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コメント
1件
あおいです、読ませていただきました……! もう、冒頭からお腹抱えて笑いました。魔王と現実の狭間で四苦八苦するルシフェルさん、めっちゃ好きです(笑)。特に「Amazonほしい物リスト」がまさか恐怖のアイテムになるとは…!配信で「やめろ!」って本気で叫ぶところ、リアルな生活保護あるあるの悲哀とギャップが絶妙すぎて。鈴木さんへの恐怖が支援物資より勝ってるって、シュールでいて切実で。バズが成功したのにむしろ窮地に陥るっていう展開、最高でした!
第3話:バズ、そして恐怖の「Amazonほしい物リスト」
翌日の昼過ぎ。
いつものようにうすら体調の悪い状態で目を覚まし、ヒビ割れたスマホの電源を入れた俺は、寝ぼけ眼をこすった。
「……は? バグか?」
カクカクの画面が、かつてないほど激しくフリーズを繰り返している。
それもそのはずだ。X(旧Twitter)の通知欄が、滝のような勢いで更新され続けているのだ。
『【放送事故】魔王ルシフェル(40代無職)、ケースワーカー鈴木に怯えながら特売のみそラーメンをすする』
そんなふざけたタイトルの切り抜き動画が、一晩でなんと150万回再生を突破していた。
コメント欄には「哀愁がエグすぎる」「ガチの闇」「魔王(物理的弱者)」「鈴木から逃げるな」といった文字が踊り狂っている。
「嘘だろ……」
昨日の同接0の悲劇から一転。俺のYouTubeチャンネルの登録者数は、たった一晩で一万人を超えていた。
ジェミニの言っていた『原価ゼロの錬金術』は、こんな想定外の形で大成功を収めてしまったらしい。
心臓がバクバクと嫌な音を立てる中、俺は震える手でポンコツPCを立ち上げ、急遽「緊急配信」の枠を取った。
ポチッ、と配信開始ボタンを押す。
その瞬間。
『うおおおおおおお!』
『ルシフェル様(40代)キターーー!』
『今日の昼飯はなんですか!』
『鈴木が見てるぞ』
待機所に群がっていた数千人の野次馬たちが、一斉にコメント欄を駆け抜けた。
画面の端に表示された同時接続数は「5,000人」。大手企業のVTuberに匹敵するような数字が、ただの四畳半のボロアパートに叩き出されている。
「ク、ククク……愚かな人間どもよ。我が魔界の瘴気(バズ)に引き寄せられ……ゲホッ! ゴホッ! ああもう、また気管に……!」
『開始10秒でむせる魔王草』
『無理すんなおっさん』
『水飲め』
ダメだ。完全にナメられている。
魔王の威厳など最初から存在しなかったかのように、リスナーたちは「限界おじさんの生態」を面白がって動物園のパンダを見るような目を向けてきている。
『おい魔王、スパチャ投げさせろ』
『金払わせろ』
『鈴木への慰謝料だ』
コメント欄に、そんな物騒な言葉が並び始めた。
俺は咳き込みながらも、フッと鼻で笑った。
「馬鹿め。俺のチャンネルは昨日作ったばかりだ。YouTubeの収益化条件である『登録者数1000人、再生時間4000時間』を満たしていないし、審査にも通っていない。貴様らがどれだけ金を投げたくても、システム上不可能なのだよ!」
そう、これこそが俺の心の余裕だった。
もしここで現金が手に入ってしまったら、役所に収入申告に行かなければならない。それは『不正受給』という名の犯罪になり、最悪の場合は保護打ち切り――つまり、ガチの死を意味する。
だが、今の俺は無敵の「収益化前」。どれだけバズろうが、現時点では一円の収入も発生しないクリーンな無職なのだ。
「フハハハ! 残念だったな! 俺は一円たりとも受け取らん! 役所への申告書(第61号様式)を書く手間が増えるだけだからな! 無駄な抵抗はやめ――」
その時だった。
コメント欄に、一つのURLが投下され、それが瞬く間にコピペされて画面を埋め尽くした。
『特定班仕事早すぎwww』
『これかwww』
『概要欄の奥底に眠ってたリンク発掘したぞ』
「……は? なんだこれ」
俺は嫌な予感がして、そのURLをクリックした。
開かれたのは、Amazonの画面。
そこに表示されていたのは、かつて俺が「いつか石油王が買ってくれないかな」という甘い妄想とともに作成し、そのまま放置していた『Amazonほしい物リスト(公開設定)』だった。
リストの中身は、特売のインスタントラーメン(みそ味)1箱、一番安いトイレットペーパー、そして『ゲーミングチェア(3万円)』。
「ま、待て。待て待て待て待て!!!」
俺は安物のマイクを両手で掴み、血相を変えて叫んだ。
「やめろ!!! それを買うなバカ野郎!!!」
『ポチった』
『みそラーメン10箱送ったぞ』
『鈴木にバレないように食えよ』
『ゲーミングチェア奢るわ』
「お前ら、分かってんのか!? これ収入(現物支給)扱いになるんだぞ! 役所にバレたらどうすんだよ! 今月の収入に入れなきゃいけないのか!? 計算が狂うだろうが!!!」
パニックに陥った俺は、魔王の設定など完全に投げ捨て、素の限界中年として絶叫した。
「三万円の椅子をもらったところで、来月の支給額から三万円引かれるだけなんだよ! 俺のトータルの手取りは一円も増えねえんだぞ!! ただ役所に提出する書類を書く手間が増えるだけじゃねえか!!」
『第61号様式wwwww』
『現物支給にガチギレする魔王』
『解像度高すぎて腹痛いwwwwww』
『ガチでキレてて草』
「笑い事じゃねえ! あいつら(役所)は一円単位で収支を合わせてくるんだぞ! 『アマゾンからの支援物資』なんて書いたら、鈴木さんが飛んでくるだろ!! 就労意欲の証明だとか言われて、本格的にハロワ送りにされるんだよ!! 頼むからこれ以上、俺のセーフティネットを脅かさないでくれ!!!」
頭を抱え、文字通り涙声で懇願する四十歳。
しかし、その必死すぎる叫びは、ネットの海において最悪の「フリ」として機能してしまった。
『金より申告の手間を嫌がる男』
『欲がなさすぎるwww』
『鈴木への恐怖>>>支援物資』
『こんなに物もらって嫌がるV初めて見たわ』
『じゃあ申告書の手間賃としてこれも受け取れ(米10kg)』
「あああああ! やめろって言ってんだろ!! 米を送るな! 計算が、端数の計算が面倒くさくなる!! そもそもこのボロアパートにそんなに荷物届いたら大家に不審がられるだろうがァァァ!!」
画面の向こうの銀髪オッドアイのイケメン魔王は、美しい顔のまま頭を抱えてのたうち回っている。
そしてその日、俺の配信は「絶対に支援してはいけない(するとガチで嫌がる)配信」として、さらなる伝説を作ることになってしまった。
終わった。
錬金術が成功しすぎたせいで、明後日あたり、この四畳半に大量のダンボールが届くことが確定した。
俺の平穏なナマポ生活が、今、完全に崩壊の危機に瀕している――。
こよい
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