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それから数日経った。
大きな喧嘩もなく、
でも前より少しだけ、距離を意識するようになった。
おんりーは、前より言葉を選ぶようになった。
「大丈夫」じゃなくて、
「ちょっと寂しい」と言うようになった。
最初は、声が小さかったけど。
夜、ソファに並んで座っていたときのことだった。
テレビはついているのに、内容は頭に入らない。
「……今日さ」
ぽつりと切り出す。
「返事遅かったでしょ」
おらふくんが、ちらっと横を見る。
「気にしてた?」
「少し」
正直に言えたことに、自分でも驚いた。
「でも」
「忙しいの分かってるから」
言い終わる前に、
おらふくんがため息をついた。
「それ」
軽く笑って、
でも手は伸びてくる。
指先が、そっと絡んだ。
「分かってるって言葉」
「便利やけど、俺には効かん」
ぎゅっと、力がこもる。
「寂しいなら、寂しいって言って」
低い声。
でも、怒ってはいない。
「言われた方が、楽や」
その言葉に、胸がじんわり温かくなる。
「……前はさ」
おんりーは、少し迷ってから続けた。
「構ってほしいって言うの、負けな気がしてた」
「なんの勝負やねん」
くすっと笑われる。
「甘えるんはな」
「信頼してる証拠や」
そう言って、
今度はちゃんと、腕を引き寄せられた。
近い。
安心する距離。
「既読スルーの件やけど」
急に真面目な声。
「正直、めっちゃ効いた」
「……ごめん」
「でも」
言葉を区切って、耳元で。
「次やったら、もっと厄介なお仕置きにする」
冗談めかしているのに、
どこか本気。
「……なにそれ」
「まだ内緒」
そう言って、
ようやく完全に抱きしめられた。
逃げ場のない、でも優しい力。
「おんりーはな」
少し間をおいて、
「俺がちゃんと捕まえとかな、すぐ一人で抱え込む」
その言い方が、
まるで宣言みたいで。
「だから」
「離れられると思わんといて」
胸に顔をうずめると、
心臓の音が聞こえた。
落ち着いた、いつもの音。
「……うん」
それだけで、十分だった。
その夜、
連絡は少なかったけど。
同じ部屋で、
同じ温度で、
ちゃんと一緒にいた。
それが、何よりの返事だった。