出撃‼︎
『愛する祖国の為に。』
『幸福を見続ける為に。』
『大切な家族の為に。』
『己が生き残れる世界の為に。』
『力しか知らない化け物の俺の為に。』
『死守するべきモノを守る為に。』
『恋した地を奪還する為に。』
『生きるべきモノを生かす為に。』
『愛を知らない醜い俺の為に。』
『孤独で役目を果たせないioの為に。』
『同志の理想郷を叶える為に。』
『消えてしまいそうなキミの為に。』
『平穏な日常の為に。』
何かの為にそうする。
そう教え込まれて来た、でも本当のヒトの国の機動力とは____
生命に直結しているのではないか。
____では生を超越した、思い、モノ、とは?
それは我々の物差しでは測れないほどに
『ヒトとゆうスケールが大きくなったモノだ。』
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⚠️注意⚠️
・この物語は二次創作でフィクションです。 ※史実を元に作られています※
・実在した人物、団体、政治、宗教、事件とは関係ありません。
・戦争賛美ではありません。 また政治的意味もありません。実在の国家とは関係ありません。
・旧国、亡国、が出て来ます。
・多少、時空のズレが生じます。ご了承下さい。
・暴言、暴力、流血、グロ、微性的?、な表現が含まれます。
・差別的単語、政治単語、等書かれますが、意味は御座いません。(タブーな言葉も出てくるかも)
・自己解釈が多々含まれます。(制作には念入りに確認をしますが、主が間違った情報を流す可能性があります。)
・その他、地雷があると思います。その時は自衛をお願いします。
・作中で時折、挿絵が出てくる場合があります。なお挿絵は主が擬人化にしたキャラなので想像とズレがあります。ご了承下さい。
・オリジナルヒューマンズ、が出てきます。(例 明治サン 大正サン 昭和サン 大和サン )
※一話以降注意喚起を流しません。ここに戻ってきてご確認して下さい。※
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西暦202x年
令和x年
四月五日
一人きりの仕事部屋。
日本「ん、、、っ、、、。」
私はある程度仕事が終わると、キーボードから手を離し、腕を後ろに伸ばしました。
ふと、、、外を見ると真っ暗闇な街の中に雷がピカッと一瞬だけ光っています。
日本「春雷、、、ですかね、、、。」
絶え間なく降る雨の音とどこかで落ちる雷の音を背景に、私は再び画面に目線を移しました。
画面に溢れている情報。ブルーライトで灯る資料と分析グラフ。、、、コレらをまとめれば、終電までには間に合うでしょう。
、、、あ〜ぁいつからこんなに多忙になったのでしょう?
今の仕事はやり甲斐もありますが、、、なんとゆうか、自由が欲しい。
好きな事やって、毎日穏やかに過ごせる時間が。
もうとっくにバブル期は過ぎているとゆうのに、、、、、、。
日本「、、、帰りましょうか。」
仕事が片付いたところで私は立ち上がりました。カバンとスーツを持ち上げ、オフィスを後にします。仕事部屋の電気を消して。私の周りが闇に沈んだ時。
?『夜みちはあぶないぞ。』
日本「、、、はッ、、、、、、。」
今、、、誰か居た?
