『おなじ夢』
注意書きは第一話をご覧下さい。
ダッダッダッダッ
水「はぁっはぁっ…ッッ!!」
ガラガラッッ!!
水「いふくんッッ゙!!」
水「事故にあったってッ…だいじょう…」
青「あんた…誰や…?」
水「……え……?」
なぜ、こうなってしまったんだろうか。
数年前
スイミングスクール
コーチ「いやぁ、2人は今日も記録更新だ!流石だな!」
水「だってだって、2人でおっきい大会に出て優勝するのが夢だし!」
青「今のうちにたくさん結果残すんや!」
コーチ「そーかそーか♪2人ならきっと出来るぞ〜!♪」
僕たちは幼い頃から水泳を習ってた。
お互い実力がすごくて、いつしか2人で大きな大会で優勝するのが夢になっていた。
数年経った今でも、その夢は変わってない
ピッ
青「お、ほとけまたタイム早なったな」
水「ほんと!?✨やったー♪」
お互いいつものスイミングスクールで、特別クラスで練習してた。
今日はいふくんが用事があって、スクールに来れなかった。
水(いふくんがいないと暇だな〜)
なんて、呑気に思いながら泳いでいると、コーチが慌てた様子でこっちに来た。
コーチ「ほとけッ!いふが…いふが…ッ」
コーチ「事故にあったって…」
水「……え?」
ダッダッダッ
水「はぁッ…はぁッ」
気がつけば無我夢中に走ってた。
どうやら飲酒運転の車に追突されたらしい。
当たったところが悪かったらしく、なんとか一命を取り留めたが、まだ目は覚めていないらしい。
ガラガラ
水「いふくんッッ゙!!」
そこから、今に至る。
僕が病院に着いた時には、いふくんは目を覚ましていた。
だけど
青「あんた…誰や…?」
僕との思い出は忘れちゃったみたい。
水「………僕の名前は…稲荷ほとけ」
水「その…よろしくね」
青母「ほとけちゃんっ……」
青「…よろしく」
その後いふくんのお母さんも来た。
だけど、いふくんは自分のお母さんのことははっきり覚えていた。
どうやら僕だけを忘れてしまったみたいだ。
水「僕はね、いふくんと同じスイミングスクールに通ってて、コーチから連絡があって来てみたんだ」
水「ごめんね、ほとんど初対面なのにあんな馴れ馴れしくしちゃって」
青「いや、別に……ありがとなわざわざ来てくれて」
水「…」
半分本当で、半分嘘。
僕のことは、もう幼なじみでもなんでもない赤の他人。
なんで……こうなっちゃったのかなぁッ……
水「えと、その……よかったね、身体が麻痺しなくて」
青「せやなぁ、もしかしたら水泳も出来なくなってたかもしれんし、ほんと医者って凄いんやな」
水「そう、だね…ッ」
水「……僕、そろそろ帰るねッ」
水「いふくんのお母さんも、急に来ちゃってすみませんでした」
水「それじゃ、ばいばい」
青「またな」
青母「……もしよかったら、また来てね」
水「ッ……はい」ニコッ
水「…ポロッ」
水「ッ……ぅ゙ぁっ……ポロポロ」
もう我慢出来なかった。
大切な人に、今までの思い出を全て忘れられるなんて考えもしなかった。
もう、一緒に夢を追いかけることも出来ない。
水「……会いに行くの……辛いなぁッ……ポロポロ」
それから僕は、会いに行こうにも行けなくて、結局あれから一回もお見舞いに行かなかった。
通うスイミングスクールも変えた。
なんだか、自分自ら避けるようにした。
なぜ、そうしたかは自分でもわからない。
きっと、もう無理だと思ったんだ。
僕は、離れた方がいいと思ったんだ。
数年後
水「…ここが……」
あれからまた数年経って、僕も大人になった。
