テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第126話 〚何も起きなかった日〛
― 澪視点 ―
今日は、
何もなかった。
嫌な声も。
変な視線も。
胸が締めつけられる
瞬間も。
全部、
なかった。
授業。
休み時間。
放課後。
全部、
普通。
なのに。
なぜか、
覚えている。
教室の窓から見えた
空の色。
廊下の
少し冷たい空気。
階段を降りる時の、
足音。
海翔の、
隣。
近すぎも、
遠すぎもしない距離。
何も、
言わなかった。
でも。
不安も、
来なかった。
(……不思議)
今までなら。
「何もない」時間ほど、
怖かった。
次に来るものを
考えてしまって。
でも今日は。
ただ、
過ぎていく。
帰り道。
影が、
長く伸びる。
心臓は、
静か。
胸の奥に、
余計な音がない。
理由は、
分からない。
誰かが、
何かをしていた気もする。
でも。
私は、
知らない。
知らないままで、
いい。
何も起きなかった。
それだけの一日を。
なぜか。
大事に、
覚えていた。
――今日は、
ちゃんと息ができた。