周りを見渡しても何も気配はない、なのに妙に肌寒い感触がする 。
私は怖くなって電気を付け直しました。 一瞬でバッと光る電気に目が眩みぎゅっと瞑る。恐る恐る目を開けると。
日本「誰も、、、居ないですよね、、、、、、。」
シーンと静まり返ったいつもの仕事部屋。でもやけに____
冷たい空気がします。
日本「、、、、、、ハハッ、、、。」
既に私は乾いた声しか出せなくなりました。
それでも、無意識に足は帰り道へ足早に動いていました。
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チッ、、、チッ、、、チッ、、、
明朝05:50 四月六日
日本「、、、クソッ、、、、、、。」
昨夜は変に暑く寝苦しい夜だった。
私はむくっと重い体を起こしました。春用に衣替えして、薄くなった寝巻き物が素肌に引っ付いている。
薄いカーテン越しに見える旭日はなんだか妙に眩しかった。
日本「、、、、、、昨日見た夢は、、、。」
その夢は知らない誰かが嘆いていて、夢なのに
、、、少し潮の匂いがした。その人は威厳のある顔立ちで、どこか私に似ていた。
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?『。ぞだんるわ変でレコ、も命運の海のこ』
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、、、夢で出会う人は、、、一度会ったことのある人しか出てこないと言いますが、あの夢の人は
本当に見たことない、知らない人だ。
日本「疲れているんでしょうかねぇ、、、?最近気絶するように寝る事が多いですし、、、、、、。」
そう独りごとを呟くと、私は後頭部を優しくかいた。
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午前06:50
『東京の最高気温は例年を上回り非常に暑い日になるでしょう。また今年の夏は早く暑くなる事が予想されています。紫外線対策には____。』
片耳にテレビニュースの音声、視界に文字がぎっしりと詰まれた新聞。それらを入れながら暖かいソファに座る。
意識はハッキリと満たしているのに、満たされない心の隙間。
____どうしようもない心の隙間が最近、また増えた気がします。
ふと時計を見るともうこんな時間になっていた‼︎
マズイと私は目を開き、 慌てて新聞紙を畳み、鏡の前に立ちました。
最終的な身だしなみを整え、鍵を持ち、会社へと家を飛び出します。
外は四月上旬の春とは思えないほどの光を放っていました。
日本「暑いのは、、、嫌いです。」
私は太陽を横目に駅へ駆け込んで行きました。、、、良かった、間に合った。
新宿区行きの電車になんとか乗ると、目の前の吊り革に手を差し伸べました。すると横から大きな手が割り込んできた。
思わずその主を見ると。
日本「、、、アメリカサン⁉︎」
アメリカ「oh‼︎日本か‼︎」
そこにいたのは私服姿でいつものサングラスを掛けているアメリカサンでした。
その屈強な立ち振る舞いには、細くて身長の低い私は居た堪れません。
日本「、、、アメリカサンは何しにこちらへ?言ってくだされば良かったのに。」
アメリカ「Thank you.でも観光しに来ただけだから別にいいぞ‼︎」
アメリカサンは満開に咲かせた笑みで低い私を見下ろして来ました。見上げるアメリカサンの姿はなんだか安堵が感じさせられます。
この戦艦がいれば絶対に大丈夫。
____センカン?
アメリカ「日本も変人だなぁ、」
日本(は、、、?)
ぼーと変な事を考えていると、いきなりアメリカサンはどんでもない事を言い出しました。
アメリカ「気になっていたんだが、、、国の化身なのになんで仕事をするんだ?」
なんだ、、、そんな事か。人種的な意味かと思い、一瞬私の血糖値は上がりました。でも違う事に納得がいくと、私はアメリカサンの問いに答えをあげました。
日本「そうですねぇ、、、義務とゆうか、仕方がなくやっている感じですかね、、、。」
最近思う本心を言うと、アメリカサンは「全部任せばいいじゃねぇの?」とアメリカサンらしい提案をして来ました。
でも、、、そうですね。一度全てを捨てて、一からやり直せられたら、、、。
国の化身じゃなければ。もっとあの青春を____
ッは、、、ダメです‼︎転生系アニメの見過ぎです‼︎そんなのあり得ません‼︎
私は首をブルブルと左右に振りました。
そしてアメリカサンは途中の駅で別れて私は会社へ直通します。
朝を通過する電車から見る景色はいつもと変わりません。五十メートル越えのビルが立ち並ぶ。東京の風景。遠くには作り途中の高層ビルや大きな看板が山にように連なっている。
