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美しい朝日が照りつける中、私は実家の庭にいた。
「二度と帰ってくるな」
私の1番古い記憶はこれだ。
おばあちゃんが恐ろしい剣幕で幼い私に向かってそう言い放った。
一体何が原因か今も昔も私にはよくわからない。
ただお母さんも不機嫌そうな顔で車に黙々と荷物を詰め込むところを見るあたり、
この2人の喧嘩が原因であることは6歳の私でもよくわかることであった。
大人の本気の喧嘩を目の当たりにしたのは初めての事だった。
それは幼い私にとってはとても言葉にできない恐ろしさがあった。
今思えばそれは単なる2人の喧嘩というだけではなく、おばあちゃんからすると私という人間も敵視する対象として向けられていたからだと思う。
その恐怖から逃れるかのように私は母に視線を送った。
「いつまた一緒に暮らせるの?」
母は何も答えなかった。
でもその目は確かな怒りと悔しさが滲み出ていた。
荷物の詰めかたも若干乱暴でヤケクソな感じが伝わる。
2人は最後の言葉も何も交わさず、
お母さんは私を車に乗せると静かに実家を後にした。
その間おばあちゃんは、庭で去っていく私達の車を静かに睨みつけるのだった。
私はおばあちゃんに手を振ることを躊躇し、静かにスカートの裾を握りしめるのであった。
生まれ育ったC県を出て、私達が向かったのはT県。
見慣れた風景がどんどんと消えていき田舎の雰囲気も消え去り、
家やビルが沢山溢れた都会に近づいていった。
都内程ではないが、田んぼや老人に見慣れていた私にとって目的地はとても都会に見えた。
思っていたより都会は綺麗なものではなく、地元にはないゴミのポイ捨てが酷く目立った。
車でおよそ2時間後、目的地に到着した。
そこでは母がSNSで知り合った男性がいた。
その人が私の2番目の父となる母の再婚相手だった。