「なんで指輪?」
年下組を見送って片付けを手伝ってくれる仁人とキッチンに並び洗い物をする。
ちゃんと箱に戻された俺からのリングと普段つけているリングが置かれた机を見ながら仁人に聞かれる。
「しかも、あいつらが居てYouTubeも撮ってるタイミングって…」
不満のように聞こえる声音も照れ隠しだったらいいな、なんて俺のわがままで。
「嫌だった?」
「嫌……てか…んー…」
歯切れの悪さにやらかしたかな…なんて考える。
「貰っときながら悪いけど、あんまつけねぇぜ?多分」
多分じゃねぇだろ。わかってるよ。お前があんなごつい指輪好んでつけねぇことぐらい。
「つけんくていいよ。別に俺が渡したかっただけだし」
「なんで?」
仁人の問の意味がわからず首を傾げる。
「なんで、渡したかった?」
「ぁー…」
理由を問われてるのがわかって口に出そうとして思ったよりもダサい自分の感情に口を閉じる。
「…いいだろ。なんでも」
「なん?言えや。気になんでしょ」
こうなった仁人は納得する理由が聞けるまでしつこく聞いてくるので、洗い物が終わった手を拭き逃げるようにソファーに座り仁人にやったクロムハーツの箱をパカパカと開けたり閉じたりして弄ぶ。
「馬鹿にしたりしないから言いなさいよ」
馬鹿にされるなんて思ってない。
それでも、少しでも仁人の前ではかっこつけていたい。
「理由教えてくんねぇなら受け取らんわ。それ」
「は?」
弄んでいたクロムハーツの箱が無情にもパタンと閉じた音を響かせる。
「佐野くんの指に2個ギラギラにつけてれば?」
自分のリングだけはめて立ち上がる仁人を引き止めるように左手を掴む。
「なに?言う気になりましたか?」
強く手を引けば隣に座り直して顔を見つめられる。
目線だけで「ちゃんとお前の話聞くよ?」って言われてるような気がして、無駄にかっこつけるより仁人にはいつでも素直伝えたいって気持ちのが増す。
左手に箱を持ったまま、仁人の左手の中指の付け根をするりと撫でる。
「……ふあんだったんだよ」
「不安?」
そう。不安だった。
「お前は…仁人はすぐ逃げるから」
「そんなこと…なくない?」
自覚がないからなおさら不安なんだよ。
「なくねぇよ」
「うぇ…」
「そんな、お前を繋ぎ止める物が欲しかった」
「だから、柔太朗には服で俺には指輪ですか」
いつかは、ほんとにメンバー全員に渡すつもり…多分。
ただ、一刻でも早く知らしめたかった。
お前が誰のなのか。
「佐野さんって重いよね」
ははって笑う仁人。
「重いよ。仁人が思ってるより重い。本当は中指じゃなくて薬指にしようかと思ったし」
「それは困るわな」
わかってる。困らすことなんてわかってる。
「だから、中指で我慢したろ」
「我慢ねぇ…お揃いでこんな大々的に渡しときながらなにが我慢ですか」
納得いってない声音の仁人の薬指の付け根を撫でる。
「来年は俺も、それこそ仁人だって忙しくなる。M!LKも。そばに居れない時間のが多い。それでも」
「佐野さんが不安になんないようにできない?」
俺の言葉に被せるように聞かれる。
仁人が俺の不安を取り除こうとしてくれるのは嬉しい。でも。
「無理。できない」
「おぉ…そんなきっぱりと」
「だって、仁人自覚ねぇじゃん。いつも俺なんかって言って。お前が思ってるよりもお前を好きなファンはいるし、お前を好きな後輩だっている」
「佐野くんの思ってる好きとはまた違うと思いますけどね」
「そうかもしんねぇけど、そうじゃないかもしれねぇぞ」
俺にとって仁人がそうであるように。お前は自分が思ってるよりも人を魅了する。
「だから、これは予約」
「予約破棄は?」
「できるわけねぇだろ」
太智に「佐野さんにはめてもらえば?」と言って素直に俺に指輪を渡してきた時、すっげぇ嬉しかった。
気持ちが先行して「結婚しました」なんて口走ったけど、俺は叶えたいことは口に出していくタイプだから。
いつか、世間が文句が言えないくらいのトップ俳優、トップアイドルになって仁人を幸せにする。
「ですよね。わかりました。気長に待ってますよ。勇斗がちゃんとした指輪くれるまで」
「おう。おとなしく待っとけ」
なんて言いながら、仁人の中指に指輪をはめる。
絶対に逃がさねぇから。
END
コメント
3件
いやっ〜🤭 指輪のシーン何回見たか仁人君 何をプレゼントされたか直ぐに分かったのか受け取って直ぐに付けてましたしね てか私レコメンの発言に未だに?なんですけど「お揃いの指輪貰ったんだけど今付けてないてか怖くて、、普段は付けないけど佐野さんと一緒の時だけは付けようかなと」いやっ普通 反対だよね普段付けて一緒の時は付けないのでは?お揃い恥ずかとか 一緒の時に付けるなんて えっ確定ですか?今年ですか