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愛の充電器がほしい

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愛の充電器がほしい

46 - 第46話 夢のような幸せな空間

2025年02月15日

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福島から東京へ帰宅して数週間後、美羽は、大きな鏡の前にあるふわふわのソファに座った。

いつもと違う服装。

真っ白いサテン生地のAラインの肩出しドレス。両腕にはバルーンのような袖を身につけていた。お腹の赤ちゃんはまだまだ小さい。

性別はまだ分からない。


お腹が大きくならないうちに早めに式を挙げてしまおうという美羽自身が決めたことだ。

小さい頃に約束したことが本当に叶うとは夢にも思わなかった。


おままごとを一緒に付き合ってくれたあのそうちゃんの本当にお嫁さんなるなんて。

ドレスの着付けを終えて、柔らかい腰掛けたソファは優しく包み込んでくれた。

お腹をさすってはため息をついた。緊張してきていた。


心臓の鼓動が鳴り止まない。


メイクさんが、別部屋から化粧を道具を持って、美羽の前に立った。


「お待たせしました。ドレスお似合いですね。早速ですが、メイクさせてもらって良いですか?」


「はい。お願いします」


大人しく、いつもより口数が少ない。

プロのメイクに頼んだことが今まで無かった美羽はどんな化粧をされるんだろうとドキドキした。

時間がゆっくり流れていた。時計の針が妙にカチカチと聞こえる。


ノリの良いファンデーションとマスカラ、アイブロー、アイシャドウ、アイライナー、チーク、口紅を丁寧につけてもらっていた。


普段こんなに化粧しないなぁと思いながら、手鏡を渡されて改めて自分の顔を確かめる。


「あとは、ヘアアレンジですね。少し編み込みさせていただきますね。あと上の方に上げて、ディズニーに出てくるヒロインみたいになりますよ」


「ありがとうございます」


プリンセスになりたいと思っていた。大人になって本当になれるんだと笑みがこぼれる。

メイクさんは、テキパキとこなしていく。最後には、白いヴェールを被せられて、手元には、ピンク色の花束のブーケを持たせられた。ドアのノックがした。


「すいません、入っても良いですか?」


着替えを終えた新郎の颯太がネイビーのタキシードを着て、外で待っていた。横にはヒラヒラと

レインボー色でできたグラデーションドレスを着た紬がいた。


「あ、はい。今、出来上がります。どーぞ」


慌てて、観音開きの扉を開けた。


「失礼します……」


颯太は絶句した。鏡の前に立つ美羽が別人に見えた。中に颯太が入ると、待合室にいた恭子がハッと気づいて紬の腕をつかみ中に入るのを阻止した。


「紬ちゃん、こっちで写真撮りましょう」


「えー、私、美羽ママのドレス見たいぃ」


「良いから、おばちゃんと撮ろうよ。ねぇ、後でご褒美あげるからぁ」


恭子は2人きりに少しでもしてあげたいという計らいだった。


「ご、ご褒美!? うん。わかった。恭子さん、どのポーズで撮る?」


急にノリノリになる紬。壁際に立ってモデルポーズをとる。横にいた琴音がカメラマンになった。


「ほらほら、2人笑顔でね」


紬と恭子は血のつながりはないが、戸籍上おばあちゃんと孫となる。

突然できた孫に最初はちょっと違和感を感じた恭子だったが、賢く空気を読む紬を大層気に入った。

2人の結婚式を挙げる今この瞬間から信頼度が上がった。



「近く、行って良い?」


颯太は、初めて見る美羽のウエディングドレス姿に目が潤んできた。


「うん、いいよ」


鏡の前で2人は並んだ。


「俺、この瞬間。夢で見てたかも……」


目から涙が溢れる。


「ちょっと、まだ式始まってないんだけど、感動するの早すぎだよ」


美羽も颯太の涙を見て、目が潤んできた。


「俺、生きててよかった」


「私も同じ」


