テラーノベル
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旅立ちの朝、惣吉は姉夫婦にお礼を言った。
姉はまた涙ぐんで、別れを惜しんだ。
義兄は、しっかりやれというように、惣吉の肩を抱いた。
湿っぽくなるのは嫌だったので、弥兵衛とお松には見送りには来ないでいいと伝えてあった。
惣吉は畦道を一人歩き出した。
トンボが稲穂の上を飛んでいた。
空は澄み渡り、雲雀が鳴いていた。
渡し舟まで来ると、来たときと同じ船頭が、惣吉を覚えていた。
「やあ、こないだの兄さんだね。
また江戸に行きなさるんで?
どうでしたか、郷は?」
船頭にこう言われて、惣吉は
「いい所でした。」
と答えた。
完