じていた。自分の知らないところで、自分の想い人が、熱愛の言葉を浴びせられている。
「……で。ガッチさんは、なんて返したの」
牛沢の、氷のように冷たい声。
レトルトが「うわ、うっしーの声が死んでる」と小声で茶化すが、今の牛沢にそれを受け流す余裕は1ミリも残っていない。
「いや、その場では『ちょっと考えさせて』って濁しちゃったんだけどさ。正直、俺は彼のこと好きじゃないし、そもそも俺、男だし。…でも、今の時代に男だからダメっていうのも、なんかナンセンスな考えなのかなって思うと、なんて断るのが正解なのかなって」
ガッチマンは、画面の向こうで本気で悩んでいるようだった。
彼の悩みは、相手への情ではなく、あくまで誠実で、誰も傷つけない断り方を探しているだけだ。それは分かっている。
(……考えさせて、で保留したって事? ……なんでその場で叩き斬らねーんだよ。……男とか時代とか、そんなの別にどうでもいいだろ……)
「……ガッチさん」
牛沢は、震える声を抑え込み、努めて冷静に、口を開いた。
「そういう時の断り方なんて、一つしかない気がするけど。……あとは、『他に、好きな奴がいるから』とかって言えばいいじゃん。」
「えぇ? でも、俺、好きな人とか……」
ガッチマンが言いかけた瞬間、牛沢は「別に嘘でもいいでしょ」と被せた。
「……いないなら、俺の名前使いなよ。……『牛沢と付き合ってる』って言えば、後輩も諦めるでしょ」
「「………………」」
通話回線が一瞬、静まり返った。
キヨとレトルトが「え、うっしーなんかすごいこと言ってない……?」と戦慄している。
ガッチマンは、「えっ、でもそれ嘘になっちゃうし、うっしーに迷惑が……」と、まだ的外れな心配をしている。
牛沢は、赤くなった顔で俯きながら、心の中でだけ叫んだ。
(迷惑なわけねーだろ!!あーもう ……さっさとあいつを、俺の名前で絶望させてこいよ、このタラシ……!!)
余裕なんてものは、とっくに粉々に砕け散っていた。
「だから、俺の名前出していいって。そういうのを黙らせるにはそれが一番手っ取り早いから」
牛沢の声は、もはや相談に乗っている人間のそれではなく、少し怒りが乗った鋭さを帯びていた。
「いや、でもさ、うっしー。そんな嘘ついたら、うっしーに変な噂が立っちゃうかもしれないじゃん。俺のせいで迷惑かけるわけにはいかないよ」
ガッチマンは、困ったように画面の向こうで眉を下げている。相変わらずの、度を超したお人好し。それが今の牛沢には、若手をつけ上がらせる隙にしか見えなかった。
「迷惑なんかじゃないって! 俺がいいって言ってんだからいいんだよ」
「よくないって。もし本当に信じられたら、うっしーの活動にも響くかもしれないし……」
「響かねーよ! そもそも、あいつに『他に好きな奴がいる』って思わせなきゃ、ずっと付きまとわれるぞ。あいつの熱量、普通の断り方で引き下がるタイプじゃねーだろ」
二人の平行線の掛け合いが続く中、キヨとレトルトはポップコーンでも頬張りたい気分で、黙ってその修羅場を観賞していた。
だが、牛沢がしびれを切らしたように放った切り札が、その修羅場を爆破した。
「……大体、ガッチさん。『俺とならキスできる』って、自分から言ったよな?」
「「は……はぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
キヨとレトルトの叫びが重なる。
「何それ!?キス!?聞いてないんだけど!」
「うっしー、ちょっとお前いつの間にそんなとこまで進んでんの!?詳しく!!」
騒ぎ立てる外野を無視して、牛沢はモニターの向こうのガッチマンを射抜くように見据える。
「そ、それは……!確かにそう言ったけど!実際にしたわけじゃないし、あれは例え話っていうか……!っていうか何の話だよ今!?全然関係ないだろ!?」
ガッチマンは顔を真っ赤にして、ワタワタと焦っていることが手に取るようにわかる。その焦りようは、あの出来事を、彼もまた鮮明に覚えている証拠だった。
「関係あんだよ。そこまで言える相手なんだから、付き合ってるって言ったところでそこまで嘘にならねーだろ」
「なるよ! 大ありだよ!?」
「いい?ガッチさん。単に『好きじゃない』とか『男だから』なんて理由で断ってみろ。あいつなら絶対『じゃあ好きにさせます』とか『今の時代、性別なんて関係ないです』とか、面倒くせー理屈で食い下がってくるに決まってんだよ」
牛沢は一息に捲し立てる。
「そういうのは、『もう決まった相手がいる』って事実を突きつけるのが一番簡単で、一番相手を諦めさせられるんだよ。分かった?」
「うーん……。まぁ、一理あるけど……。でもなぁ……」
ガッチマンは唸りながら、なおも逡巡している。
その様子を眺めながら、キヨとレトルトはチャット欄でこっそりやり取りを交わしていた。
(うっしー、必死すぎだろwwwていうかレトさん、キスの話知ってた?)