そんな、なんの変哲もない景色から視線を外し、自分がいる車両内に目を向ました。
スマホで何か語り合っている通学途中の者。
本を片手にドアに寄りかかる者。
まだ社会と言うものを知らない幼子。
____私にもこんな時代がありましたっけ、、、?
何千年前の記憶を辿っても蜘蛛の糸で全く思い出せません。国の化身と言えども記憶は薄れあせていくモノなのです。
純粋で無邪気なあの頃。
日本「あの春を返して。」
ようやく会社に着くと朝から色んな疲れが出ました。
よれよれ、ながらも自分の机に座りパソコンに電源を入れる。
日本「えっと、、、今日の予定はと、、、。」
社員A「すみません。祖国さん。ドイツさんとイタリアさんから日本さん宛に書類が来ているのですが、手違いにより誤字があるようで、、、シュレッターに掛けといてくれませんか?」
日本「、、、あっはい。ありがとうございます。」
社員A「すみません。こちらは立て込んでおり、、、。」
日本「いえいえ!大丈夫ですよ。」
そう二枚の書類を受け取ると軽くため息をつきました。
なぜ私がこんな事を、、、。
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コッ、、、クソッ、、、コッカ、、、、、、
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日本「、、、いや。仕方がありませんね。」
先方にも事情があるのでしょう。
ふと何気なく文字がぎっしりと詰まれたA4紙を見るとなんだか懐かしくなりました。
そして無意識的に手が動いていて、気づけば紙飛行機が完成してしまいました。
日本「、、、なんででしょうかねぇ、、、?」
自分で作った紙飛行機を見るとなぜだか南国の風景が蘇る。
南国
島
泊地
パラオ
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パラオ『ナイチ‼︎ありがとう‼︎』
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ふとパラオの笑顔が過ぎる。でもその顔は私に見せないような明るい笑顔でした。
ナイチ。
それはきっと私の事ではない。 他の誰か。
誰だ?
分からないのに、、、凄く、、、その日常が愛おしくなる。
もう一度たりとも過去になんか戻れないのに、、、、
日本「、、、ダメですねぇ、仕事に集中しないと‼︎」
そして私は邪魔なモノを振り解き、目の前の仕事に取り掛かりました。
時刻:午後05:00
日本「有休、取りましょうかねぇ、、、。」
既に何本かエナドリを飲んでいる私はそんな事を言ってしまう。
どうしようもない苦しさと心の隙間。
パーツは揃っているのにハマらないパズルのような感じが付き纏う。
日本「、、、時には引き際も大切と言います。」
最悪、生活保護金という都合のいいオカネがあります。それでしばらく休みを取らせて頂きましょう。
そうですよ。前からこうしとけば良かった。アメリカサンの言う通り、国の化身である私が働かなくっても____
でもそうすると、誰かに怒られそう、呪われそう、、、、責められそう。
誰が?
日本「、、、いえ、一度決めた事です。背に腹は変えられません。」
上司にこの事を伝え、しばらく休みを取らせて頂きました。
そうだ、どうせならいつもと違う避暑地へ行きましょう。いつもは長野サンの軽井沢などですが久しぶりに関西の方にも行ってみましょうか‼︎
謎のワクワク感を胸に家へ直通の道を歩く。
そしてドアの目の前に立った。スーツのポケットから鍵を取り出し、鍵穴に刺す。
、、、あれ?空いている、、、?
日本「えっ、、、空き巣?」
怖くなった私は恐る恐る家のドアを開きました。
____知らない靴。さらに奥から不気味な声が聞こえて来ました。それでも私は震えた足で家に入り込む。いつもの廊下が謎に長く感じられた。
そしてようやくリビングへ辿り着いた___
アメリカ「あ〜クソッ‼︎なんで一着にならないだよ‼︎」
なんと、そこにいたのはアメリカサンでした。ソファに大胆に腰掛け、私がご褒美として取っといた茶菓子を頬張っている。テレビには競馬の中継が映っていました。
アメリカ「oh!Japan邪魔してるぜ‼︎」
日本「は?、、、なんで居て、、、。」
アメリカ「お前も無防備だなぁ鍵空いてたぞ!」
そう言えば朝出る時鍵を閉め忘れたような。でも、、、それでも、、、。遂に溜まっていたモノが吹き出した。
日本「ちょっとアメリカサン‼︎勝手にヒトの家に入り込むのは不法侵入です‼︎」
