テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
夜更けの配信部屋。モニターの光に照らされて、銀髪の葛葉は椅子にだらんと座っていた。
「……あー、だりぃ。Apexやる気出ねぇ」
そう言いながらも、既にゲームは起動している。
そこへ通話が繋がった。
『くっさーん? もう始めてる?』
低くて落ち着いた声。
ローレン・イロアスだ。
「んだよ、ローレン。遅ぇ」
『ごめんごめん。ちょっと設定いじってた』
「は?また変な検証してたろ」
『効率大事だからな』
くくっと笑う声がヘッドセット越しに響く。
葛葉は無意識に口元を緩めた。
「つーか今日長時間いけんの?」
『くっさんが途中で眠くならなきゃな』
「は?俺、長時間配信得意なんだが?」
『はいはい』
その軽い返しが、妙に心地いい。
試合が始まると、ローレンはいつも通り冷静だった。
『ここ漁る。くっさんは高所』
「了解了解」
『敵2、右展開してる』
「見えた」
二人の声は自然と噛み合う。
無駄がなくて、それでいてどこか楽しそうで。
試合後。
「今の連携よくね?」
『だな。くっさん、珍しく指示聞いてた』
「“珍しく”は余計だろ」
『でも素直だった』
「……ローレン相手だからな」
一瞬、通話が静かになる。
『……は?』
「は?じゃねぇよ。お前の言うことは分かりやすいし」
『論理的だから?』
「いや……なんつーか」
葛葉は椅子に深くもたれ、天井を見る。
「安心する」
ローレンは言葉を失った。
『……それ、ずるくない?』
「は?」
『急にそういうこと言うの』
「別に?」
『……くっさんって、無自覚で人の心揺らすよな』
「なにそれ。怖」
『褒めてる』
しばらくして、ローレンがぽつりと続けた。
『俺さ、くっさんとやる配信、好きなんだよ』
「……知ってる」
『……え?』
「だって、声違うじゃん」
『……は?』
「楽しい時、ちょっと高くなる」
沈黙。
『……くっさん観察しすぎ』
「悪い?」
『……悪くない』
その声は少しだけ柔らかかった。
「なぁローレン」
『ん?』
「明日も一緒にやる?」
『……当たり前だろ』
「即答かよ」
『くっさんとじゃなきゃ意味ない』
葛葉は小さく笑った。
「くっさん専属戦略家ってことで」
『やだな、その呼び方』
「嫌?」
『……嫌じゃない』
画面の向こうで、赤い髪の男が少し照れているのが想像できた。
配信モンスターと、理論派ストラテジスト。
噛み合わないようで、誰よりも噛み合う二人。
『くっさん』
「ん?」
『明日も頼む』
「任せろ、ローレン」
「俺がお前のエースだろ」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!