(いや知らなかった。
完全にうっしーの私利私欲入ってるよねこれ。ガッチさんだけ気づいてないの面白すぎるんだけど)
「ま、確かにね。ガッチさん、うっしーの言うことも一理あるよ」
レトルトが、わざとらしく助け舟を出す。
「そうそう。うっしーが犠牲になるって言ってんだから、甘えちゃえばいいじゃん。ねー、うっしー?」
キヨのニヤケ顔が見えなくても分かった。牛沢は「…そうそう。俺はそれで構わないから、さっさと断ってきな」と、不機嫌そうな声で、逃げ場を塞ぐように言い放った。
「……わかったよ。とりあえず、考えておくから……」
ガッチマンのその小さな返事を、牛沢は逃さなかった。
キヨとレトルトがガッチマンに根掘り葉掘り質問しているのを聴きながら、牛沢はまだ収まらない動悸を鎮めるように、冷えたコーヒーを喉に流し込んだ。
次の日。
後輩を呼び出したガッチマンは収録現場の屋上に立っていた。
冷え始めた北風を遮るようにコートの襟を立て、落ち着かない様子で足元を見つめて若手を待つ。
(……よし。とりあえず、うっしーの名前は出さない。「好きな人がいるから」って、それだけで押し切る。それで納得してくれれば、うっしーに迷惑もかからないし、万々歳だし)
自分にそう言い聞かせて、何度も頷く。昨日牛沢に「俺の名前を使え」と凄まれたが、やはり善良なガッチマンにとって、嘘の片棒を親友に担がせるのは気が引けた。
「ガッチマンさん、お待たせしました!」
若手が、どこか期待をするような、それでいて決死の表情で駆け寄ってくる。ガッチマンは、心臓の鼓動が少し速くなるのを感じながら、意を決して切り出した。
「あのね、一昨日言われたことなんだけど……。ごめん、気持ちは嬉しいんだけど、お付き合いはできない。俺、……他に、好きな人がいるんだ」
よし、言えた。これで終わる。
そう思った瞬間、若手が食い気味に言葉を被せてきた。
「牛沢さんですよね?」
「……………….え!?」
ガッチマンは、文字通り飛び上がらんばかりに驚いた。
予想だにしなかった展開。自分の口からではなく、まさか向こうからその名前が飛び出してくるなんて、計算のどこにも入っていなかった。
「ちょ、え!? な、なんで、今、うっしーの名前が……」
「見てれば分かりますよ、そのくらい。ガッチマンさんの視線がどこを向いてるか、あの人がどんな顔であなたを見てるか。隠してるつもりなんですか?」
「いや、俺は分かってないけど!どういうこと!?隠すも何も、俺とうっしーはただの友達で……」
「全然分かってないんですね」
若手は、混乱して焦りだすガッチマンを冷めた、けれど情熱の冷めない瞳で見下ろした。その表情には、もはや可愛い後輩の面影はない。
「……僕、あの人には負けませんから。あんなに好きでいて、あんなに近くにいておいて、結局何もしない。そんな度胸のない人には、絶対に負けたくない」
若手の言葉が、ガッチマンの脳内をかき回す。「あんな好きでいて」?「何もしない」?。
彼の言う言葉の意味がひとつも理解できない。
「ガッチマンさん。覚悟しててください。あの人が動かないなら、僕が奪い去るだけです。……絶対、あなたを落としますから」
吐き捨てるような、剥き出しの宣戦布告。
若手は、一瞬だけ荒い言葉を使った自分に気づいたのか、ハッとして足を止めると、深く頭を下げた。
「……取り乱して申し訳ありません。失礼します」
それだけ言い残すと、彼は一度も振り返ることなく、足早に去っていった。
冷えきった屋上に、一人取り残されたガッチマン。
頭の中は、真っ白な霧が立ち込めたような状態だった。
「……え、えぇ?」
小さく漏れた声は、風にさらわれて消えた。
「好きな人がいる」と断るはずが、なぜか「牛沢に愛されている」という事実を、よく分からないまま突きつけられてしまった。
何もしない、度胸のない人。
それって、うっしーが俺を……?
