シェアする
「あ」
だが、すぐに足を止め、福は自転車を颯真に預けるように降りる。
「え?」
そしてそのまま、ハンドルにかけてあった白のヘルメットを颯真に被せた。ぴんと、颯真の額もついでに弾く。
「落っこちて転ばれても困るから。一応、ね。……それに僕、運転、あまり得意じゃないし……」
急に小っ恥ずかしくなった福はやっぱりいいやと颯真の頭に手を伸ばす。だが、颯真はそんな福の手を掴み、「俺、せっかく福さんに被せてもらったから、被っていたい」と心底嬉しそうに頬を紅潮させて言った。
「……それなら」
変に熱くなった頬を押さえながら、またサドルに腰掛ける。ハンドルを握り、また地面を蹴ろうとした時、ふと、後ろから何やら囁くような声と、太く強い湿った腕が福の胴を包んだ。かあっと耳まで赤くなる。なぜこんな小っ恥ずかしいことを言えるのだと言いたくなったが、自分たちが恋人同士であることを思い出し、何も言えなくなった。
ずっとこれからも愛してます。
だなんて、あまりにも陳腐な言葉。営み中でも何も思わなかったのに。颯真の言葉には熱があった。
「……変なこと言ってないで、帰るぞ」
「はあい」
その顔の熱さが冷めるように、一気に地面を蹴った。