アメリカ「大丈夫!ロサンゼルスでは日常茶飯事だぜ‼︎」
日本「ここは日本国です‼︎入国する前に日本国憲法読んできて下さい‼︎‼︎」
キレた私に怯んだのか流石にアメリカサンは少し引き気味で頷いてくれました。
アメリカ(Japan怖ぇ、、、)
呆れて私の口からため息が漏れ出す。
、、、さて。”アノ場所“は今どうなっているか分かりませんからね。今からでも出発の準備しないと。そして私は押し入れの奥からスーツケースを持ち出しました。
アメリカサンは不思議そうに首を傾げる。
アメリカ「どこか行くのか日本?」
日本「えぇちょっとね。夜の新幹線に乗らなければ明日の朝方につかないでしょうから。」
アメリカ「えっちょ、今日ホテルの予約全キャン切って日本の家に泊まろうとしてたんだが⁉︎困るよ‼︎」
え〜、、、嘘でしょこの方。無許可でヒトの家で泊まろうとしている⁉︎
___いや待てよ。上手い事使えるかもしれません。
日本「ではアメリカサン、手伝って欲しい事があるんです。それができればご自由にどうぞ。」
アメリカ「えっそれだけ?、、、、、まぁなんでも手伝うぜ‼︎」
よし釣れた。
そして私達は旅支度を済ませ東京をでました。
新幹線に乗り換えると東京の輪郭が見える。夜に輝く光はもう見慣れてしまったモノでした。
小さい頃は夜が怖くて怖くて仕方が無かったのに。そんな懐かしい感覚を思い出すと、黒く塗りつぶされた記憶が隅から出てくる。思い出したいのにこのまま闇へ葬りたいような、、、
ふと向かい側に座るアメリカサンを見ると、観光して買ったのでしょうか?面白いアイマスクをつけてぐっすりと寝ていました。
そう言えばアメリカサンは朝から観光に来ていたんですよね。それからまたどこかへ行くって、ちょっと無理をさせてしまいましたでしょうか?
、、、私も明日頑張らなくてはならない。
偶々旅支度をしていた時に押し入れから出て来た御守り。そっと握り締め私は眠りにつきました。コレがこの心のパズルをハメてくれるピースだと思って。
行き先は
『旧軍都 広島』
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輝いていた日々。
川で水を汲んだり、一日中虫籠をもって探検したり。
時には港で一本釣りをしたり。
短パン小僧で
沢山迷惑をかけていた。
それでも次の日が待ちきれない程に楽しくて、
?「おおきくなりたい‼︎」
とだけ思えていた、
あの頃に戻りたい。
あの水平線に輝く夕焼けも
あの子の笑顔も
あの見知らぬ世界も
夜の怖さも
?「わすれてしまったの?」
日本「、、、くだらない。」
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アメリカ「おい!Japan‼︎起きろ!」
日本「ハッ、、、。」
目を覚ますと、ほぼゼロ距離にアメリカサンの顔がありました。妙に呼吸は荒れ、ヤケに懐かしさと焦燥感が抜けきれない。
アメリカ「凄いうなされていたが大丈夫か?」
日本「えぇ、まぁ、はい、、、」
コノ悪夢で気がついた。
多分私は
子供だったあの頃が恋しくて堪らないんだ。
愛おしい程に気色悪くて嫌いなんだ。
きっとこの心の溝はその過去の出来事に囚われているのだ。
何となく、解決に一歩進めたような気がします。
新幹線から降り、電車に乗り換えると段々と風景がまた違って来ました。和と洋が重なる街並み。アメリカサンも気に入ったようでサングラス越しに笑顔が伝わって来ました。
しばらくすると私達は『呉駅』で降りました。
日本「あっ広島サン!」
広島「わっ祖国サンじゃないの‼︎」
日本「こんちは。」
アメリカ「、、、どうも。」
駅のホームにいたのはいつもと少し違う服装をした広島サンでした。
広島「どうしよった?いきなりコッチに来るなんて。」
日本「少しの間、休暇を貰ったのです。広島サンはなぜ、、、?」
広島「小遣い稼ぎじゃ。じゃけぇここで駅員の仕事して働かせてもろてる。」
そうゆうと広島サンは帽子を深々と被り直しました。よく見ると確かに駅の帽子だ。
日本「あの広島サン。軽自動車を一台貸して頂いてもよろしいでしょうか?」
広島「?、、、えぇよ。丁度そこにわしの置いてあるから、使ってぃ!」
日本「ありがとうございます。」
指を刺された方向を見ると、ちゃんとそこに軽自動車が一台ありました。
そして私達はもう一度広島サンにお礼をして、乗り込みました。
広島「、、、。」
エンジンを起動してまた出発しました。ふとアメリカサンに目を向ける。なんだか顔が色んな方向を向いて落ち着きが無いようです。未踏の地だからでしょうか?
