テラーノベル
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「帰らせて……くれる……?」
俺は後ろを少し向きながら震える声で答えた。
「うん……。」
彼はそう静かに返事をする。
「冷たいから、こっちおいで。俺、ちょっと離れるから。 」
そう俺に優しく言った。
こんな人が、あの日の吸血鬼だなんて信じられない。
俺は静かにおいでと言われた所に座る。
彼も少し離れて座った。
「俺、吸血鬼だけど……やたらむやみに人を襲ってるわけじゃない……。まぁ、信じられないと思うけど……。そもそも、不味すぎる。今の人間の血。不健康だらけ。だから吸わなくていいなら吸わない。でも限界だった。あの日……。だからいやいやマシかなって思った人を吸った。」
彼はそうぽつりぽつりと語り出した。
「その時、君に見られた。こんなこと言われても怖いだけだと思うけど、俺、君に恋したんだ……。」
そう言われて俺もどう返したらいいか分からない。
「初めてだった。こんな気持ちは。だから君のこと調べた。スーパーでもわざとぶつかった。確信した、その時に。 君が好きだと。」
彼は俺を見る。
俺は恐怖はあるものの震えは無くなっていた。
「吸血鬼……は、女の人を好むんじゃないの……。」
俺はボソリと彼に聞いてみる。
「そうだね……大半は。でも俺は違った。君の目を見てから女性なんて目に入らなくなった。」
彼はそう真っ直ぐ俺を見た。
「なんで、俺なの……。」
俺は素直に聞く。
彼は目を瞑って
「何でだろう……。分からない。でも君が頭から離れないんだ。」
そうゆっくり目を開いて優しい目でこちらを見た。
信じられない。本当に吸血鬼なのか。
「俺……どうしたらいいの……。」
俺は分からなくなっていた。
このまま帰してもらって忘れていいのか。
こんな彼の目を見たら揺らいでしまった。
「忘れて、いいよ……。話聞いてくれて、ありがとう。鍵、開けられるから。」
彼は静かにそう呟いた。
俺は彼を見つめた。
「君は、随分と優しい人みたいだね……。」
そう彼は微笑んだ。
俺はその後ボーッとしながら帰った。
帰る際も
「ごめんね……無理矢理。ありがとう。」
そう言って微笑んでいた。
本当に、あれが吸血鬼。
俺は心が締め付けられる感覚だった。
彼のことが忘れられなくなっていた。
寂しそうな目と優しい目。
忘れなきゃ……そう思っても忘れられなかった。
コメント
1件
きゃー最高👍