いやいや、まさか……。
意味が分からなすぎて、けれど心臓の奥がじりじりと熱い。
ガッチマンは、震える手でスマホを取り出し、助けを求めるようにTOP4のグループチャットに連絡を入れた。
帰宅したガッチマンはほか3人を通話で呼び出す。
呼び出された通話には、冷え切った沈黙の後に、これまでで最大級の喧騒が巻き起こっていた。
(……え、待って。それってつまり、後輩にうっしーの気持ち、全っ部バラされてない!?)
キヨが、レトルトと二人のチャットで本人よりも大焦りしている。
(バラされてるねぇ……。しかも、当の本人が一番わかってないっていう、最悪のパターンでバレてるよねこれ)
レトルトも、いつものニヤニヤを通り越して、事態の深刻さに頭を抱えている様子だ。
一方の牛沢は、ヘッドセット越しに深い、深いため息をついた。
その溜息には、「あいつ、余計なことを……」という、ライバルに対する底冷えするような苛立ちが混じっている。
だが、彼は取り乱すことなく、冷徹なまでに冷静にその報告を聞き届けていた。
そんな牛沢とは対照的に、ガッチマンだけは、一人でパニックを起こしていた。
「ねぇ、ちょっと待ってよ! おかしいでしょ!? なんであの子、うっしーの名前出すの!? しかも『見てれば分かります』って……俺、全然分かってないよ!?隠してるも何も、うっしーと俺だよ!?」
ガッチマンの声は、困惑のあまり一段高くなっている。
「それだけじゃないんだよ!『あの人には負けません』とか『奪います』って……奪うって何!?元々俺、誰のものでも無いし…てか、なんでうっしーをライバル視してんの!?俺、どうしたらいいと思う、これ!?みんな、何とか言ってよ!」
ガッチマンの叫びに、キヨとレトルトは顔を見合わせる。
((いや、それはお前……うっしーがガチでガッチさんのこと好きだからだよ!!))
喉元まで出かかった言葉を、二人は必死に飲み込んだ。ここで自分たちが真実を告げてしまえば、この複雑に絡み合った友情(という名の片想い)をぶち壊してしまう。
「……ガッチさん」
不意に、牛沢が静かに名前を呼んだ。
先ほどまでパニックに陥っていたガッチマンが、ピタッと口を閉ざす。
「……う、うっしー……。どうしよう、変なことになっちゃった。ごめん、俺がうまく断れなかったから……」
「いや謝らないでよ。ガッチさんは何もしてないじゃん。あいつが勝手に暴走しただけでしょ」
牛沢の声には、一切の動揺がなかった。
牛沢はモニターの前で、鋭く冷たい瞳を一点に定めていた。
「『何もしない人には負けない』、だっけ」
牛沢が、若手の言葉を反芻するように低く呟く。その瞬間、キヨとレトルトの背筋に、ゾワリとした戦慄が走った。あ、これ、うっしーのスイッチが入った。
「 奪えるもんなら、やってみろってんだよ」
「……う、うっしー……?」
「ガッチさん、大丈夫。俺が何とかするよ」
牛沢の、あまりにも独占欲の滲み出た宣戦布告返し。
ガッチマンは、言葉の真意を理解できないまま、不思議とパニックが収まる。
「お、おう……。わかった。うっしーがそう言うなら……」
ガッチマンをなだめる牛沢のやり取りを見ながら、キヨとレトルトはチャット欄で激しく指を動かしていた。
(うっしー、めちゃくちゃキレてんじゃんwwやばい面白いわ)
(後輩くん、うっしーの導火線に火、つけちゃったね)
若手の特攻は、ガッチマンを落とすどころか、牛沢を、捕食者へと変えてしまったようだ。
次の日から、明らかに牛沢の行動が一変した 。
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