テラーノベル
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リディアを自室へと送り届けるた後、フレデリックは「これで良かったのだ」と何度も自分に言い聞かせていた。
部屋に鍵をかけると、鬱憤を晴らすように酒へと溺れる。
アーサー、生きていてくれて嬉しい。
リディアも……これで幸せになれる。
これで、いいんだ。
離縁を告げたリディアは、瞳を潤ませていた。
余程、アーサーの無事が嬉しかったのだろう。
くそっ! なんだ、あのかわいい翡翠色の瞳は!
食べたい! ぐぬっ、いかん、自分を律せねば!
だめだ! あの格好が目に焼きついて離れない!
フレデリックは酔ってリディアを襲いに行くことのないように、鍵を再度確認した後にデスクを移動して扉の前にバリケードを作る。
これくらい簡単に壊せるが、酔った自分が壊さないことを祈るしかない。
グラスにワインを注ぐと、一気にあおる。
そのうちに、グラスに注ぐのももどかしくなり、ボトル飲みを始める。
まだ、足りない。
フレデリックは、中々酔えないことに苛立ち、ワインからブランデーへと手を伸ばす。
リディア……、この2年間は辛かっだだろう。
ずっと君を見てきた。
フレデリックは、学園の頃を懐かしむように思いを馳せる。
いつも図書室で見かけていた。
何が気になるのか自分でも分からなかった。
気がついたら、目で追うようになっていた。
リディアと話すきっかけが欲しくて、わざと君のお気に入りの席に座ったんだ。
初めて声をかけた時、君の微笑みにぐっと心を掴まれた。まるで、一斉に周囲に花が咲いたように、明るく輝いて見えた。陽の光を受けた君の穏やかなブラウンの髪も、柔らかそうで触れてみたいと思った。邪な気持ちを抱いたのは事実だが、私の話に耳を傾けてくれて、気にかけてくれる君の存在が、私の心の支えだった。君を守りたい、と思ったんだ。
それからは、ずっと君の隣に座るようにした。 他の輩に見せたくなくて。
リディアの隣に相応しいのは私だと、見せつけたくて。
恥ずかしそうに笑うリディアを見ると、幸せだった。
浮かれていたんだ。
まさか、リディアがアーサーのことを好きだとは知らずに……。
あの笑顔は、私だけに向けてほしかった。
悔しかった。
あんなに側にいたのに、
君の気持ちに気付いてあげられなかったなんて。
私は愚か者だ。
リディア、アーサーはいい奴だ。
信用できる。
卒業式のあの後、何度も私にリディアに告白するよう言ってきた。
私の気持ちを知っているから、気を遣ってだろうがな。
ほんとにいい奴なんだ。
だが、遠征があんなに長引くことになるとは。
アーサーの帰りを待つリディアを想うと、胸が張り裂けそうだった。
アーサーがいなくなって、5年経過した頃、私は、これはチャンスだと思った。