日本「アメリカサンどうかしましたか?」
アメリカ「いやぁ結構前にここに来た事あるような、、、。」
椅子に肘を掛けて、通り過ぎる青と緑の背景にアメリカサンの顔は引きつっていました。
しばらく経つといつの間にか都会の道路から山道へと変わっていました。
アメリカ「そういや俺は何を手伝えばいいんだ。」
ふと何かに気がついたようにアメリカサンはこちらに視線を寄せて来ました。そうですねそろそろバラした方が良さそうです。
日本「行く先はほぼ勘で行っているので分かりませんが」
アメリカ「勘⁉︎」
予想通りにアメリカサンは驚いた口調で言いました。
日本「80年、、、もしかすると100年近く一度も行かなかった別居がありまして。相当古くなっていると思うのでその掃除の手伝いをアメリカサンにお願いしたいのです。
アメリカサ「え〜、、、買い換えればいいのに。」
アメリカサンは口を尖らせて言いました。私は少しの申し訳なさを覚えつつ走り続けました。
またしばらくすると道路はコンクリートではなく押し固められた土になって来ました。高い木の木漏れ日の光を頼りに道を進んでいく。
懐かしいような。訪れ無い方がいいような。そんな感じが一層強まる。 今ではもう、なぜこんな場所に別居があるのか分からないのに。
途中に小さな祠や神社。墓場・大きい穴を通り過ぎ、行き止まりに到着しました。
そこが目指していた家。思ったよりも外見は傷んで無いようです。
アメリカサン「ここかぁ、、、観光で行った場所とはまた違うログハウスだな‼︎」
日本「ちょっと違いますけど。そんなもんです。」
ワクワクして子供の如くはしゃぐアメリカサン。私はまるで親ですね。
___しかし前にもこんな経験したような。気のせいですね!
中に進んでいくと25畳くらいありそうな居間とレールから外れた帯戸。今私が立っている所は竈門と薪があり恐らく台所でしょう。
日本「アメリカサン凄いですよ。結構掃除が楽そうです!、、、アメリカサン?」
アメリカサンが一向に中に入ろうとしてこない。どうしたのでしょう?私は思い切って聞いてみました。そしたら___
アメリカ「いや、そのな、、汚いじゃん。」
日本「はッ?」
アメリカ「いやなんか居そうな気もするし、、、、怖いんだ。」
世界の覇権国であろうお方がまさか、幽霊や汚物を嫌うとは。性格からすれば納得しますが。
コレじゃ手伝いに来た意味がない!私は肩から溜め息をつきました。私も疲れているんですよ。
日本「えぇとそれでは外の農具を捨てて来てくれませんか?使えそうな文化財は下山して広島サンの所へ。」
アメリカ「NOUGU?あぁクワとか木の箱とかの奴か!」
私が頷くと早速行動に移してくれました。
さて私も中を綺麗にしなくては。そう思い腕をまくり上げ、居間に靴で上がりました。足が着いたところで木の床が軋む音がする。
その瞬間に思い出す。懐かしいくて、気色の悪い貴方の体温。この感情は一体、、、。
日本「、、、。」
アメリカ「あヤベッ、ヤッチャタ、、、、、Japan‼︎何コレーー‼︎」
呆然としているとアメリカサンの呼ぶ声がして来ました。直ぐに現実に戻され、慌ててアメリカサンに駆け寄る。外でアメリカサンが何かを指で指している。かなり焦った様子でした。
ゆっくり近づき、アメリカサンの横に立つ。
壁が打ち壊されていた。
私は未だかつてない程に冷淡にアメリカを見つける。彼は青ざめて必死に挽回しようとする。
アメリカ「コレは違うんだ‼︎その農具を運ぼうとした時当たっちゃって、 そしたら刃物が出るなんて思わないだろ‼︎」
___刃物?眉を寄せた私はもう一度事件現場を見る。壊れた壁の瓦礫から刀のようなモノが出ている。
後の話によると、アメリカサンは銃刀法違反をかけられたくなく、だから必死にもがいたようです。本当に日本国憲法を読むとは。でも壁をぶち破った事には罪悪感を持って居ないようですね。
日本「はぁ、ではアメリカサンはこの木材と同じ物と工具を買って来て下さい。後処理は私がやるので。」
