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次の日ーー。
私は貰ったメモを頼りに黒崎先輩の入院している病院に行った。
日曜日の病院はシーンと静かで、暗くて寂しくて少し怖い。
黒崎先輩の入院しているのは5階。
エレベーターで5階まで行き、病室を探して行く。
512号室。
これが黒崎先輩が入院している病室。
あった!
512号室の前に立って、私は深呼吸をして、病室のドアをノックした。
「はい」
中から黒崎先輩の声が聞こえた。
ゆっくりドアを開ける。
「高原……」
個室の病室。
窓側にベッドが置いてあり、ベッドのリクライニングを上げた状態で黒崎先輩はいた。
私を見ると驚いた顔をしている。
ゆっくり病室に入る。
黒崎先輩と目を合わせることが出来ない。
少し俯いた状態のまま、私はベッドの側まで行った。
足首からふくらはぎにかけて包帯をグルグル巻きにされていて、右肩から手首にかけてギプスで固定してある。
「見舞いに来てくれたのか?」
「はい」
私は俯いたまま返事をした。
黒崎先輩の痛々しい姿を見て、何とも言えない気持ちが込み上げてきた。
「ふくらはぎの傷と右腕の骨折だってさ。全治4週間ってとこかな?でもイケメンの顔に傷付かなくて良かったろ?」
黒崎先輩は明るくそう言うとクスッと笑った。
「えっ?」
全治4週間って……。
私、黒崎先輩にとんでもないことしちゃったんだ。
私のセイで……黒崎先輩が……。
「お前、えっ?じゃねぇだろ?そこは、そうですね。だろ?」
「…………ゴメン、なさい」
「高原?どした?」
俯いている私の顔を下から見るように黒崎先輩はそう言った。
「ゴメンなさい。私のセイで……」
涙がポロポロ溢れ落ちていく。
「高原のセイじゃねぇよ。だから自分を責めるな」
「でも……」
その時、黒崎先輩に腕を引っ張られた。
黒崎先輩の胸に飛び込むような感じになり、黒崎先輩は私の身体を左腕でギュッと抱きしめた。
消毒液と黒崎先輩の甘い香りが鼻を掠め、私の胸は痛いくらいドキドキと煩かった。
「ゴメン、なさい……」
謝る事しか出来ない私。
「誰のセイでもないから。これは事故だったんだし。だからもう泣くな」
「でも……」
「まぁ、誰かのセイにするとしたら高原を騙した宮崎のババアだな」
黒崎先輩はそう言ってクスッと笑った。
「高原もケガがなかったんだし、俺もこの程度で済んだしな」
この程度って、大ケガしてるじゃん……。
骨折は大ケガだよ。
泣きじゃくる私にそう言って、背中を優しく撫でてくれる黒崎先輩。
私が落ち着くまで、ずっと背中を優しく撫でてくれていた。
「なぁ、高原?」
どれくらい泣き続けたんだろ……。
だいぶ落ち着いてきた頃、黒崎先輩が声をかけてきた。
「何ですか?」
私は顔を上げて黒崎先輩を見たけど、恥ずかしくなって、すぐに目を逸らした。
「お前さぁ、もう仕事辞めろ」
「えっ?」
「あんなことされてまで無理して続ける必要ねぇだろ?」
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「でも、前に話したように……」
働かないと生活がしていけないことは前に話したはず。
それと実家に帰れないことも。
「わかってるよ。働かなきゃ生活していけねぇことも、実家に帰れねぇことも」
「じゃあ、何で……」
「高原?こっち見て?」
黒崎先輩にそう言われて、逸らしていた目を黒崎先輩に戻した。
黒崎先輩に伝わるくらい私の胸はドキドキと激しく鳴っていた。
「俺の嫁になれ」
「…………はい?」
黒崎先輩、ケガしておかしくなったのですか?
「頭の検査した方が……」
「うるせぇよ。頭は正常だっつーの!」
「じゃあ、同情ですか?」
「ちげーよ」
もうわけわからない。
いきなり“嫁になれ”とか言われて誰が信じるの?
しかも私と黒崎先輩は恋人同士じゃないのに。
性格悪くて人を見下すのが趣味みたいな黒崎先輩なのに……。
「俺の話を聞けよ」
「…………はい」
「俺、実は高校の時から高原の事が好きで……」
そこまで言うと黒崎先輩は少し照れたように笑った。
「…………嘘」
「嘘じゃねぇよ」
「じゃあ、何で……」
“姫ブー”って変なアダ名で呼んだり、人の事をからかったりしたの?
