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ぱさ、と朝刊が落ちる。上空からはニュース・クーの鳴き声が聞こえてきた。
「朝刊です」
ブルックがニュース・クーの落とした朝刊を拾い、ルフィが新聞を広げた。全員が緊張して新聞の文面を見る。
――〝ドンキホーテ・ドフラミンゴ 七武海脱退〟
「ドレスローザの王位を破棄…どういうことだ?」
「お、王位ってことは、王様だったんですか?」
「王様? あいつが王様ってことは、鳥の国か?」
「こんなにあっさり事が進むと逆に不気味だな…」
「これでいいんだ。奴にはこうするしか方法はない」
「…それはいいんだけどさ、ここ、ローとルフィの顔載ってるぞ」
七武海のローとルフィが同盟を組んだという情報が大々的に書かれていた。ローに対する政府の審判は不明、とも。
「まだあるわよ!」
「ッ、き、っど…?」
そこにはキッド、ホーキンス、アプーの3つの海賊団が同目を組んだことも記されていた。偶然とはいえ、同時期に同盟を組んだとなれば世間はどう思うだろうか。
だが、今はそんなことを気にしている場合ではない。俺たちは俺達で作戦を進めるだけだ――と、ローが口を開き、シーザーの元へ近寄る。ガシ、とシーザーの頭を引っ掴んで、シーザーを取引材料にすることが、ドフラミンゴにとっていかに重いものだったかが麦わらの一味によくわかったことだろう。
「おれたちはシーザーを誘拐しただけ。それに対し奴は10年間保持していた国王という地位と、略奪者のライセンス、七武海という特権をも一夜にして投げ打って見せた。この男を取り返すために。ここまでやったことが奴の答え」
「ロー、連絡するんだろ。ドフラミンゴに」
「あぁ」
ローは電伝虫を手に取り、ダイヤルをする。
――プルプルプル…プルプルプル…プルプルプル…
長いコール音が響く。やがて相手が出た。
ガチャ――
『おれだ。七武海をやめたぞ』
静かな低い声。それは間違いなくドフラミンゴのものだった。
その声を聞き、数人が出たことに驚く。騒ぐな騒ぐな! 俺が黙れ、とジェスチャーをしたのだが、ルフィもドフラミンゴか、と声を上げた。
「シーッ、だまってろ!」
小さな声で俺はルフィを制止する。
「もしもし! おれはモンキー・D・ルフィ! 海賊王になる男だ!」
「こら! お前黙れっつってんだろ!」
俺とウソップがルフィの頭をべしんと叩いて口を塞ごうとしたのだが、ルフィは俺の手を払って受話器に話し続ける。
「おい、ミンゴ! 茶ひげや子供らをひでえ目に遭わせたアホシーザーのボスはお前か! シーザーは約束だから返すけどな、今度また同じようなことしやがったら今度はお前もぶっ飛ばすからな!」
『……麦わらのルフィ。兄の死から2年、パッタリと姿を消し、どこで何をしてた?』
「それは、絶対言えねえことになってんだ」
『フフフフ……おれはお前に会いたかったんだ。お前が喉から手が出るほど欲しがるものをおれは今持っている』
「おれが、喉から手が出るほど……欲しがる…? お、おい、それはいったいどれほど美味しいお肉なんだ!?」
「バカルフィ! もうお前下がってろ!!」
俺はつい声を出してしまった。しかし、俺が声を発したことで、電話の向こうの声が変わった。
『エメリヒ…?』
ドクン、と心臓が跳ねる。ドフラミンゴが今口にしたのは、俺がバロックワークスにいた時の偽名だ。
『フ、フフフフ……ワニ野郎の手から離れたとは聞いていたが、ローといたとはな……』
「……ドフラミンゴ…」
心臓が痛い。手が震えているのがわかる。ローが俺の手を握り、受話器を取った。
「ジョーカー、余計な話をするな。約束通りシーザーは引き渡す」
『そりゃあその方が身のためだ。ここへ来てトンズラでもすりゃあ、今度こそどういう目に遭うかお前はよく分かってる。フフフフフ、さあまずは、うちの大事なビジネスパートナーの無事を確認させてくれ』
その言葉を聞き、ローはシーザーの方に受話器を向けた。シーザーが顔を涙でぐしゃぐしゃにして近づくが、声を少し聞かせただけで特に会話をさせる気はないらしい。
「わかっただろ」
『ああ。元気そうだ』
「今から8時間後、ドレスローザの北の孤島、〝グリーンビット〟南東のビーチだ。午後3時にシーザーをそこへ投げ出す。勝手に拾え。それ以上の接触はしない」
『フフフフ……寂しいねえ。エメリヒも一緒に、成長したお前と1杯くらい……』
「切れ! こんなもん!」
ルフィがそう言い、勝手に受話器を置いて切ってしまった。
「……きつ…」
俺は小さく呟き、その場に座り込む。いやだな。俺、グリーンビットの方には行きたくない……けど、ローと一緒にいた方が安全かな……。
「……ディ、ジェディ」
「あ、な、なに? どうした? あれ、みんなは?」
「朝飯にするらしい。計画も組まずに呑気な奴らだ。呼び止めても止まらねえ。お前も行くぞ」
「う、うん」
ローは俺に手を差し伸べる。
「クロコダイルと面識があった時点で薄々思っていたが、やっぱりお前、ドフラミンゴとも接点があったな。何をされた?」
「何もされて……。いや、貞操の危機? にあったのが1回、2回…………5回、くらい?」
指を折ってそう数えると、俺が指を折るたびにローの表情が険しくなってしまった。あ、これヤバイ。なんか地雷踏んじゃったかも。
ローは俺の腕を掴み、そのままサニー号の食堂の方へと向かった。許された? と俺は首を傾げて着いて行ったのだが、やはり許されていないのか…?