アメリカ「すまねぇな‼︎」
さてと。どうしましょか?取り敢えずこの刀は警察に任せて。
そうして、ひょいと持ち上げるとまた、、、懐かしい感覚に陥る。それは今までも日々よりも一層に強まる。
それによくみたらコレは日本刀よりも軍刀に似ているような気がします。
菊の紋様、特徴的な鍔。 そして微かに感じる血の匂い。
日本「気色悪い、、、。」
顔を顰めた私はそのまま置きました。またアメリカサンに持って行って貰おう。それでは私は奥の蔵を掃除しましょうか。
固い帯戸を開けると、中と外での空気が一変して居ました。冷たい空気が足首に当たる。躊躇いつつも中に入ると、藁箱や大きめの木箱が綺麗にズラリと並んでいました。
しかし流石は何十年も放置しただけあって埃や劣化が激しいようです。
、、、まて、数十年前はこんなにモノが無かった気がする。
日本「は、、、ハハ、、、。」
と取り敢えず。箱の中を整理しましょうか。そして木箱や何やらを外に運び出しました。新しい新聞紙を下に引き掃除がしやすいようにする。
暗くて見えませんでしたが、箱には『大正十五年』と書かれていました。しかし過半数は劣化して読めるどころではありません。
私は軍手を装備し、箱の蓋を開けました。その瞬間埃と木屑の匂いに襲われる。間がたち、ようやく箱の中身を確認するとある程度の物は新聞紙で包んでありました。
黄色く劣化した新聞紙をよく見ると
日本「昭和十八年、、、。」
絶賛戦時中だ。
新聞紙で包んであった物は新品かのような茶碗。焦りと不安が加速しているのが自分でも分かる。
他の物も手に取ってみる。
日本「ッ日記、、、?」
今の時代のホチキスやノリで止めた物ではない、昔ながらの糸で縫われた本。表紙には廃れた文字で日記と書かれてある。著者名はよく見えません。
日記の中盤を開くと、びっしりと文字、文字、文字。美しい特徴的な達筆。現代の私では理解し難い日本語もありました。
『享年:二十四歳 没年:昭和二十年卯月七日 坊ノ岬沖 戰死』
日本(卯月七日って、、、四月、、、今日じゃないですか、、、それに没年って、、、)
四月七日 午後2時23分 卯月七日 午後二時二十三分
それで確信した。ここは私ではない別の誰かが住んでいた。ずっと放置されていたのに異様に外観は綺麗で、みたこともない私物。更に人が居た痕跡が多数ある。
でもどうしてでしょう?埋まらない心の隙間のピースが少しだけ合わさったのは?
きっと此処には大事な何かがある。
実は私は記憶の劣化が他の国の化身よりも早い。
まるで何かの代償の対価ような物。
また他の品も手に取る。新聞紙、掛け軸、墨塗りの本、手紙、小袋に包まれた銭。
新聞紙を広げると思ったよりも小さく内容もコンパクトでした。
書いてあったのは『艦内新聞』旧帝国海軍の新聞紙。
リアリティに怯えつつも、その記憶に残っていない物に惹かれる。
『昭和十七年ーーー日ーー勝って兜の緒を絞めよ。』
胸の鼓動が跳ね上がる。過去を覗くだけでバクバクと心臓は焦りだす。
力が抜けた手で他の小袋に入った銭に触れる。暗い箱から現れたそれは蘇ったようにキラキラと光ました。
手にそっと乗せると、硬い質感に焦げた跡に胸が痛くなる。昭和二十四年の五円玉。戦後恐慌ですか。
アメリカ「なんだそれ?」
日本「わっ‼︎」
いきなり真横に立ったアメリカサンに思わず間抜けな声をあげてしまいました。油断していたもので一気に力が抜けていく。
アメリカ「それ、、、マネーか?」
日本「あぁ、、、えっとそうですね。結構前の。価格相場だと確か、コレだけでも約3000円位になりますね。」
するといきなりアメリカサンは箱の中身をまさぐり始めました。私は遂に気が狂ったかと思い引き気味に問います。
アメリカ「いや!他にも有るかなって。」
日本「この金の亡者め。」
ますますこの人への信頼は堕落して行きますね。やっぱりこの人を連れてこない方が良かったでしょうか?