「ほら、好きな子ほどイジメたくなるって言うじゃん?」
「何ですか、それ。私があの頃、どれだけ悩んでたか……。まぁ、黒崎先輩の暴言のおかげでダイエットしたんですけどね」
「ゴメン……。高校卒業して、大学行って、就職しても高原の事が忘れられなかった。他の女と付き合ったりもしたけど、でもやっぱり高原が忘れられなくて……。うちの学校に派遣で来て、体育館裏で会った時には神様はいるんだと思ったよ」
「黒崎先輩……」
胸がさっきよりもドキドキしてる。
止まっていた涙が再びポロポロと零れ落ちた。
「お前がイジメられてんのを見たくねぇんだよ。辛いのに必死に笑顔作って無理して、そんなの見たくねぇよ……」
黒崎先輩は最後の方は吐き捨てるように言った。
涙と鼻水で化粧も落ちて顔もグチャグチャで、それでも涙が止まらない。
「でも仕事も辞められない、実家にも帰れない。だから俺の嫁になって仕事を辞めろ。お前1人と子供2人くらいなら余裕で養ってやるよ」
「そんなカッコイイこと言って、あとで、冗談でしたとか言うんでしょ?」
「言わねぇよ。言うわけねぇだろ?こんな俺だけど、今すげードキドキしてるんだからな。ほら、ここ触ってみろよ?」
黒崎先輩はそう言って、胸を指差した。
私は黒崎先輩の胸に手を当てる。
ドクドクと早く脈を打ってる心臓の鼓動が手の平に伝わってきた。
「返事は?」
「私でいいんですか?」
「いいに決まってんだろ?高原じゃねぇとダメなんだよ」
「黒崎先輩、ありがとう……宜しくお願い、します……」
私は黒崎先輩の胸におでこを付けた。
「俺が幸せにしてやるからな。絶対に」
「うん……」
黒崎先輩はそう言って、再び私の身体をギュッと抱きしめた。
「明日、派遣会社に連絡して話をしろ。学校には火曜日に話せ。1人で大丈夫か?」
「大丈夫です」
「あと、俺が退院したら一緒に暮らそうか?」
黒崎先輩はそう言ってニヤリと笑った。
何ですか、その意味深な笑いは……。
怖いです……。
その時、看護師さんが病室に入って来た。
若くて可愛らしい看護師さん。
「黒崎さん、熱測って下さいね」
「はーい」
看護師さんが黒崎先輩に体温計を渡す。
熱を測ってる間に脈を測ったりしていた。
体温計の電子音が聞こえ、黒崎先輩は体温計を看護師さんに渡す。
「36度5分、平熱ですね」
看護師さんがバインダーに挟んだ紙に書いていった。
「黒崎さんの彼女?」
看護師さんは私の方を見てそう言った。
「そう、彼女ってか、嫁か」
黒崎先輩はそう言って笑う。
「嫁?黒崎さん、結婚してたんですか?」
「いや、これから嫁になる人」
「いいですね。幸せそうで」
看護師さんはそう言って病室を出て行った。
「さっきの看護師、可愛いよなぁ」
「うん……」
「それにナース服着てるとエロく見えるし」
「はっ?」
「何?お前、妬いてんの?」
そう言って黒崎先輩はケラケラ笑う。
「どうせ私は可愛くもないし、エロくもないですよ!」
私は黒崎先輩の肩をバシッと叩いた。
「いってーなぁ」
何よ、さっきまでカッコイイこと言ってたくせに!
「左肩が折れたかも」
「さっきの看護師さんに、優しくお世話してもらったら?私は帰りますから!」
そう言って椅子から立ち上がった時、黒崎先輩が私の手首を掴んで引っ張った。
「キャ!」
黒崎先輩の胸に飛び込む私。
「冗談だろ?」
「冗談でもねぇ!…………んん!」
黒崎先輩の唇が私の唇に重なった。
初めてのキスに、さっきまでムカついていたのに私の胸はドキドキと煩かった。
「高原、可愛い」
唇を離した黒崎先輩はそう言って微笑んだ。
「私は可愛くないです!」
「怒った高原は可愛いよ」
嘘でもそんな事言われたら恥ずかしくて顔が熱くなる。
「そんな事言っても何も出ませんから」
「退院して一緒に暮らしたら、たっぷりサービスしてもらうから、それまで我慢しとくよ」
「ずっと、我慢してて下さい!」
私はプイと横を向いた。
そんな私を黒崎先輩は真正面に向ける。
「我慢、出来るわけねぇだろ?バーカ」
そう言って、黒崎先輩は再び私の唇にキスしてきた。
とろけそうな熱いキス。
息苦しくて、でも気持ちよくて……。
私は黒崎先輩の腕をギュッと掴んでいた。