いふくんと離れる選択をして、会わなくなってから結構経った今、たまに思い出す彼の姿。
元気にしてるかななんて、自分自ら離れたくせになにを後悔してるんだか。
今日は自分の夢を叶える日。
ずっと夢だった日本水泳大会に出られる。
ここで夢を叶えて
水「僕の…水泳の歴史を終わらせる」
この大会は男女別で、先に男子がやる。
その間女子は控え室で大会を見たり、それぞれ準備をしたりする。
僕はやること全てを終わらせて中継を見ていた。
水(あ、丁度決勝じゃん……)
実況『ついに来ました男子決勝!注目は猫宮いふ選手です!』
水「!」
“猫宮いふ”。その言葉を聞いて、僕はすぐさま反応した。
水(……ほんとに、いふくんだ…)
画面を見ると、あの頃と少し変わった、大人になったいふくんがいた。
でも、僕が知ってるいふくんに間違いない。
水(……そうだよね。あの人の実力なら、ここにいて当然)
だけどこの決勝、出る人はみんな強者。
知らない人なんてあんまりいないってくらい知名度が高い人しかいない。
水「…」ギュッ←手を握る
だけど、僕は無意識に彼を応援していた。
音声『three、two、one…ピーッ!!』
『ザバッ』
合図とともに一斉に泳ぎ始める。
実況『今の所猫宮選手が1位です!!』
実況『…おーっと?〇〇選手が抜かしそう…!!』
水(うわ〜…すごく接戦…)
水「いふくん頑張れっ…!」ボソッ
実況『さぁラストスパート!猫宮選手このままいけるか!?』
『ピーッ!!』
実況『いったー!!猫宮選手が優勝を決めました!!!』
水「!」
画面の向こうで喜んでいるいふくんは、とても輝いていた。
記者『それでは、猫宮選手にインタビューです』
記者『猫宮選手、優勝おめでとうございます!』
青『ありがとうございます』
記者『今のお気持ちを聞かせてください!✨』
青『そうですね…』
青『実は数年前事故にあってまして、その時、1部記憶障害になってたんです』
水「!」
インタビューでいふくんが話していたのはあの時の事だった。
青『最近になってわかったんです。忘れてた人は、絶対忘れちゃいけない人だったんだって』
青『その人と、この大会でお互い優勝することを夢に頑張ってきたんですけど』
青『その事故が原因で、その人とも疎遠になってしまって… 』
水「……いふくん…」
どうやら彼は、記憶を取り戻していたみたいだった。
スタッフ「稲荷選手、お時間です」
水「あ、はいっ!」タッ
もう少し聞いていたかったが時間になってしまった。
だけど、いふくんが夢を叶えた今、僕は
“2人”の夢を叶えなきゃいけない。
青『__なので、その人に届いてたらいいなと思います』
記者『そうだったんですね…!きっとその人にも届いてますよ!』
青『…ですね♪』
水「スー……ハー……」
コーチ「大丈夫よ。いつも通りいけば、優勝できる」
水「…うん、頑張る」
コーチ「さっ、身体が硬くなってるわよ」
水「うぅ……緊張が…」
コーチ「はいリラックスリラックス〜♪」
水「あははっ」
あれから僕は全力で泳いで決勝まで来た。
だけど、周りは僕よりタイムが早い人しかいない。
周りから見れば僕が勝つことは不可能に近い。
会場にいる人も、僕のファンはあまりいない。
だけど僕は、夢を叶えるために、不可能を可能にする。
音声「__three、two、one…ピーッ!!」
ザバッ
バシャバシャ
水「っ…!!」
ついに始まった決勝戦。ここでの失敗は許されない。
目の前のことだけに集中して、泳ぐだけ。
ほかの事は考えない。考えてはいけない。
水(残り100メートル…!!)