その後、ある程度の貴重品や資料などをまとめて終わりました。ただこの大きな失われた思い出はどうも埋まりません。
私はこの感情を後にし、まずは中の掃除をする事にしました。そこは相変わらずススと劣化が激しい。アメリカサンも上手く使いたいので縁側から掃除しましょうか。
帯戸と障子を外し、古びた紙を貼り替える。
日本「アメリカサンは縁側の廊下をお願いします。私は中をやりますので。」
アメリカサン「靴で入っていいのか?」
日本「ご自由に。」
中は畳が敷かれており、小さなテーブル。確か当時はちゃぶ台と言っていたんでしたっけ?
畳を踏み込むと廊下の板とは違い足が沈み込みました。元々硬い畳は多く踏み込まないとこうならない。確か剣道をやっている鹿児島サンからそう聞いた気がします。
って事はここに住んでいた人達は剣道や喧嘩でもしていたのでしょうか?
ここにいると思い出せないのに、凄くあの頃に戻りたくなる。何でもできた、ただ大きくなる事だけを夢見てたあの子供の頃に。
日本「、、、どうせならコレも貼り替えますか。」
そうして畳を持ち上げました。
四月七日午後5時30分
日本「はぁ、、、っ、、、疲れた、、、。」
アメリカ「Thanks for your hard work.観光で買ったお茶いるか?」
日本「、、、ありがとうございます。」
家の中もだいぶ綺麗になり、ひと段落がつきました。思ったよりも時間がかかり外はもう焼けた空になっていました。
優しい風が頬を撫でる。縁側全開で外を眺められるのはこんな田舎ならではなんでしょうね。
私はアメリカサンがくれた茶菓子をとり口に含みました。バニラの味が口いっぱいに染み込む。
けれどもアメリカサンは縁側に腰をかけたまま、どこか遠い先を見つめていました。
彼が食い物にありつかないなんて、有るのですね。
アメリカ「、、、あぁ。」
日本「?、、、、どうかしましたか?」
アメリカ「そうだな、、、変わっちゃったんだな。」
日本「‼︎」
え、、、?
日本「いつか、この場所に?」
アメリカ「あーーそう多分。ここは結構思入れが強いのからかもしれないな。80年くらい前にな来た事があるような感じがして。でもあの時とは変わっちゃったんだなって。」
アメリカサンは視線を変えず、暖かい夕焼けの水平線を見つめていました。そのブルーライトの瞳に刻み込むように。
何だか今のアメリカサンは私ではなく他の誰かに気を向けている気がして、心がキュッと締め付けられました。擦り減っていく感情がつっかえて苦しくなっていく。
どうしてこんなにも、寂しいのだろう?
日本「さてもう寝ましょうか。」
畳に敷いたお布団は昼間干しておいたお陰で柔らかい太陽の匂いがします。新しく変えた畳の独特な匂いと、蔵から出てきたブタの蚊取り線香が良い雰囲気を出している。
あーー‼︎もっと前からこういう生活してみたかった‼︎
いつの間にか周りは洋風や都会に合わせられて、こういう哀愁漂う懐かしの田舎は私の胸に刺さります。私は畳をなぞらえながらそう思いました。
アメリカサンも初めの寝巻きの感触に興奮気味です。正直、埃が舞うのでやめて欲しい。
日本「電気、消しますね。」
アメリカ「おう‼︎」
居間の電気を消しても、少し明るいですね。月の光が縁側から差し掛かっている。都会にいたから気づかなかったけれども、夜ってこんなに明るいのですね。
アメリカ「、、、なぁ」
日本「どうしましたか?」
目を閉じかけていたのですが、アメリカサン。けれども何となく震えた声なので聞いてやる事にしました。
アメリカ「障子に、、、目が、、、」
日本「?」
片目を開けて見てみても何もいません。きっと障子のシミやらが顔に見える現象でしょう、と言うとアメリカサンは不服そうに声をあげて眠りに着きました。
私も寝なければ、
昨日のような悪夢を見ない事を祈って。
?「、、、。」
?「地獄で待っていますよ、祖國様。」
日本「ハッ。」
誰だ?今のは誰だ、横はアメリカ。
反発的に体は起き上がっており、声の主による恐怖に呼吸が荒れている。頬に汗が流れる。
天井、戸間、後ろ、縁側を見渡した所で、
白い何かが座っている。
