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2話どーぞ。
制限時間を示す数字が、空間の中央に浮かび上がった。
29:59
一秒ごとに減っていく赤い光が、やけに生々しい。
「……まず、落ち着こう」
東京が場を制するように言った。
「感情で決める試験じゃない」
「感情抜きで“救済にふさわしくない県”とか決められるか?」
大阪が噛みつく。
「そもそも基準が分からんやろ」
「だからこそ」
愛知が即答する。
「論理を作る必要がある」
円の中心に進み出て、愛知は淡々と続けた。
「この試験は二重構造だ。一つは“誰を守るか”。もう一つは“誰を切るか”。
そして後者は、我々が直接選ばなくても、自動的に決定される」
「……最悪やな」
福岡が舌打ちする。
「選ばんでも、殺される」
「違う」
愛知は首を振った。
「選ばなかった結果、殺される」
その言葉が、じわじわと全員に染みていく。
「だったら」
宮城が口を開いた。
「“救済にふさわしい”基準を、先に決めるべきだ」
「例えば?」
東京が視線を向ける。
「人口が少ない県」
宮城は答えた。
「切り捨てられやすいところを、先に守る」
「それ、合理的やけど」
大阪が眉をひそめる。
「逆に“いらん”って言うてるようなもんやで」
「……違う」
宮城は俯いた。
「必要だから守るんだ」
広島が、その言葉を静かに拾う。
「“弱いから守る”と“必要だから守る”は、似ているが違う」
「前者は選別で、後者は選択だ」
空気が、少しだけ柔らいだ。
「じゃあさ」
福岡が軽い調子で言う。
「未来の可能性がある県とか?」
「抽象的すぎる」
愛知が即却下。
「文化的価値」
京都が、ようやく声を出した。
「失われたら、取り戻せないものがある」
「それ言い出したら」
奈良が苦笑する。
「ほとんど全員や」
「……沖縄は?」
誰かが言った。
一瞬、視線が集まる。
「独自の文化」
「地理的にも特殊」
「切り離された歴史」
理屈は、いくらでも並ぶ。
沖縄は、腕を組んだまま黙っていたが、やがて口を開いた。
「選ばれるために、理由を並べるつもりはない」
「ただ」
「ここで消えたら、“日本”は本当に日本か?」
その一言で、場が静まり返る。
21:14
時間は、容赦なく削れていく。
「なあ」
北海道が、低く言った。
「一つ、気になってることがある」
「なんだ」
東京が応じる。
「“救済された県は免除される”って言ったよな」
「それ、ゲームから降りるってことか?」
沈黙。
「……確かに」
愛知が目を細める。
「免除は、生存を意味するが――その後の関与は不明だ」
「つまり」
大阪が嫌な予感を口にする。
「助かる代わりに、もう何もできん、って可能性もある」
「守られる代わりに」
広島が続ける。
「何も選べなくなる」
希望の輪郭に、ひびが入る。
「それでも」
宮城が言った。
「一人でも確実に生き残れるなら、やる価値はある」
「同感」
東京が頷く。
「ここで全員が疑心暗鬼になるより、まず一つ成功体験を作るべきだ」
「成功体験、ねぇ」
福岡が笑う。
「生き残りを“実績”扱いするの、怖いわ」
だが、反対は出なかった。
誰もが、誰かが助かる未来を、想像してしまったからだ。
「候補を絞ろう」
東京が言う。
「議論が終わらない」
最終的に残ったのは、三県だった。
沖縄
鳥取
佐賀
理由は様々だが、共通していたのは
「切られやすい」
「声が届きにくい」
という点だった。
鳥取は、少し困ったように笑った。
「まさか、こんな形で注目されるとは」
佐賀は肩をすくめる。
「正直、選ばれても選ばれなくても、怖さは変わらん」
沖縄は、静かに三人を見た。
07:03
「決めよう」
東京が言う。
投票ではない。
多数決でもない。
「全員一致でなければ、意味がない」
沈黙。
視線が交差する。
やがて、誰かが言った。
「……沖縄」
一人、また一人と、同じ名前が重なる。
沖縄は、目を閉じた。
「ありがとう、って言うべきなんだろうな」
「でも――」
言葉は、続かなかった。
光が、沖縄を包む。
他の県よりも、少しだけ暖かい光。
「……やった、のか?」
誰かが呟いた。
その瞬間。
床の一部が、音もなく沈んだ。
「……え?」
名前が、浮かび上がる。
――鳥取。
「ちょ、待っ……」
声は、最後まで届かなかった。
鳥取の姿は、光に溶けるように消えた。
悲鳴も、血もない。
ただ、最初からいなかったかのように。
沈黙。
誰も、すぐに言葉を出せなかった。
沖縄だけが、震える声で言った。
「……これ、ほんとに、救済か?」
答えは、なかった。
そして誰もまだ知らない。
このとき救われた沖縄が、
この先で
何も選べなくなる存在になることを。
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コメント
4件
鳥取ぃぃぃ!!