ここで、横を向いてほかの選手はどこまで泳いでるのか見ようとしたがやめた。
そんなことしたら絶対に負ける気がしたから。
前にある壁に向かって泳ぎまくった。
水(__タッチ!!)ザバッ
水「はぁっはぁっ…」
「ウォーッ!!!」
水 ビクッ
水(け、結果は…)
選手1「おめでとう稲荷さん!」
水「へ…」
選手2「めっちゃ早かった〜!!」
選手3「負けたのは悔しいけど、優勝おめでとう!!」
水「えっ、、えっ!?」
周りを見てなくて何位かわからなかったが、優勝したみたいだった。
コーチ「ほとけ〜!!✨」ガバッ
水「うわっ!?」
コーチ「おめでとう、おめでとう!!凄い泳ぎだったわよ!!」
水「えへへっ、ありがとう♪」
記者「それでは、稲荷選手にインタビューです」
記者「優勝おめでとうございます!」
水「あ、ありがとうございます…!」
記者「今のお気持ちを聞かせてください!」
いふくんと同じところに立って、同じように質問されてる…
…なんだか夢みたい…♪
水「…そう、ですね…」
水「私は昔、とある男の子とこの大会でお互い優勝する約束をしました」
水「その子とは疎遠になってたんですけど」
水「…その約束を今日叶えられたので」
水「とっても嬉しい気持ちです…♪」
記者「そ、それって…!!」
水「この先は、ノーコメントで♪」ニコッ
記者 キュンッ
記者(やだこの子かわいいッッ!!)
水「…それと、私は」
水「この大会を持ちまして、引退します」
記者「…えぇッッ!?」
記者「そ、それはなぜですか!?」
水「夢を無事叶えることが出来ましたし、そろそろ区切りをつけた方がいいと思いまして 」
水「今、世の中の子はいろんな事にチャレンジをしています」
水「私も、この機会にいろんな事に取り組んでみようと思ったので♪」
記者「…そうなんですね…♪」
記者「応援してます♪」
水「ありがとうございます♪」
控え室にて
水「__あ、すごいコメント来てる…」←スマホ見てる
水「……ふふっ、引退悲しい、か…」
そんなこと思ってくれる人がいるなんて、僕ってすごく恵まれてるんだなぁ…
コンコンッ
水「…?はい、どうぞー」
ガチャッ
青「…こ、こんちには」
水「!」
訪ねてきたのはいふくんだった。
水「…ね、猫宮選手、優勝おめでとうございます…!♪」
苗字呼びなんて、すごく堅苦しいけど、今の関係上、こうするしかなかった。
青「……もう、今までみたく呼んでくれへんの?」
青「せっかく会えたんに…」
水「!」
嘘…ほんとに…
水「……僕のこと…思い出してくれたの…?」
青「……あぁッ、ハッキリとな」
水「!ポロッ 」
水「よかったッ……ほんとにッ……ポロポロ」
青「…」ギュッ
水「!」
青「ごめんな…今まで…辛かったよなッ…」
青「ほとけが、インタビューの時にああ言ってくれて、全部、全部思い出せたわ」
水「ごめんなさいッ……僕ッ、いふくんと別れる選択しちゃって……ポロポロ」
青「なんとも思ってへんよ。きっと俺も、同じことすると思うし 」
青「それに…また会えたしな」ニコッ
水「…うんっ、そうだね♪」
青「ほら、泣いたら可愛い顔が台無しやで〜?」
水「な”っ…/////」
青「ふっw顔真っ赤w」
水「う、うるさい…////」
青「…もう忘れないって約束する。だから、もう俺から離れんといてくれるか?」
水「うんッ…もちろん…!」
数年後
テレビの人『続いてのニュースです』
テレビの人『大人気水泳選手の猫宮いふ選手が結婚したことを発表しました』
テレビの人『相手は、元水泳選手の稲荷ほとけさんとの事です』
青「最近このニュースばっかやな」
水「しょうがないじゃん、芸能人たるもの、こういうのは報道されるでしょ」
青「せやな〜…まあ、3日くらいで落ち着くやろうけど」
青「ん”〜…」ポスッ←水によしかかる
水「わっ…もう、甘えん坊さんだな〜w//」
青「…だって、ほんとはずっと好きやったもん…甘えたってええやんか、/」
水「忘れたのはそっちですけど」
青「う”…」
青「これからは絶対忘れへんもん」チュッ
水「んっ…///」
青「忘れた分、これから取り返そうな」
水「…うんっ…!♪」
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