日本「お前は、、、誰だ?」
?「、、、。」
応えようとはしない。そいつは良く見えなかったが、白髪で鼠色の死装服を身に纏っている。
?『、、、、、呪われているぞ』
日本「?、、、何ふざけた事言っているんだ、爺さん、、、。」
その一瞬、風がサァァとなびく、そいつの髪の隙間から覗かれたのは、
私と同じ赫い目だった。
日本「え、」
呆然と止まっていると、そいつはどこかへ飛びだとうとしている。
日本「ッ待て‼︎、、、クソッ、、、。」
このままではいけない。寝巻きを急いで脱ぎ出し、適当に着たスーツで追う。
そいつはいつのまにか人魂?に変わっていた。
一体どこへ向かっているんだ?山中を抜け、どんどん森の奥へ奥へと進んでいく。木々の揺らめきが奥へと誘うように。不気味な感触がした。
私は既に肩で呼吸をしていましたが、見逃す訳にはいかない。足元のぬかるみに取られそうになりながらも、走り続けた 。幸いな事に月の明かりと懐中電灯を持ってきて良かった。
黒く塗りつぶされた山闇を進み往くと、何かに足がハマり片足が動かなくなった。いや
ハマると言うより掴まれている。そういう妄想をすると背筋が凍った。想像してはいけない後ろにナニがいるかなんて。
頬を伝い顎から落ちていく汗にベッタリと恐怖心が塗られる。
あぁ逃げ出したい、進むにつれて知らない森になっていく。でも____追いかけなければ。
追いかけなければいけない。
人魂を追い、遂にひらけた場所へ出ると、人魂は鳥居を潜り、消えてしまいました。
日本(そこに、、、いるのか、、、?)
そう思い、また、一歩一歩、進めるとそこは今朝見た神社が鎮座している。けれど今朝見た物とは別物ように吸い寄せられる雰囲気が漂う。生身の人間である私にも感じる、得体の知れないモノが漂っている。
古びた柱。錆びた本坪鈴。動き出しそうな狛犬。
懐中電灯に照らされた所から何かが出てくる予感までした。
じっっっと奥の境内と見つめ合う。
ナニカと目があった。
引き返さなければ。
恐怖に急かされ
足を後ろへ下がらせた時
何かに当たる。
後ろを振り返ると、
笑った三日月が紅く染まっていた。
その一瞬で体が絞まる。
味方などいない。
私の手はガタガタと震え、
力が抜けなくライトの焦点が合わなくなる。
思わず後退りをすると、
額を掠めるドロドロとした感覚に、
体の血液が不規則に流れる。
自分の心臓音がバクバクと響き渡る。
、、、嫌な気配が背後からする
後ろにいるのは化け物だ。
そう確信してしまったが最期。
ギュゥッと頭が押しつけられるように圧がかかり、
目の前はドス暗く渦を巻く。
耳は狂い、カチカチと秒針が
止まらない
たまらない
程に
処理が追いつけない。
声も発せない苦しみが全身を覆う。
地に着いた手で暴れても離れない、理解不能、理解不能
なおさら理解不能、理解不能
な重圧がのしかかる
そこで折れたように意識がぽつんと途切れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
陸「、、、。」
日本「ウグッ、、、ッっ、、、、、、。」
柔らかい風の香りと、寝苦しさで目が覚める。重い瞳を開けると
陸「お前、大丈夫か?」
知らない人がいて
気づいたら、過去に戻っていた。
日本「え。」
昭和五年 卯月八日
END
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生存確認。ご視聴いただきありがとうございます。長くなり申し訳ありません。
皆さんは「輝いていた過去に戻りたい。」「黒く錆びついた過去が気色悪い。」と思った事はないでしょうか?
今回のテーマは「戻りたいと思う美しく錆びついた過去」でした。
今回はコレで終わりですが、好評だったらコノ続きを書いてみます。しかし続きはテーマも変わりますし、小説よりも大説になっちゃいます、、、。
坊ノ岬や出てきた日付は史実です。
リクエスト募集中です。カンヒュでも、都道府県でも、時代でも、サッコーイ‼︎
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