両手を繋いだ。


「もう、幸せすぎてこわい」


「こわがらないでよ。そばにいるでしょう。むしろ、私の方が心配だよ。もう、どこにも行かないよね?」


「え?」



「小さい頃の公園で遊んだ時を思い出したんだけど、結婚しようって本当は言ってくれてたんだよね。約束してたのに、いなくなっちゃったから」


「……あー、折り紙の指輪?」


「そうだよ。思い出した? 私、ショックでしばらく公園遊びと折り紙できなかったんだから」


「そうだったの? ……もう、どこにも行かないよ。待たせてごめんな」


颯太は美羽をぎゅっと抱きしめた。すると、扉がバタンと開いた。扉の前で写真を撮るのに盛り上がり、

あっち行ったりこっち行ったりで紬と恭子、琴音が不意に扉を開けてしまった。


「あ、パパ。ずるい!! 紬も美羽ママとハグするんだから!!」


ぎゅーと抱きしめていたのをバッチリ見られてしまった。紬はすぐに駆けつけて2人のそばによる。


恥ずかしくなった颯太と美羽はパッと手を離した。


「ごめんごめん」


紬の頭をなでなでした。


「お待たせいたしました。会場の準備が整いましたので、みなさま中の方へお入りください。新婦様と新婦のお父様は、こちらでお待ちください。新郎様とご列席のみなさまは、会場の方へご移動お願いします」


スタッフが大きな扉を開けて、手を向けて案内する。ゾロゾロと参列者が中の方へ移動する。美羽の家族をはじめ、友人数名と会社の同僚が招待されていた。颯太の家族は祖父母のみのため、少人数の結婚式となっていた。


バージンロードを歩くことを恥ずかしがっていた美羽の父の和哉はどうにか恭子の説得で歩く決意をした。


「父さん、ごめんね。ありがとう」


「あ、ああ。いいんだ。こういうのは、人生で1回あるかないか。いや、1回で済ませてほしいけど」


「何、言ってるの。冗談やめてよ」


「ドレス、良いの選んだな。似合ってるぞ」


「そう。良かった。ありがとう。父さん、寂しい?」


「ううん。嬉しいよ。娘が旅立つんだから」


和哉の目から涙が流れる。寂しさが染み渡っていた。


「言ってることと反応が違うよ。無理しないでよ」


「いいや、俺は泣いてない。汗かいてるんだ。ほら、行くぞ」


和哉は右腕を曲げた。美羽は和哉の腕に手を添えた。


「お願いします」


「新婦様の入場です」


盛大な拍手とともに美羽と和哉は音楽に合わせてバージンロードを歩いた。美羽の後ろではドレスの裾を持ち上げる紬の姿があった。両親と一緒に過ごして3歳に出会ってから21年過ぎた。数々の思い出が走馬灯のように思い出す。血は繋がっていなくても朝井家は本当の家族だったと改めて感じる。

祭壇には新郎の颯太と牧師さんが立っていた。


たくさんの列席者の中で和哉の手から美羽の手が離れていく。颯太の左手にそっと添えた。


段の上にゆっくりと登った。


「夫たる者よ。汝、健やかなる時も、病める時も、常にこの者を愛し続けることを誓いますか」


牧師は言う。


「誓います」


颯太は迷いなく言う。


「妻たる者よ。汝、健やかなる時も、病める時も、常にこの者を愛し続けることを誓いますか」


「誓います」


恥ずかしさがあったため、小さい声で話す美羽。


「それでは、指輪の交換を」


牧師は白いリングピローを2人の前に出した。颯太は美羽に美羽は颯太にそれぞれの指輪を

つけた。

つけ終えると向かい合い、美羽のヴェールをそっとあげた。

両肩に手を触れて、そっと横から顔を近づけて誓いのキスをした。


拍手喝采で会場はお祝いムード一色となった。


口笛を吹いたり、おめでとうという声がかかる。カメラで写真を撮り、フラッシュが何度も光った。

結婚式をしたことの無かった颯太は気持ちが一層盛り上がった。

美羽のことを大事にしようと意思が強く出た。


美羽をお姫様抱っこをして場を盛り上げた。

この幸せだという気持ちが長く続けばいいのになと強く願った。




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