side shp
朝いつも通りの登校路を歩く。静かで、日がまだ出切っておらず、生暖かいだけだった。
「ゾムさん」
バス停に寄り添うように立っている彼は俺の声に気づき顔をあげる。
「んおっ来たか。んじゃ行くか。」
朝早く向かったはずが、彼は絶対俺より速い。顔は少し赤みがかってて、昨日よりかわいさが増している。一緒に学校に行って、帰って毎日が幸せで嬉しかった。
「ゾムさん。最近なんかありました?」
彼はこちらを驚いたように見つめ、優しい目で笑う。
「なんにもないで?」
まだまだ暑いというのに、昨日から今日に掛けても長袖のワイシャツを、着ている彼は身体も心も隠しているようで中身が見えず、近づけない。逆に知ってしまっていいのか不安になるほどだった。彼は前をむいてあるきだす。その顔は、笑顔で儚い美しさを醸し出している。そんなとき、頬に一粒の雫が垂れる。彼はそんな俺に気がついて駆け寄って来る。
「ショッピ?大丈夫か!?なんか痛いか?」心配そうに声を掛けてくる声は少しかすれていた。近づいた顔と顔。彼の目元は紅く腫れている。彼のほうがきっと、きっと苦しいのに。俺は気づかないふりをしていた。彼は完璧だと自分の催眠に勝手に酔っていた。そう思えば思うほど、涙は途切れず下へ下へと落ちていく。
「ゾムさんっ…。俺、最低っすね。」
嗚咽をしながら彼の前で彼の為に泣く。大好きだった彼のために。大好きなゾムさんのために。